パーフェクトワールド

有賀リエ/著

再会した初恋の人は、車イスに乗っていました。『パーフェクトワールド』  

取引先との飲み会で、初恋の人・鮎川樹(いつき)と再会した川奈つぐみ。建築士になるという夢を叶え、さらに魅力的になった鮎川につぐみは惹かれるが、鮎川は大学時代の事故で脊髄損傷し、歩けない体になっていた。

有賀リエ/著
パーフェクトワールド

障がい者と付き合うという現実

「でも俺 たまにウンコとかもらすことあるよ?」

高校時代から付き合っていた彼女と障がいが原因で別れていた鮎川。大変なことがあっても恋人なら一緒に乗り越えるものじゃないか、というつぐみに対し、鮎川は脊髄損傷の現実を話す。排泄障がいがあり、便が自然に出てしまうこと。旅先でいつも気を遣い、何かあれば誰かに処置を頼まないといけないこと。健常者がわざわざ自分を選ぶ必要もないし、自分自身ももう恋愛をする気はない、と淡々とつぐみに告げる。

元カノの結婚を見送る鮎川

高校の同窓会で元カノ・美姫に再会した鮎川。鮎川を呼び出した美姫は、結婚が決まったことを報告する。

「本当に好きだった、樹」

涙をこぼしながら伝える美姫。事故の後、美姫を振ったのは鮎川だった。美姫の家族は鮎川との付き合いに大反対、どこに行っても憐みの目で見られ、時に冷淡に扱われる。鮎川は別れることで、美姫をそういったわずらわしさから解放した。それでもお互いに「見捨てたんじゃないかという罪悪感」と「好きなのに別れを選ぶ苦しさ」を抱え続けていた。

つぐみに連れられて美姫の結婚式を遠くから見守る鮎川。ウェディングドレスに身を包んだ美しい美姫を見て、鮎川はあふれる涙を抑え切れない。

「別れたことは間違ってなかった。幸せになってくれてよかった」

前よりももっと鮎川を愛し始めていることに気づいたつぐみ。鮎川の心を開くことはできるのか、さまざまな困難を伴うつぐみの恋の行方は。

障がい者と一生を共にできるのか

もしも自分が事故に遭い、障がいを持った体になったら。大事な人だからこそ、相手に苦労をさせたくない、幸せになってもらいたいと願う鮎川。特につぐみは介護のプロフェッショナルでも看護師でもない普通の女の子。短い間なら頑張れても、一生を共にするとしたら、それでも相手を愛し続けられるのか。障がいを取り巻くリアルの中で、寄り添ったりケンカしたりしながら絆を深めていく鮎川とつぐみの姿に、胸がきゅううっとなります。

2018年には映画化、2019年にはドラマ化もされた最高のピュアラブ。2人の愛の行方をぜひ見守ってください!

パーフェクトワールド(9) (Kissコミックス)
有賀リエ/著