恋する寄生虫

三秋縋 / 原作 ホタテユウキ / 漫画 しおん・ホタテユウキ / キャラクター原案

『恋する寄生虫』この恋は自分の気持ちか寄生虫によるものか

原作・三秋縋先生、マンガ・ホタテユウキ先生、キャラクター原案・しおん先生、ホタテユウキ先生の『恋する寄生虫』は、潔癖症の青年と不登校の少女の不確かな恋愛を描いたサスペンスドラマです。

2021年には林遣都さん、小松菜奈さんのW主演で映画化が決定しています。

少女の面倒を見ろという謎の脅迫

重度の潔癖症をもつ高坂賢吾は、人が触れたものに触れることができません。外に出るたびにマスクと手袋をし、家は常に消毒されています。そんな高坂のもとに、和泉という男が現れます。和泉は高坂がつくったマルウェア(コンピューターウイルスなどの悪意のあるソフトウェアや悪質なコードの総称)をネタに高坂を脅迫します。

しかし和泉の要求は、多額の報酬と引き換えに、一人の少女の面倒を見てもらいたいというものでした。少女の名前は佐薙(さなぎ)ひじり。金髪でタバコも吸う彼女は、高校に行っていませんでした。高坂は和泉に、佐薙の不登校の理由を突き止めるように言われます。

27歳の初めての恋

人が苦手だったはずの高坂と佐薙は、部屋で話をしたり、一緒に出掛けたりするようになり、少しずつ打ち解け始めます。高坂は27歳で初めて、17歳の少女に対して確かな恋心を感じ始めるのでした。

しかし、和泉から高坂に驚愕の事実が打ち明けられます。それは高坂の頭に新種の寄生虫が棲みついていて、それが原因で社会に適応できないこと。さらに佐薙への恋心も虫によって引き起こされているということでした。虫を取り除ければ、佐薙への恋心も消えてしまうのかもしれない。それでも命を守るためには駆虫しなければなりません。高坂と佐薙は苦しい選択を迫られます。

虫に関わる名前

佐薙の名前は、蝶が幼虫から成虫になる時の蛹(さなぎ)を連想させます。また、高坂と佐薙を診察した医師の名前は瓜実(うりざね)です。寄生虫には瓜実条虫と呼ばれる種類がいますが、これはサナダムシと呼ばれる寄生虫の一種です。この瓜実医師は佐薙の祖父であり、佐薙の両親が自殺した後、佐薙と共に暮らしていました。

寄生虫博士として知られる藤田紘一郎(ふじたこういちろう)先生が、2001年に『恋する寄生虫―ヒトの怠けた性、ムシたちの可愛い性』という本を上梓されています。本書でも自分の身体を実験材料に寄生虫を育てる医師が登場しますが、藤田先生も自分の身体で寄生虫を育て、さらに名前までつけながら愛でています。

本書に登場する目黒寄生虫館では寄生虫グッズの販売もあるので、気になる方はぜひ行ってみてください!

虫は人に何をもたらしたのか

高坂と佐薙の頭の中に棲みついていたのは新種の寄生虫です。まだその生態はよく分かっていません。感染者同士に好意をもたらし、いずれ死に至らしめると思われていましたが、果たして本当にそうなのでしょうか。

佐薙は誰かを好きになる気持ちがなくなってしまうくらいなら、虫は駆除しなくていいと主張します。たとえそれが自分の気持ちでなくても、虫に操られている方が幸せだと。初めて人を愛する気持ちを知った二人の本当の気持ちはどこにあるのか、そして二人の選択とは。ぜひ読んでみてください!

予想外の結末に打ち震える!

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