人は、生きる上で持っている「自由」の権利を奪われて生きていくことができるでしょうか。
2021年6月18日に最新第5巻が発売された『少年のアビス』の主人公・令児(れいじ)は「夜眠って、そのまま目が覚めない」日がいつ来てもいいと絶望を抱えて生きていました。彼は何を考え、どう暮らし、そしてどんな未来が待っているのでしょうか。
彼の「アビス = 深淵」に迫りながらそのあらすじや魅力を紹介していきます。
ここからは抜け出せない
かつて恋人が心中した「情死ヶ淵」の伝説を描いた小説『春の棺』。舞台となる町は、その聖地として知られるものの他には何もない田舎町。
この町で令児は、認知症の祖母、引きこもりで癇癪持ちの兄、そして女手一つで家族を養う母と四人で暮らしていました。断ち切ることのできない繋がりが、町に令児を縛りつけます。
「オレ 町を出れないんですよ」諦めるように、しかしそれが「当たり前」のこととして言い切ります。家族を置いて家を出れない、お金もない、さらには彼を町に引き留めようとする人もいるからです。
そんなある日、彼は一人の女性と出会います。彼女の名前は青江ナギ。令児が応援していたアイドルでした。「なぜ、こんな田舎の町に青江ナギが?」驚く令児ですが、抱えた絶望の一端を彼女に吐露してしまいます。
「私たちも今から心中しようか」それを聞いたナギは、令児にそう持ちかけました。
縛られ、逃れることができないと思っていた人生に、突如垂らされた蜘蛛の糸。それは「死」という提案でした。
死を意識したことで始まる「いのち」
提案された「死」やナギとの出会いは、令児に変化をもたらしました。死ぬこと以外にも、全てを捨ててしまうという選択肢、幼馴染のチャコと一緒に東京に行くという選択肢を考え始めます。
この町で一生を終え、死んでいく。そんなただ暗いトンネルを歩くだけではなく、自ら考え、道を選択する自由が朧げながらに令児の目の前に浮かび上がってきたのです。
少しずつ変わっていく令児ですが、前に進むことで自分をこの町に縛り付けるものたちがいかにがんじがらめになっているかに気付かされます。切っても切ってもその根を伸ばしてくる絶望が、読者の感情までもをこの作品に釘付けにします。
振り回され続ける令児は最後にはどんな結末を選択するのか。そもそも、望んだ未来を選択することができるのか。今後の展開はまだまだ読めません。
町の中で暴走する闇
この町で闇を抱えて暮らすのは令児だけではありません。今の暮らしに疲れ切っているのは彼の母も同じ。また、心中を持ちかけた青江ナギやその夫もまた、何かを抱えてこの町にやってきました。
心中しようとする令児を引き止めた担任や、憧れの作家と出会ってしまった幼なじみのチャコの人生も少しずつ想像もしなかった方へと転がり始めます。狂い始めた歯車は、大きく軋み、誰の制御もできぬままこの町に住む人々の人生を深淵へと進めていきます。
どこか諦観や疲れが滲む登場人物たちの表情に、感情が宿り表出する瞬間、読者は峰浪りょう先生の表現力に魅了されるでしょう。
嫉妬、怒り、悲哀、絶望、それらが凝縮された狂気とリアルが絶妙に混ざり合った表情を見た瞬間、何度も背筋が凍り、心にナイフが差し込まれたような気持ちになります。
それでも彼れらの行く末を追わずにはいられないのです。
現在第5巻発売中!
言ってしまえば、「自由」の奪われた世界の苦しさは本当の意味では本人にしかわからないものかもしれません。しかし確かにその苦しみは物語を通して読む者に伝わってきます。
巻を追うごとに状況は転換し、この物語の行き着く先は全く想像もできません。2021年6月18日に最新第5巻が発売されていますので、未読の方はぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
「少年のアビス」
第5巻 6月18日(金)
本日発売となります!
どうぞよろしくお願いします!
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そして5巻の発売と同日に「次にくるマンガ大賞2021 コミックス部門」のノミネートが発表されました。おめでとうございます!
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次にくるマンガ大賞2021 コミックス部門にノミネートされました!
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5巻発売記念PV
担任の柴ちゃん先生を日笠陽子さん、令児のお母さんを中原麻衣さんがそれぞれCVを務める5巻発売記念PVも公開されています。
(※ネタバレを含みますので未読の方はご注意ください)
2021年7月1日まで第1巻が無料公開中です!
"生きることに希望はあるのか。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤこの先に光はあるのか。"
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