メトロポリス
『メトロポリス』は、1949年に手塚治虫が発表した作品で、『ロスト・ワールド』(1948)、『来るべき世界』(1951)とあわせてSF3部作といわれる。本書には、この『メトロポリス』と少年が幽霊となって世界を旅する「不思議旅行記」の2作品が収録されている。 太陽の大黒点が発する放射線によって、研究途中の「人造蛋白質」から人造人間を製造することが可能になり、天使のように美しく、兵器として悪魔のような力を持った人造人間「ミッチィ」が誕生する。 同じ手塚作品の『鉄腕アトム』を思い起こすが、アトムにはロボットとしての自覚があるのに対し、ミッチィは自分が人造人間であることを知らされぬまま、人間として暮らしている。そして自分が人間ではなく、人間に利用されていることを知ったミッチィは激しく怒り、ロボットたちを伴って、反乱を起こすのだ。 ミッチィは、機械の体を持ったいわゆる「ロボット」ではない。有機物として非常に「生々しい」存在であり、人間にもロボットにもなれない「悲哀」がある。その姿は我々に、人間が人間を「作る」ということへの倫理を問いかけている。科学の発展によって何かを失うことへの警告を一貫して発し続けた著者の思いがストレートに反映された作品だ。 単行本版のみの特典として手塚治虫の手書き「構想ノート」を収録。下書き原稿はもちろん、著者が自ら2作品を講評する「自評」もついており、ファンならずとも楽しめる。(門倉紫麻)
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