ブルーロック

金城宗幸 / 原作 ノ村優介 / 漫画

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『ブルーロック』“史上最もイカれたサッカー漫画”の史上最もイカれた魅力

連載開始早々に、あまりにも過激な表現によって世間を賑わせた『ブルーロック』。連載が始まって3年が経過した今もなお(2021年11月現在)、変わることなく読者を興奮させています。

2021年5月に受賞した第45回講談社漫画賞の少年部門に続き、2022年に待望のアニメ化が発表され、今以上に人気が高まることも間違いありません!

この記事では、“史上最もイカれたサッカー漫画”と呼ばれながら『ブルーロック』の人気が広まる理由を紹介します。

注意事項:『ブルーロック』≠スポーツマンガ

まず事前共有事項として、本作はスポーツマンガならではの「仲間」「絆」といったテーマを切り捨て、多くの作品が築いてきた前提を簡単に裏切ります。あれ、これスポーツマンガだよね? と確かめたくなるほどのイカれた様子は、冒頭から描かれています。

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彼の名は、絵心甚八(えご じんぱち)。全国から選ばれた強化指定選手300人を前に言い放った言葉です。主人公・潔世一(いさぎ よいち)を含む高校サッカーの選手たち300人は、突如、強化指定選手として招集されます。

そのワケは、世界一のストライカーを育成する実験をするため。「ブルーロック」という名の施設でトレーニングをこなし、サバイバルを勝ち上がった最後の一人が世界一のストライカーになる、とコーチだという絵心は彼らに伝えます。

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スポーツそのものをないがしろにするような絵心の言葉に驚いたのは、選手たちだけでなく、本作を手に取った読者も同じ。だってサッカーなら、スポーツなら胸が熱くなるような仲間との絆を目にして心を満たしたい...。スポーツマンガならではの感動を誰もが期待するじゃないですか。

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そうした予定調和を嬉々として覆す『ブルーロック』は、読者の頬に強めの平手打ちをくらわせます。痛い!嘘でしょ!

エゴの秘めた力に光が差す

スポーツセオリーをガン無視しているのに、嫌悪感よりもむしろ、ゾクゾクしながら没入してしまう『ブルーロック』の異様な魅力読み進めるほどに読者も熱を帯びるのはなぜなのか。ここが本記事の本題でもあります。作中で読者が釘付けにされてしまう限界突破のプレーの数々。それらは、「ストライカーはエゴイストたれ」という絵心独自の哲学によって生まれています。

エゴという反道徳的なものが、スポーツの領域で活用できるなんて最初はまったく想像できない。それなのに、選手たちのプレーと重ねてみると、不思議とエゴってそんなに悪いものではないのかもしれない、そう思ってしまうんです。

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それどころか、私たちの胸の奥でグツグツと何かが煮え立つ音が聞こえる。第一話で叩かれたあのこと、もうきっとあなたは忘れています。

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けれど、現実を生きる私たちにとってエゴは、良くない感情とされています。周囲と良好な関係を持続的に築いていくため、なるべくエゴが顔を出さないようコントロールすることが体に染みついています。なんだか大人になっちゃったと、しんみりするけれど、ブッダや仏でもない限り、ほとんどの人にエゴがあるはずなんです。ただ、隠しているだけ、抑えつけているだけ。私も、あなたも。

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だからこそ、スポーツとは程遠いはずの感情・エゴイズムで、新境地に到達してしまう『ブルーロック』は、多くの読者に予感させてしまう。エゴって、ほんとうは恥じるようなものでも、強引に抑えつけるようなものでもないのかもしれない...と。

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そして予感は確信へと変わります。自己の抑圧の上に成立する調和ではなく、圧倒的自我によってたぐり寄せる新たな可能性の存在を。そんな未来を知りたい、自分自身で掴み取りたい、と熱狂が渦を巻く。

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どんな世界でも自分であり続けるために

とはいえ、勝ち上がるため、エゴをぶつけ合い戦う選手たちとは違い、欲望を剥き出しにする機会なんて中々ないのが今の時代です。少子化が止まらないこの国では、なおさら競争心は生まれにくい。つまり、『ブルーロック』は今日の時代の流れや風潮とは真逆に向かっているんです。

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しかし、エゴイズムの教えは、このように言い換えることができるのではないでしょうか。

「すべての人が本来持っている”自我”。この感情を認めることで、あらゆる可能性を育てることができる。つまり、すべての人は”本来”、あらゆる可能性を秘めている」と。

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スポーツは、一般的に選ばれし才能たちが活躍する世界です。そういうフィールドで絵心は、自我=全ての人が持つ個性を肯定していたのでした。生まれ持った才能でもセンスでもなく、誰にでもあるエゴというものを。そうやって視点を変えてみると、なんかすごくいいコーチじゃん...。

この物語で描かれるエゴイズムは、自分であり続ける強さを教えてくれます。家族の目、友人の目、社会の目。それらの目に調和してしまうとき、『ブルーロック』から自分らしく生き抜く力をもらってみてくださいね。

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