実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。

ペス山ポピー

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『実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。』本作から感じる普遍的なテーマと濃厚な読後感の正体

少々物騒なタイトルと表紙で一際異彩を放つ、ペス山ポピー先生初の連載作品『実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。』。

実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。

特殊な性的嗜好を持つために人生で一度も恋愛経験がなかった作者が、自分の性的嗜好と極限まで向き合い、忘れられない初恋をするまでを描いた実録エッセイです。

そんな本作を読み終えた時に感じたのは、人生を生きる上での普遍的なテーマと濃厚な読後感でした。

抑圧し続けた性的嗜好を開放する

実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。

物心ついた頃から、肉体的な苦痛に対して快感を覚えるマゾヒズムの兆候があったペス山ポピー先生。ですが、自覚があるからと言って全面的に楽しんだり謳歌することは一切なく、人生の大半をその特殊な性的嗜好への葛藤や罪悪感に苛まれて生きてきました。

実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。

性的嗜好を一方的に抑圧し続ける日々に段々と疲弊していくのですが、1巻では今まで心の奥底にたぎらせていた性的嗜好を開放し、極限まで向き合うために出会い系を利用して奮闘する日々を描きます。

実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。

話を追うごとに露わになっていく、自分でも気付かなった自身の性的嗜好や性自認。そして、ある日出会い系で知り合った青年とのプレイをきっかけに生まれて初めての恋に落ちます。

実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。

2巻からは、そんなドラマチックな恋と自身の性的嗜好と性自認に翻弄され、物語はさらに加速していきます。

👉『実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。』1話を読む

濃厚な読後感の正体

実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。

センシティブな題材を扱いながらも、作中にコミカルなやり取りや大胆な比喩を用いることで、実録エッセイと言いながら「マンガ」として読ませてくるユニークな魅力がある本作。

作中では性的嗜好の中でもマゾヒズムに焦点を当てて物語が展開しますが、それがマジョリティなのかマイノリティなのかに関わらず、長い人生の中で自身が感じる迷いや葛藤、そして違和感とどう向き合って折り合いをつけていくのか。本作を読んでいるとそんな普遍的なことを考えさせられます。

実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。

そして、そんな考えを巡らせるきっかけとなったのが、本作の見どころでもあるペス山ポピー先生の行動力と言語化能力。これこそが濃厚な読後感の正体なのですが、それらを以ってしても解き明かせないのが「初恋」というもの...。

実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。

全力で向き合い、駆け抜けた初恋の行方をぜひご覧ください。

実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。 (全2巻) Kindle版

ペス山ポピー先生最新作『女(じぶん)の体をゆるすまで』

実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。

実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。』にも描かれている女性らしさという脅迫観念、そして性自認への葛藤。

7月30日に発売されたペス山ポピー先生の最新作『女(じぶん)の体をゆるすまで』では、性自認への葛藤をテーマに自分の過去と対峙し、独自の目線で社会に切り込みます。

アルでは、単行本の発売を記念してペス山ポピー先生にインタビューを敢行。ペス山ポピー先生が語る、自分らしく生きるために必要なこと...。インタビュー記事をぜひご覧ください。

インタビュー記事:『女(じぶん)の体をゆるすまで』単行本発売記念インタビュー!トランスジェンダーの作者が語った自分らしく生きるために必要なこと