利口になるには青すぎる

内田裕人 / 漫画 大沼隆揮 / 原作

『利口になるには青すぎる』第2巻発売!仮想空間を前提としたeスポーツマンガのおもしろさと本作の独自性

いま男子中学生が将来なりたい職業ランキング 第2位が「プロeスポーツプレイヤー」という事実、ご存知ですか?(出典:「中高生が思い描く将来についての意識調査」ソニー生命調べ)

マンガにおいてもeスポーツはいよいよ無視できない存在に。

本日2021年10月6日、「ヤングマガジン」史上初の本格eスポーツマンガ『利口になるには青すぎる』コミックス第2巻が発売されました!

本記事では第1巻のあらすじを振り返り、eスポーツをマンガで描くことのおもしろさと、現状のeスポーツマンガ界における本作の独自性について考えます。

知識がなくても楽しめる!本気な大人のeスポーツマンガ

子どもの頃からゲームばかりやってきた27歳無職の主人公 桜田はるとは、幼なじみの誘いからテレビ番組でプロチームとFPSゲーム*で対戦し、そのままスカウトされプロ入りすることに。

*FPSゲーム:操作するキャラクターの本人視点(First-person)でゲーム内の空間を移動しながら、武器などを用いて戦う(Shooting)ゲームのこと

実力を見込まれ1軍の練習試合に参戦した桜田は驚異の強さを発揮、さらに本気で勝ちに行くメンバーを見て「俺の居場所だ」と確信します。27歳という遅すぎるキャリアスタート、しかし誰より本気でやり続けてきた分ゲームの腕前は一流。桜田はプロゲーマーとしてどんな人生を歩むのか?

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eスポーツをマンガで描くこと

eスポーツと従来のスポーツとの決定的な違いは、プレイヤーが指以外に自らの身体を使わないこと、そして仮想空間での対戦であること。それらがeスポーツマンガのおもしろさにも直結します。

プレイヤーの多様性がドラマを生む

スポーツの世界では個々の身長・体重・筋力が大きく物を言います。そこでプロを諦める人も多く、スポーツマンガでも自身の身体と向き合う姿が何度も描かれてきました。

一方、eスポーツは体格差が影響しない。それは年齢や性別を問わずプロになり得るということを意味します。老若男女混合でも同じフィールドで試合が成立するので、プレイ中に属性の異なる人間どうしのドラマが生まれる!これはeスポーツマンガならではと言えるでしょう。

現実と仮想空間を行き来する駆け引き

キャラクターを通して仮想空間でプレイする点も、eスポーツのマンガ表現に大きく関わってきます。操作する生身の人間と中で動くキャラクターは同一でありながら別の存在。本作の対戦シーンでも、プレイ画面の内外を行き来することで繊細な心理戦を描いています。

また本作のようなシューティングゲームには特性の異なるキャラクター、フィールド、武器、アイテムなどが数多用意されており、試合ごとの変数が多いのも特徴。公平を期すためある程度制限はかけられますが、それらの変数とプレイヤーの相性が勝敗を大きく左右することは間違いありません。

仮想空間における戦いが、従来のスポーツマンガにはない新しい駆け引きで勝負どころを盛り上げる!eスポーツマンガでしか味わえない興奮を感じてください。

プロスポーツにおける27歳ルーキー

日本で「eスポーツ」という言葉が流通しはじめて約20年経ちますが、それ自体を題材にしたマンガジャンルはまだ発展途上です。他作品を見ると、圧倒的に多い主人公は中高生。原作者の大沼隆揮先生は、ヤンマガWebで公開された対談記事で当初は主人公が小学生の予定だったと話しています。

ヤンマガで連載を目指すとなった時に、「ヤンマガだと小学生は厳しいよね」ということになって。その段階では23歳ぐらいにしたんですけど、年齢的に大学卒業して少しブラブラしてるぐらいだと極限感が出ないので、27歳でニートだったら結構ヤバいかなって(笑)

若き天才ゲーマーをやめ、逆に27歳無職という従来のプロスポーツではルーキーになりえない存在を主人公に立てたことこそが、結果的にeスポーツマンガ界における本作の独自性に。

eスポーツだからこそプロになれた27歳ルーキーに夢を見たい。実際のところ、長時間プレイを続ける体力や動体視力、瞬発力の点で「プロゲーマーの引退はスポーツ選手より早い」とも言われるようですが、主人公桜田はどんなゲームプレイと生き方を見せてくれるのでしょうか?

まだ始まったばかりの『利口になるには青すぎる』。eスポーツマンガという伸びしろのある領域で、本作がこれまでに見たことのない物語へと展開していくことを期待しています!

最近『APEX LEGENDS』(FPSゲーム)の配信動画ばかり見ています。視野が広く、判断力や先を読む力がある人はゲームが上手い!何歳からでも夢中になれる「生涯スポーツ」として、コンピューターゲームを再認識してみませんか?

「GG(Good Game)」を送りあう青春はスタンダードへ

利口になるには青すぎる(2) (ヤングマガジンコミックス)
大沼隆揮/著,内田裕人/著