魚豊先生の『チ。-地球の運動について-』は、天動説が主流だった時代に、宇宙の真理に魅せられた者たちが禁忌とされる地動説の研究を託していく物語です。2021年3月30日には3巻が発売されます!
当時の地動説は唱えるだけで罪とされるほどの異端研究でした。地球が宇宙の中心ではないと口にするだけで恐ろしい拷問が待っている社会で、命がけで真理に迫り託していこうとする人々の姿に心打たれます。
12歳で大学合格の天才児
15世紀初頭、優秀で将来を期待されていた学生のラファウは、異端の学者フベルトと出会います。フベルトは天文学の学者で、ラファウに動いているのは星ではなく地球であるという地動説について語り始めます。
人類がクソおっきい岩を動かす話 1 pic.twitter.com/BzOx6soMx0— 魚豊 「チ。地球の運動について」スピリッツにて連載中 (@uotouoto) December 11, 2020
もともと天文に興味があり、観測をつづけていたラファウは、異端研究と知りながらもフベルトの説に惹かれていきます。当時、異端者は二度捕まると絶対に死刑になり、協力者も重罪に処されたのです。
チ。地球の運動について 3巻
3月30日発売です!
来月です〜
1、2巻は1200円で売られたりしてたので、興味ある方は是非、定価のご予約を・・・!
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楽天→https://t.co/EMzv0OqBeV pic.twitter.com/J7hzDABQiK— 魚豊 「チ。地球の運動について」スピリッツにて連載中 (@uotouoto) February 21, 2021
12歳で大学に合格するほどの天才児だったラファウは、神学を専攻して教会に従っていれば栄光の道を約束されたようなものでした。しかしラファウはその天才性ゆえに地動説の法則の美しさに気づき、天文学を専攻すると宣言するのでした。
主人公は地球か真理か
本作には明確な主人公がいません。あえていうなら主人公は地球そのものであり、星の運行を表す宇宙の真理かもしれません。万有引力を発見したアイザック・ニュートンは自身の偉業を「巨人の肩に立つ」と表現しました。科学とはまさに、先人の研究成果があってこそ発展してきたものなのです。
『チ。 -地球の運動について-』作者・魚豊さんのマジで面白いインタビュー出ました。間違いなく新時代を率いていく作家の一人です。
『チ。』作者・魚豊が語る、“主観的な熱中”の尊さと危うさ 「気持ちに逆らえない人たちの姿を描きたい」 @realsound_bさんからhttps://t.co/jkWe6Jw6cT— 漫画編集ちよだ (@cyd____) February 15, 2021
地動説にまつわる歴史
ここで地動説にまつわる主な出来事をご紹介しましょう。
1543年 | コペルニクスが太陽を中心とした地動説を唱えた書籍のタイトルが「天体の回転について」を発行。 モノの見え方が180度変わってしまうことを表すコペルニクス的転回という言葉は、 |
1608年 | オランダのメガネ屋、ハンス・リパシューさんが世界で最初の望遠鏡を発明。 |
1609年 | ガリレオ=ガリレイが望遠鏡を制作。月に山や谷(クレーター)があることを発見。 ケプラーが「新天文学」を発表。 |
1610年 | ガリレオが木星に4つの衛星があることを発見。『星界の報告』という書籍を発表。 |
1616年 | ガリレオが最初の宗教裁判にかけられます。 |
1630年 | ケプラー死去。 |
1632年 | ガリレオが「天文対話」をフィレンツェで刊行。 |
1633年 | ガリレオに終身刑を言い渡されます。 |
1638年 | ガリレオが『新科学対話』を刊行。 |
1642年 | ガリレオ死去。 |
1983年5月9日 | ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世がガリレオ=ガリレイに謝罪。 |
ガリレオが終身刑を言い渡されてから実に350年後に、ガリレオの名誉は回復されたのです。
今週はマンガ大賞にもノミネートされている『チ。ー地球の運動についてー』について。
この作品からは「この感情を描きたい」「この問いに真正面からぶつかりたい」という圧倒的な衝動を感じる。人の心を動かすものは、いつだって強い衝動から生まれると改めて再認識した。https://t.co/EDUDo2SLRE— 佐渡島 庸平(コルク代表) (@sadycork) March 4, 2021
『チ。-地球の運動について-』は15世紀初頭なので、1400年代初期の物語です。本作が始まってから、コペルニクスの「天体の回転について」まで150年ほどの時間があります。
真理に命を懸けた人々の熱意が世界に認められるまでには、まだまだ多くの年月が必要です。
しかし、小さな個人個人が協力し、未来に研究成果を託してきたことで、ニュートンの言う「巨人」が生まれているのだということが、本作を通じて実感できるのではないでしょうか。