『先パイがお呼びです！』は、むっしゅ先生により描かれた女子高生二人の何気ない日常を楽しむ4コママンガです。芳文社より刊行されている、まんがタイムきららキャラットで連載されていました。
部活帰りの相馬より子が、空腹により道ばたで倒れていた漆島きなこを助けたことをきっかけに物語が幕を開けます。
最初はただの人助けでした。しかし、知れば知るほど好奇心旺盛なきなこが心配になってくるより子。
小さいトラブルに巻き込まれやすいきなこの行動にハラハラさせられながらも、なんだかんだと彼女を助けるより子についついページをめくる手が止まりません。
そして彼女たちが織りなす絶妙な空気感が、読者を幸せに包み込んでくれる作品です！
登場人物紹介
相馬より子（そうまよりこ）
ポニーテールが似合う高校1年生の女の子。あだ名はマヨちゃん。運動部に所属していることもあり、読者に健康的な印象を与えます。困っている人がいれば見過ごせず、道ばたで倒れている女の子がいれば自宅に送り届けてあげる優しい女の子です。
漆島きなこ（うるしまきなこ）
とてもふわふわしている高校2年生の女の子。敏腕で人気者な生徒会長として広く知られていますが、より子の前では掴みどころのない不思議な性格を惜しみなく披露します。噂によると、圧倒的な美貌に魅入られた（違法）ファンクラブが存在するとか。
犬笛の音で始まる2人きりの癒やしの物語
空腹に倒れたきなこを救った際、より子はなんだか放っておけないきなこに、勢いで「犬笛」をプレゼントしました。
犬笛は犬の関心を引くための笛であり、本来は人間の耳では聞き取れません。しかし非常に耳が良いより子には、なぜか犬笛の音が聞き分けられるのです。
つまり犬笛の音色は、より子だけを呼び出すアイテムとして機能します。
そして鳴り響くその音色が、2人きりの時間の幕を開けを告げるのです。
ところでこの犬笛には、少し解釈を深めると非常に趣のあるアイテムだと気づかされます。
なぜなら、本作にはスマホが存在するからです。
いわずもがな、スマホは最も有名な連絡手段として認識されています。スマホをがあるにも関わらず、あえて犬笛により行われる特殊なコミュニケーション。
鈍行に揺られながら旅を楽しむような、不便だからこその魅力を感じずにはいられません。
犬笛の音色が聞こえるたび、とにかくきなこの元へ駆けつけるより子。そうして始まる、誰にも知られることのない2人だけの秘密の時間に、読者は引き込まれていくのです。
先パイのセリフは物語のスパイスに
より子ときなこの物語に欠かせないアクセントは、きなこのキザなセリフの数々です。
例えばこのセリフ。おいしいものは誰かと一緒に食べたい、というきなこの考え方から導き出されたコマです。懇意にしている先パイからこのようなセリフを聞いたら、嬉しいに決まってます…！
そしてこのセリフ。
人手が足りないから手伝って！と言えば良いものを、「大歓迎なんだけどな♡」という小悪魔なセリフに置き換えています。えっ…そんなの、断れないじゃない…！
ふんわりとした2人の時間に混ざり込むドキッとした気持ち、まさにスパイスです。
本作にはこのようなドキドキがたくさん凝縮されているため、飽きることなく最後まで読み進められます。
私だけが知ってる先パイ
犬笛という特赦なアイテムにより繋がれるより子ときなこの特殊な関係。終始振り回されるより子ですが、その関係性の心地よさは筆舌に尽くしがたいものです。
また関係性を深める内に、自分が見ているきなこは他の人には見えていない姿であることに気づきます。以降、より子の一喜一憂する姿からはますます目が離せません。
私だけが知っている先パイの素顔、アナタも物陰からこっそりと見守りませんか？
