『富士山さんは思春期』の表紙を目にした時、 ちょっとセクシャルな絵と「思春期」という単語が飛び込んできて、これはボーイズがこの女の子を楽しむためのちょっとエッチなマンガなのかな、という思い込みを持つ方が多いかもしれません。(え、僕だけ?)
しかし話が進むにつれて(きっと1話読むだけで)それが誤解であることに気づき、こんなにもピュアな思春期があるだろうか、という感動にきっと変わるはずです。
あらすじ
バレー部の超高身長女子・富士山牧央(ふじやま まきお)はひょんなことから幼なじみの上場優一(かんば ゆういち)と付き合うことに。
身長差20cmカップルが誕生するのですが、周囲に冷やかされるのが恥ずかしく、二人は誰にも打ち明けずに交際をスタート。
非常に文字が少なく、絵で訴えかけてくる作品で、マンガとしてヘルシーにサラリと読み進めることができます。
作者は『猫のお寺の知恩さん』を描いたオジロマコト先生。
身長181cmの富士山さんというヒロインは、担当編集者さんが単純に大きい子が好きだったからという理由で生まれ、女子バレー日本代表選手をモデルにしているとのこと。(参考:背が高いのはいいことだ 『富士山さんは思春期』で高身長女子に萌えろ!)
カンバと富士山さんの思春期
初めての彼女、初めての彼氏。お互い何をしたら良いのかわからないけど、とりあえず一緒にいたい。でも友達にはバレたくない。
季節は夏ということで、花火大会というラブコメには欠かせない定番のイベントがあるのですが、地元であるため堂々とデートができない二人。
それぞれの友達と祭りに出かけることになったカンバと富士山さんですが、お互いはぐれてしまい、なんやかんやと二人きりになり、出店を巡り金魚すくいをしたりと、初めてデートらしいデートをすることができます。
花火が打ち上がり、友達と合流をしてしまい、二人だけの時間が終わってしまいます。しかし、暗闇と人混みに乗じて手が触れ合うカンバと富士山さん。
第1巻の終盤にして、このマンガはこういう作品なんだぞ、という作者のメッセージが込められているかのごとく、ピュアの権化のような夏祭りデートに心を奪われるはずです。
こうした思春期特有のくすぐったくなる感じや、青春の清涼感が好きだという方は必読です。
物語が「告白」から始まった意味
『富士山さんは思春期』は第1話で、カンバの告白&富士山さんの了承という、ラブコメとしては珍しい、付き合う前の段階を大胆にカットした導入となっています。そして最終回も、一般的な節目ではないタイミングで完結します。
読者の間で、終わり方に賛否はあるのですが、オジロ先生はこの作品について、報われなかった中学時代を供養するような気持ちで描いているとおっしゃっており、本作では受験や進路など学生時代のリアルな描写はカットされ、美しい青春のみが切り取られています。(参考:【インタビュー】大きな女の子とコタツでなにする? 『富士山さんは思春期』 オジロマコト 先生 【後編】)
最終回を読んだ後、どうしてあの時点から物語が始まったのか、なぜ「思春期」というタイトルなのか、きっとあなたなりの答えが出るはずです。是非手に取ってみてください。