ブルーピリオド

山口つばさ / 著

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『ブルーピリオド』アニメ第2~4話レビュー!原作マンガとの違いにも注目!

2021年9月25日より配信、10月1日よりテレビ放送も開始されたアニメ『ブルーピリオド』。美術に一切興味のなかった高校生・矢口八虎が美術の面白さに目覚め、高校2年の夏にイチから美大合格を目指す青春群像劇を描いた作品です。

初回となる第1話では八虎が美術の世界に目覚め、合格倍率20倍の狭き門・東京藝術大学への受験を決意するまでが描かれました。2話からはいよいよ美術部へ入部、本格的に美大受験への道のりを歩み始めます。美術の道へと足を踏み入れた八虎を描くアニメ2~4話を、原作とも比較しながら解説していきましょう!

第2話『全然焼けてねえ』学校は夏休みに突入!美術部の課題で大きく成長する八虎

美大受験を決意し、早速美術部へと入部した八虎。アニメ第2話では美術の道を歩み始めたばかりの初心者らしい彼の葛藤や、夏休みを経て美術部の課題を乗り越えスキルアップする姿。そして進路を決めるために避けては通れない、母親との将来についてのやりとりも描かれましたね。

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原作との大きな違いとしては、予備校の冬期講習でのエピソードが丸々削られている点でしょうか。といっても全面カットされたわけではなく、森先輩の卒業エピソードや母親の説得シーンと順番を入れ替え、この第2話に関しては八虎の美術部と両親とのエピソードのみに絞った、という方が正しいでしょう。

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八虎の人生を変えたキーパーソンの1人、森先輩の美大現役合格、そして卒業という別れ。大きな懸念点であった、進路についての母親の説得。その二つを乗り越え、八虎が次のステップである予備校へ通い始める。そんな原作のストーリーの流れを、よりシンプルに分かりやすくした第2話ともなっています。

第3話『予備校・デビュー・オブ・ザ・デッド』予備校編スタート!新キャラも続々登場

美術部、学校でのターニングポイントを経て、本格的な受験対策のためついに予備校に通い始めた八虎。今回の物語では、今後ともに美大受験を目指す予備校の面々が新たに登場!

八虎を藝大合格へと導くキーパーソン・大葉先生同じ予備校に通う同級生の橋田悠、そして八虎のライバルとも呼べる存在となる高橋世田介。彼らと八虎の関わりや、そして同じ予備校に通うユカちゃんとの関わりが描かれた回でしたね。

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予備校に通い始めた八虎が最初に躓いた壁「絵作り」。どうすれば人の目を引く作品を作れるのか、どうすれば強烈な印象を与えられる絵を描けるのか。「多くの作品に触れ、まずは自分の”好き”を見つけよう」という大葉先生の助言に従い、美術館に行ったり画集を見たり。一人奮闘する八虎の葛藤が描かれます。

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また同時にその中で、奇人変人で苦手意識を持っていたユカちゃんへの認識が徐々に変わっていく八虎。人と違う「好き」を持つ彼は、その「好き」で自分を守ると同時に、その「好き」によって傷つけられている。彼を知れば知るほど奇特で奇抜だった印象が、どこまでも普通へと変わっていくのです。

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絵が上手くなるとはどういうことなのか。自分の「好き」とは一体何なのか。そんな問いを抱えながら予備校へ通い続ける八虎。その中で同級生である世田介に投げかけられた「お前、本質を何もわかっていない」というきつい一言。二人のやりとりの続きが気になる所で、物語は次のストーリーへと進む形となっています。

第4話『我々はどこへ行くのか』美大合格、そのために掴むべき「正解」とは?

八虎と世田介の緊迫感に満ちたシーンから始まる第4話。今回は前回の八虎の課題「絵作り」への突破口、そして新たな主要人物のひとり、桑名マキの登場。そして一つの壁を乗り越えた八虎が、また新たな大きな壁にぶつかるエピソードが描かれています。

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今回のお話に関しても、原作と比べると細かなエピソードの順序がやや前後する形に。先んじて前回とも繋がる内容の「絵作り」上達のキーとなる「構図」のエピソード。それを踏まえてマキとの夏季講習、予備校内コンクールのエピソードへと、原作のストーリーをシンプルかつわかりやすい流れへと整理している状態ですね。

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そしてこの4話のメインともなるのは、新たに八虎の前に立ちはだかる壁。美術はセンスや感覚だけでなく、ちゃんと理論や理屈もあると知った八虎。しかしそれでもなお、美術の世界は自由で、そしてその自由さゆえに「明確な唯一の正解がない」ことを痛いほどに感じます。

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同じく美大を目指しているのに、コンクールで1位を取りたくなかったと悔しそうに心情を吐露するマキ、そして「受験絵画」を嫌悪し予備校を辞めた世田介。彼らの姿を見て、八虎はますます美大受験の「正解」がわからなくなるのです。

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普通の受験と違い、明快な唯一解がない美大受験の世界。それでもわかっているのは、そんな彼らを捻じ伏せるための、迷う己を捻じ伏せるための力が、自分にはまだない、ということだけ。いい絵を描くこと、美大に合格すること。自分にとっての「正しさ」を模索する八虎たち美大受験生。しかし彼らが迷い悩む間も無情に時は過ぎ、残された時間は気づけば残り120日となっていました。

美大受験に限らず私たちにも通じる葛藤…彼らはそれをどう乗り越えるのか?

美大受験へ向けての挑戦と葛藤を描く『ブルーピリオド』。しかし今回の4話にも描かれたような「唯一解のない世界での懊悩」は、決して美大受験の話だけに留まる要素ではないように思います。学校を出て、社会で働き始めたばかりの頃。テストの成績だけが全てだった世界から一歩踏み出した人たちの多くが、きっと経験したことのある葛藤なのではないでしょうか。

美大受験まで残り4か月となった八虎を始めとした受験生たち。4話ラストで大葉先生が語ったように、彼らが今後どのように成長するのか。原作での描写がどんな風にアニメで描かれるのか、今後も続きが気になります!

ブルーピリオド
山口つばさ/著