レキヨミ

柴田康平/著

『レキヨミ』の姉妹愛に元気がもらえる!?ケモナーなあなたに読んで欲しい不条理ファンタジー

幻想的な世界で、ケモ耳の姉妹が一族相伝の薬を売りながら仲睦まじく暮らす…。

ハルタで連載されていた、柴田康平先生の『レキヨミ』はそんな素敵な紹介もできる作品なのですが、実際はヨダレとバイオレンスにまみれた不条理な物語。

本作のなんでもあり加減にはただただ圧倒されるハズ!

不死身で暴力的なケモ耳少女たち

なんでもありの代表格は、主人公のレキヨミの姉妹。可愛らしい外見に騙されそうになりますが、二人とも狂気的な個性の持ち主です。

レキは白くてお姉さん然としたのんびりキャラ。しかし妹のヨミのことを好きすぎるあまり、勝手にヨミの財布を盗んだり、作っている薬に自分のヨダレを垂らしたりと悪戯三昧で、しょっちゅうボコボコにされています。

しかも、その度にレキは死んでしまいます(不死身なので生き返るのですが、その原理は作中では一切説明されません。そういう世界観なのです)。

何度もお仕置きを受けて殺されているにもかかわらず悪戯を続ける…妹にちょっかいかけることに文字通り命を懸けて挑むレキの狂気には笑うしかありません。

一方の黒色のケモ耳少女ヨミは、だらしない姉に比べてしっかり者。薬を作って生計を立てている他、読書家でもあり日頃から知識を蓄えています。

ただ、流石レキの妹と言うべきか、彼女もどこかブレーキが外れているような描写が多いです。その一つがヨミに対する暴力の数々。レキの悪戯に激昂して襲い掛かる様には普段の冷静さのかけらもありません。

ツッコミでレキを殺してしまうだけであればまだいいのですが(?)、ヨミ自身の都合で姉を殺めることもあり、彼女もまた狂気的な一面を持っているとわかります。

薬の調合が間に合わず商人から怒られそうになったときには、レキを薬で仮死状態にして箱に詰め、納品しようとするなど明らかにアウトな描写も…。

完全にネジが外れてしまっているレキヨミたち。彼女たちの関係性は暴力がいっぱいですが、なぜか二人のやりとりを見ていると爽快にすら感じられます。

姉妹というより悪友?な関係性に元気をもらえる

なんでもありなレキヨミの二人の関係性は、腐れ縁の悪友のようなガサツな感じです。レキはヨミへの愛情を悪戯という形で不器用に表現し、ヨミはそれを全力で受け止め、120%の力で応戦します。

ここには、「どんなにひどいことをしてもレキ(ヨミ)なら受け止めてくれる」というお互いに対する絶大な信頼感が存在していると感じられます。相手が自分を本気で嫌うはずがないという安心感のなかで繰り広げられる彼女たちの掛け合いには、なんだか元気がもらえます。

レキヨミたちのコミュニケーションは決してマネできるものではありません。しかし互いに気を遣うことなく必死で相手にぶつかっていく様子には、日常のコミュニケーションで抱えてしまうストレスを全て吹き飛ばしてくれるようなパワーがあります!

『レキヨミ』を読んで柴田先生の世界観を感じたら

『レキヨミ』は2020年8月12日発売の3巻で完結してしまいましたが、柴田康平先生の作品は他にもあります。

『レキヨミ』とは打って変わって現代を舞台にした短編集『んねこん』、不思議な力のお面を巡る物語『めんや』など、独特な世界観を引き継いだ作品が刊行されています!

どの作品もキャラクターの掛け合いにも嘘がなく、常に全力。

彼女たちの爽快なコミュニケーションに癒されてみませんか?

ケモナーよ集え!

レキヨミ (全3巻) Kindle版