大東京トイボックス

うめ/著

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そこに魂はあるか?『大東京トイボックス』 仕事への情熱を再確認できるモノづくりのリアルがここに!

大東京トイボックス』はゲーム制作というモノづくりの最前線をリアルに、かつ熱く描いたうめ先生(シナリオ担当・小沢高広先生、作画担当・妹尾朝子先生)の作品です。

本作は2013年をもって完結していますが、2020年8月現在「月刊コミックバンチ」誌上にシリーズ最新作『東京トイボクシーズ』が連載されています。

👉『東京トイボクシーズ』1話目はコチラから読めます

eスポーツの世界を舞台にした『東京トイボクシーズ』にも『大東京トイボックス』のキャラクターや作中のゲームも登場するため、シリーズを通して読むことで楽しさが倍増します!

最新作を楽しむ為に、今こそ『大東京トイボックス』の紹介をいたします。温故知新、ですね!

『大東京トイボックス』のあらすじ

ゲーム制作会社スタジオG3に企画の新人として採用された百田モモ(ももだもも)けれど、本来は即戦力のグラフィッカーを採用する予定で、採用は主人公・天川太陽(てんかわたいよう)の指示ミスでした。

「ゲームクリエイターになりたい」という夢と希望しかないモモを迎え、業界最大手ソリダスワークスの仙水伊鶴(せんすいいづる)が指揮をとる次世代機向けの共同開発プロジェクトに参加することになるスタジオG3。「ただ面白いゲームが作りたい」という太陽は共同開発することになる電算花組とソリダスを巻き込みながら、表現の規制や自身の過去と向き合うことになっていきます。

仕事をする上での魂とは何か

作中に頻繁に登場するという言葉は『大東京トイボックス』を象徴する言葉だと思います。初めてこの言葉が出てくるのは、提出されたモモの企画書のレベルが低く、何か良いところはないかと言葉を選んで伝えるヒトコマです。

大東京トイボックス

抽象的なセリフではありますが、本質の部分、向かうべき先は合っているという意味のように筆者は捉えています。

より具体的に仕事における魂とは何か、がうかがえるシーンもあります。専門学校に講師として参加していたG3現プログラムチーフの依田敦史(よだあつし)。「実際にゲームを作る上で一番大事なことは何ですか」と学生に問いかけられた依田は、「魂」と返答し学生達の失笑を買います。その続きが以下のシーンです。

大東京トイボックス

魂は細部に宿る。モノをつくるギリギリのところでも妥協することなく、最善を目指し続けることこそが魂の込もった仕事だと依田は説いています。そして、この質問をした金田正志(かねだまさし)もやがてG3で働き始めるのです。

ゲームがもたらす影響とは

ゲームをつくる意味

本作では創作物が与える影響や年齢制限、流血表現の規制などの問題に触れています。作中で起きた中学生同士の刺殺事件において、ソリダスワークス社が制作したゲームの残酷な表現の影響では、とニュースは報じます。会見を開いた仙水は明快で非常に力強い言葉を発します。

大東京トイボックス

何十時間も拘束するゲームが、人生に影響を及ぼさないなら作る意味はない。モノつくりにおける仙水の覚悟を見せつけられた気がします。

ゲームがもたらす影響の拡大

ゲームがもたらす影響力は近年より一層高まっています。最新作『東京トイボクシーズ』でもテーマとなっているeスポーツ市場は拡大の一途を辿っています。

2019年には61億円を超える市場に成長しており、2023年には153億円をも超える市場規模になると予想されています。企業からのスポンサー料や、大会の賞金で生活をするプロゲーマーという職業も誕生しました。もはやゲームは娯楽という側面だけでなく、競技としての側面も持ち始めました。「ゲームばかりやってないで勉強しなさい」と言われていた時代から、ゲームに対する認識も変わりつつあると感じます。

9,999,990点のその先へ

仕様を一部変更する!

作中に出てくるシューティングゲーム『ゼビウス』は1983年にナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)から発売されました。9,999,990点のスコアに到達するとカウンターストップ(カンスト)となり、ゼビウスの理論上の最高得点となります。しかし、カンストしてもゼビウスは続きます。つまり、限界だと思われていたその先があるということです。

納期、妥協、言い訳...仕事においてやらない理由は簡単に見つけることができます。ブレーキを踏みたくなるような場面でも、太陽はアクセルを踏み込みます。それは、本当に大切なものは何かを常に考え続けているからです

大東京トイボックス

しかし、時にそれはエゴによる暴走とみなされ、太陽は孤立。淀みなく進むようになった作業を終えたチームにふと疑問が浮かびます。

「果たして、このゲームは本当に面白いのか?」

太陽一人が発していた「仕様を一部 変更する」というセリフと熱狂はやがてモモに伝播し、モモを媒介として仲間達を巻き込みながら広がります。仕様の変更に大変な労力がかかることを理解しながらも、ただただ面白いゲームを作る為に腹を割って話し合い、仲間全員で「仕様を一部 変更する」!!

大東京トイボックス

一人の暴走のように思えるエゴでも、みんなで同じスピードで走れば相対速度はゼロになる。

幾度もの挫折を味わいながらも、諦めることなく立ち向かい続けた珠玉のストーリーはぜひ本編でお楽しみ下さい。

仕事への情熱を見失ってしまった時は

仕事をしていて情熱を見失ってしまうこと、投げ出してしまいたくなることもあると思います。それでも決して諦めることなかった太陽を、夢と希望しか武器のなかったモモの周りを巻き込む情熱を思い出すことで、9,999,990点のその先を目指していけるような気がします。

そして、仕事に対して太陽のように答えられるように願いを込めて。

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『大東京トイボックス』を読んで仕事への情熱を再確認しよう!

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