不死身の特攻兵 生キトシ生ケル者タチヘ

鴻上尚史/原著 東直輝/著

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『不死身の特攻兵』。空を飛ぶことに憧れた少年は、九度の特攻を命じられた

『不死身の特攻兵』は、太平洋戦争時に、九回特攻に送られて生きて帰ってきた佐々木友次さんの実話をもとにした物語。

不死身の特攻兵 生キトシ生ケル者タチヘ
鴻上尚史/原著 東直輝/著

不死身の特攻兵 (全4巻) Kindle版

飛ぶことに憧れた少年

佐々木は大好きな飛行機に憧れ、飛ぶことを夢見る少年だった。陸軍の飛行学校試験に落ちた少年は、民間の航空機乗員養成所に入校。生まれて初めて飛行機に乗り空を飛ぶという感動を味わう。

精神論で強行された特攻攻撃

次第に戦況が悪化する中、大本営は「自爆攻撃」を発案。大した成果が期待できないにも関わらず、追い詰められた日本はさらに迷走する。

優秀な若者たちの命を軽んじたこの戦術に異を唱えた岩本益臣大尉は、「優秀な操縦士」ゆえに特攻一番機の搭乗を命じられる。岩本が目をかけていた佐々木も、「特攻兵」として初めて戦場に向かうことになる。自爆攻撃を旨とする特攻隊として出るということは、出撃は死を意味するのだ。

爆撃機に改修するというタブー

特攻機は「自爆」が前提で作られているため、巨大な爆弾を機体に針金で完全に固定され、爆弾が外せないような仕様になっていた。岩本は「敵を撃沈さえできれば死ぬ必要はない」とし、整備の責任者である陸軍中佐に直訴。中佐は優れた飛行機乗りである岩本の想いに応え、機体の改修を引き受ける。

上層部に内密で爆弾を投下できるように改修することは、上官の命令が「絶対服従」であった当時には考えられないことであった。しかし、岩本のこの選択が、絶望していた特攻兵たちに「もしかしたら生きて帰れるかもしれない」という希望を与えることになる。

無謀な命令により、岩本散る

人情に厚く、部下にも愛されていた岩本だが、命令による移動中にアメリカ軍の襲撃を受け、部下と共に死亡。たった一機で危険空域を通り、マニラまで来いという命令の理由は「料亭での宴会」に参加するためであった。

特攻兵は生きていてはならない

正式な命令が出て、特攻としての出撃命令を受けた佐々木。岩本大尉が主導した機体改修のおかげで、爆弾を機体から切り離し、艦隊を爆撃するのみで帰還する。しかし、これが後で大きな問題となってしまう。

佐々木が戻るまでの間に戦果報告を行った兵士が「佐々木の特攻で戦艦が撃沈された」と報告。さらにその報告が割り増しされて本土に届き、日本では佐々木の葬式まで行われる。戦地で味方の機体を見失い、近隣の飛行場に不時着してから戻った佐々木はその「存在」自体が問題と上層部に見なされる。

敵艦に突入した「軍神」のことはすでに天皇にまで伝わっており、その報告通り、特攻兵は「死んでいなければならない」のだ。かくて、佐々木は「報告を真実」としたい上層部の意向により、休む間もなく特攻として出撃を命じられる。

「もう死んでやる」という思いと、「生きて帰りたい」という思いの中で、佐々木の心も大きく揺れ動くのだった。

彼はなぜ、九度の特攻出撃から生きて帰れたのか。次世代に語り継ぎたい戦争のリアルが『不死身の特攻兵』に凝縮されている。

不死身の特攻兵 (全4巻) Kindle版