情熱大陸への執拗な情熱
情熱大陸への執拗な情熱 著者は喪の1年を綴った『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』のエッセイ漫画家。熱心に見続けてきたテレビ番組「情熱大陸」にある日、同級生が出演しているのを目にして身もだえする。嫉妬だ。 ビールを飲むときは番組スポンサーのA社、外食は素朴さ狙いのかけそば。定番の「運転しながらトーク」も特訓。ナレーションとともにカメラに映る「俺」を意識しながら生活する。そんな片思いにも似た身辺漫画をネットで連載していたところ、「おもろい」と番組ツイッターで紹介され、「いよいよ上陸か」と身震いする。だが一向に声はかからず、失望。怒る。妻が夫の挙動にハラハラする様は映画「シャイニング」と重なる。本書の奥深さは、没頭する「自分」を怜悧なまでに客体視した「俺様漫画」であることだ。評者:朝山実(週刊朝日 掲載)
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