怪獣自衛隊

井上淳哉 / 著 白土晴一 / 企画

『怪獣自衛隊』突如現れた巨大怪獣に自衛隊は、政府は、そして人類はどう立ち向かうのか!?

怪獣自衛隊』は、TVアニメ化もされた爆弾バトルロイヤルマンガ『BTOOOM!』を手がけた井上淳哉先生が描く、対巨大怪獣とのサバイバルバトルマンガです。

対巨大怪獣と聞くと主人公がヒーロー的な特殊能力を持っていて様々な怪獣と戦っていく、というようなストーリーが想像できますが、このマンガは「怪獣が出現する」という点以外でのフィクション要素はほとんどありません。

「今私たちが生活しているこの日本で突然怪獣が現れたら、自衛隊は、政府は、一般人は一体どう対処するのか?」という圧倒的なリアリティがこの作品の魅力となっています。

今回の記事では、そんな非日常の絶望をリアルに描く『怪獣自衛隊』の見どころをご紹介していきます。

物語は絶望から幕を開ける

ある日突然沖ノ鳥島近辺の海上に巨大な怪獣が出現し、救援要請を受けて向かった海上自衛隊の護衛艦が攻撃を受けます。

最大船速を出しても振り切ることができず、体当たりで船体を引き裂いてしまうほどの力を持つその怪獣に、自衛隊は為すすべもなくあっさり護衛艦ごと崩壊させられてしまいました。

このマンガでは、そんな自衛隊ですら敵わないような巨大生物に対して人類が挑み、平和を勝ち取るまでの物語が描かれていきます。

ただデカいだけじゃない怪獣の恐るべき身体機能と特徴

出現以降人類の敵となった巨大怪獣ですが、ただ大きいだけならそこまで苦労する相手ではなかったと思います。

しかしこの怪獣は人類を絶望させるには十分な身体機能と特徴を持っていました。

桁外れた聴力で人間を含む海面上の獲物を捕捉し、火器すらものともしない外皮を持ち、さらには口のついた無数の触手のようなものを自在に操って船内に逃げる人間まで襲って食べてしまうのです。

戦いの舞台が怪獣に有利な海の上ということもあり、何も抵抗できないまま無数の船が破壊され多くの人が命を落としていくシーンには、もはや諦めの感情すら湧いてきてしまいました。

怪獣に立ち向かうのは自衛隊になりたての1人の女性

これまで巨大怪獣の恐ろしさを書き連ねてきましたが、もちろん怪獣に立ち向かう主人公も存在します。

それは防人このえという1人の女性で、彼女は怪獣に襲われた豪華クルーズ船にたまたま祖母と一緒に乗っていた新人自衛隊員でした。

そこで彼女は理想とする自衛隊員に一歩でも近づけるようにと乗船客の安全に気を配りながら、特殊災害対策準備室へ船の現状を逐一報告する役割を担うことになります。

もちろん非力な彼女一人で怪獣をどうこうできる訳ではないのですが、彼女の存在と働きが対怪獣にどのような突破口を切り開いていくのか、そこが先の展開の見どころです。

圧倒的リアリティによって巨大怪獣が出現した世界を想像させられる作品

このマンガとよくあるパニックマンガとの1番の差はリアリティだと思っています。

スーパーヒーローなんていない現実にこんな巨大怪獣が現れたら自衛隊ぐらいしか対抗できませんし、作中に描かれる内閣対策本部の会話でも自身の立場や近隣諸国との関係を懸念するような発言が見られ、「実際こうなるんだろうな」ということが容易に想像できました。

しかしだからこそ、やられっぱなしの人類がどのようにしてこの巨大怪獣に一矢報いるのかが非常に気になるところです。

「巨大怪獣出現」という特撮映画のような設定でありながら、フィクション好き、ノンフィクション好きのどちらにもオススメできる作品です。

空想の世界にあるリアリティ

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