20代前半の若者達の青春を切り取った名作『ソラニン』のヒリヒリ感がたまらない

『ソラニン』は週刊ヤングサンデーで2005年〜2006年に連載された、浅野いにお先生による10代後半〜20代前半の理想と現実の狭間で揺れ動く若者達を描いた作品です。全2巻なのでサクッと読めるのもお薦めポイントですが、本作の内容は非常に濃いです。

本当の幸せって何？

学生時代から組んでいるバンドを細々と続けながら、未だ音楽で食べていく夢を捨てきれないでいる「未だ青春引きずり気味」の種田と、同棲中の、大学時代から交際しているOLの芽衣子。

ある日、種田との些細な会話をキッカケに芽衣子は仕事を辞めてしまう。芽衣子に「バンドを本気でやってよ」と叱咤される種田。葛藤を重ねた末、音楽で勝負する決意を固め、音楽事務所に音源テープを送りまくる。

結果、1件だけ返事を貰い、その事務所に足を運んだ種田達。しかし事務所関係者が発した言葉は種田達を予想外の方向に運んでしまうことに。

時々、この場所に帰りたくなる、そんなマンガ

本当の幸せとは何なのか？本作を通して考えさせられるテーマです。誰もが大なり小なり思い描いていた夢との距離を、歳を重ねる毎に突き付けられる中でどう自分に折り合いをつけるのか。初めて読んだのに何故か本作に懐かしさを感じるのは、自分自身と種田や芽衣子の感情が端々でリンクするからなのだと思います。

言われてみたい。

マンガから生まれた名曲『ソラニン』

本作は2010年に映画化されています。主題歌を歌うアジアンカンフージェネレーションが歌うのはそのまま作中に登場する種田のバンド『ロッチ』の代表曲『ソラニン』です。作中に登場する曲の歌詞はそのまま使用され、メロディーがつけられているのですが、その楽曲の完成度が素晴らしいです。興味のある方は映画版も是非観てもらいたいです。

僕もどーにかやるさ

青くて酸っぱくて苦くて、それでも齧りたくなったら

本作の様々な場面で、青くて、苦しい、青春を引きずりすぎて大人になり切れないでいる登場人物達に出くわします。現実は思い描いていた未来とはまるで違って、本当にやりたいことを押し殺すことが大人になることだと言い聞かせながら、それでも心が焼け付くような抗えない感覚に襲われる。

そんな光景を目の当たりにして、時に自分と重ねて苦々しい気持ちにもなると思います。それでも齧りたいと思える程の魅力が本作品には溢れています。

種田の、芽衣子の、そして脇を固める魅力ある登場人物達と一緒に、青春の続きを謳歌して頂きたいです！