勝負の世界でしか生きられないギャンブラー・阿佐田哲也。麻雀界で「雀聖」の異名を取った哲也の半生を描いた物語が『哲也~雀聖と呼ばれた男~』。
手練れの玄人(バイニン)たちが駆使するイカサマ技を見破りながら相手をねじ伏せていくところが、名探偵の謎解きを見ているようでページを読む手を止められなくなる。2019年10月11日までLINEマンガで3巻無料!
博打の本質は心理戦
戦後日本の苦境の中で、カタギで働いていても大して稼げない暮らしに嫌気がさしていた哲也。仕事の先輩がカモるために哲也をギャンブルに誘ったことが、哲也のギャンブラーとしての血を目覚めさせた。
横須賀で米軍将校を負かし、自分の技術にも自信を持っていた哲也は、新宿で房州という男に出会う。房州のイカサマで負けた哲也は再戦を申し込むが、哲也の麻雀を「昼間の遊び」だと言って房州は相手にしない。博打はなんだと問われ、「運と運のぶつかり合い」だと答える哲也に対し、房州は「博打は力だ!」と言い切った。
「運を引き込むのは力、力を引き出すのは運。
力と運っていうのは言わばコインの表と裏さ」
神社にいた房州と哲也は、次に来た来訪者が賽銭箱にカネを入れるかどうかを賭けることに。やってきた老人がカネを賽銭箱に投げた瞬間、房州がお金をキャッチ。「賽銭箱にカネは入らなかった」ために哲也の負けとなった。やり方が汚いという哲也に対し、自分だったら老人から金をふんだくっても賽銭箱に入れた、と淡々と話す房州。哲也は房州から「運を引き込む力」を学んでいく。
「玄人ってのは無理してでも、負けても金払わねえつもりで人の風上に立たなきゃいけねえ」
怠惰を極めて勤勉に行きつく
イカサマ技を使う玄人たちに勝つには、それをさらに「力」で上回らなければならない。サイコロの目を自在に出す方法、麻雀牌の積み方などの修練を積む哲也と房州に、バーのママが話しかける。
「博打打ちってのは楽して大金を稼ごうって人種だろ。
でもそのわりにはやけに勤勉じゃない」
カネという力を行使する三兄弟
特に面白かったのが超大金持ちのゴールドマン三兄弟との死闘。彼らはイカサマなどの小細工を使わない。相手の運と体力が尽きるまで、掛け金を倍に上げつづけるというまさにカネの「力」を最大限行使した勝負を仕掛けてくる。どんな玄人もいずれは運が尽きる、ミスを犯す。その一度きりのミスが対戦者を地獄へ追い落とす。哲也に勝算はあるのか!?
玄人たちの信頼や人情が垣間見える人間ドラマも本作の魅力。幸運は待っていてもやってこない。どんなことをしてでも運を自分の元に引き寄せようとする勝負師たちの生き様に魅了されこと間違いなし!