2021年現在、日本の法律では同性同士による結婚は認められていません。
しかし、2015年より東京都渋谷区と世田谷区にて「パートナーシップ制度」が設けられ、自治体が同性カップルを認めることや宣誓を受け付けることが出来る様になりました。それを皮切りに現在では110以上の自治体でパートナーシップ制度が施行されています。
そして2016年10月10日、一組のカップルが築地本願寺でパートナーシップ仏前奉式を行い、夫夫(ふうふ)になりました。
©僕が夫に出会うまで/文藝春秋
彼らの出会いから結婚までの経緯についてはこのパートナーシップ宣誓を受けた七崎良輔さんご本人の自伝「僕が夫に出会うまで」に記されています。
今回は、同タイトルでマンガ家のつきづきよし先生の柔らかく優しさと美しさを備えた描写によりコミカライズされ文春オンラインのコミックカテゴリー(文春コミック)上に掲載された『僕が夫に出会うまで』を紹介させて頂きます。
「オカマ」と呼ばれた小学生時代
七崎さんは小学生時代に言動が女の子らしいと言われてきたものの、普通の男子だと思いながら生活していました。
©僕が夫に出会うまで/文藝春秋
しかしある日、彼を「オカマ」と呼ぶクラスメイトがいることについて学級会が開かれ、「自分は普通の男子ではないのかもしれない」とショックを受け、「普通の男子」を装って生活するようになっていきます。
またクリスマスには母親に内緒で心の中で「女の子向けのおもちゃが欲しい」とサンタに願いながらも、実際に手に出来たのは男の子向けのおもちゃだった時、母親を悲しませたくないという想いから喜ぶふりをする七崎さんの姿がありました。
©僕が夫に出会うまで/文藝春秋
同級生を意識した中高生時代
中学生になり男らしくないという理由でいじめられていた七崎さんは隣のクラスの転校生・司と出会い初めて男友達が出来ました。
©僕が夫に出会うまで/文藝春秋
自分を否定的に見る同級生とは異なり友達として接してくれる司に対し、淡い想いを抱いていきました。
そして司に彼女が出来たことを伝えられた時、「早く別れてほしい」と強く願ってしまう程ショックを受け、この件をきっかけに同性に対し恋愛感情を抱く自分自身に戸惑いを覚えていきます。
©僕が夫に出会うまで/文藝春秋
高校時代には二度目の恋と失恋を経験しながらも、「男が好きだ」という事実を受け止めきれぬまま進学の為上京します。
その後上京をきっかけに様々な出来事に見舞われながらも、後に夫となる亮介さんと出会うことにまります。
愛と家族の多様性を知る作品
私はBL作品を好んで読んでいましたが、実はノンフィクションのストーリー作品を扱ったものでしっかりと読んだのは本作が初めてでした。あとがきにて七崎さんが
これまで、現実社会を生きるゲイと、BLの世界を探求する方々とはあまり交流がなされてこなかったように思います。
と記している様に、この作品を通して現実社会の同性愛者の方々の今までの生きて来た道筋を知り、恋愛や家族という形が多様性に富んでいることを改めて気付かせてくれる作品でした。
セクシャリティ、恋愛、家族を始め、社会は一つの正解だけが存在しているのではなく、一人一人に想いがあります。
そのことを知る第一歩になれる様な『僕が夫に出会うまで』、是非ご一読下さい。
文春オンラインでは第1~3話と、番外編である母親にカミングアウトした際のエピソードが公開中です。
幸せの形は決まった形じゃない
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©僕が夫に出会うまで/文藝春秋