片山ユキヲ先生曰く
「絶望と哀しみの”ゾンビ皆殺し”ロードムービーマンガ」
今日3月22日(木)発売、講談社「月刊モーニングtwo」5月号にて
新連載『夜明けの旅団』始めます。
「絶望と哀しみの”ゾンビ皆殺し”ロードムービーマンガ」です。
ゾンビとゆーか死霊ですハイ。
しばらくのおつきあいをよろしくお願いいたします。😌#ゾンビ #死霊 pic.twitter.com/i1nHoMKd3g— 片山ユキヲ (@inugawan) March 22, 2018
旅して喰って戦って!
刮目のプロローグ
「夜明けの旅団」、始まりの3ページにまず圧倒的されます。
第二次世界大戦の激戦区として特に有名な舞台、ノルマンディーから始まることで駆り立てられる妄想
ノルマンディ上陸作戦。スピルバーグの「プライベートライアン」で描かれた壮烈な30分間の映像で覚えてる人も多いでしょう。インパクトのある歴史を持つキーワードだけに、読むわたしたちは様々な展開を予想しがちですが…。そして↓
連合国軍兵士が語る台詞から、ナチとでさえ共闘する必要がある敵の出現を予見させる
第二次世界大戦は連合国対枢軸国の戦いでした。枢軸国の中でもハリウッド映画等で散々描かれる悪の象徴としてのナチス・ドイツは特に有名です。そのナチスへ一緒に戦おうと提案するほどの緊急性って?いやおうがなしにワクワクが止まらなくなります。そして↓
ドイツ軍兵士が語る台詞から、その敵が人知を超えた存在である事が想像できる
地獄の門、それは「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」の銘文で知られています。絶望の象徴として語られるそれを口に出してしまうほどの相手とは。倒す方法はあるのか?敵味方の枠を超えて共闘を為しえるのか?ホラ、妄想がふくらむでしょ?
冒頭1ページに含まれるこの情報量!そして次の見開きの絶望感。この計3ページから世界設定を説明し尽くします。
ですが「夜明けの旅団」の本筋はこの戦争ではなく、少女と青年の復讐譚とそのロードムービーであるというその後の巧みな展開に驚かされます。
あらすじ
世界は滅亡の危機に瀕している!残虐たるナチスの侵攻を食い止めるため連合国軍はノルマンディー上陸作戦を決行。壮烈な戦闘の末、連合国はパリの解放に成功した…はずだった。それが知る歴史。
しかしノルマンディーで連合国兵士が見たものは、宙に浮かぶ生きた死人の群れ。地獄の門は開き今、悪しき者達が蘇ったのだ!ナチも連合国も関係無い、「死霊」は全てを滅ぼそうとしていた!
その死霊に父を殺された少女・ジョニーボーイと、弟を戦争と死霊に殺された青年・ハニーバニーは偶然出会い、共に旅をすることになる。
目指すは死霊の巣窟ノイシュヴァンシュタイン城。倒すべきはジョニーボーイの父を殺した意思を持った死霊アッシェンバッハ。ナチスと死霊に蹂躙されたヨーロッパで二人は旅を続ける!
誰が描いたの?
片山ユキヲ先生の新境地!「うしおととら」や「からくりサーカス」などの作品で知られ現在は「双亡亭壊すべし」を週刊少年サンデーで連載中の藤田和日郎先生を師匠に持ち、藤田先生が片山先生へ「描きたかったものを先に描かれちゃった」ことでTwitter上で嫉妬したことも話題でした。
片山ーー!
なにこれ?なにこれ?
なーんだよー。コレおれが、おれこそが、やりたかった漫画じゃねーかようー! pic.twitter.com/p8aWzcvKq1— 藤田和日郎 (@Ufujitakazuhiro) March 23, 2018
ああたしかに嫉妬もしますさ。
片山め面白い漫画を描く人にほめられやがって。
くやしー!きー。 https://t.co/TlBHln1huw— 藤田和日郎 (@Ufujitakazuhiro) August 31, 2018
さすがの血統、怖いものを描かせたらもう最高です!
これでもかの贅沢設定!
「復讐こそ私の魂の糧なの」
死霊に嬲り殺しにされた父が残したゾンビキラーの銀の義歯を使う、復讐に狂う赤いワンピースの少女。
「1シュリットでも先に行くよ!」
戦争に弟を殺され、自分の命の価値に疑問を抱きつつも、銀の弾丸で死霊を撃ち抜き倒す魔弾の射手と呼ばれる女装の青年。
「おいしい!」
旅の途中、手に入る食材を駆使して作られるドイツグルメの数々。
「死霊はね、非アーリア人の淘汰に役立っている」
人類滅亡の瀬戸際にあってなお戦争に固辞する狂ナチス。
「奴らは銀の銃弾に弱い」
敵はゾンビ(の怖いとこ)とバンパイア(の弱いとこ)のハイブリット。
「死霊」を鏡に描かれる「人」にも注目!
胃もたれしそうに濃厚なのに、いくらでも食べられそうな魅力的世界観。正確無比な時代考証と舞台設定と圧倒的コマ割りのセンス。面白く無いわけが無い!
そして、物語の奥底に流れる「人は信じるに値する」という人間賛歌こそ本作の特徴かもしれません。対極を生み出して本質を描く。それがエンターテインメントの王道なんですよね!