没落した華族として遊郭に売られていた少女・鈴ちゃんは、ある時、老舗の呉服屋の長男・藤島津軽に身請けされます。津軽はなぜ大金を払って鈴ちゃんを引き取ることにしたのでしょう。謎解きだけでなく、明治の時代感を伝える衣装や言葉遣いも魅力の物語、ぜひ読んでみて欲しい!
白紙の手紙に込められた想い
津軽は呉服屋の店主という仕事以外に、個人で「さがしもの屋」をしています。「さがしもの屋」では、猫を探したり落とし物を探したり。
ある日、津軽の友人の河内慎一郎が「手紙を探して欲しい」という依頼を持ってきます。
依頼主の教授は妻の手紙を探していました。借金の肩代わりを条件に買い取った妻は、他の男と手紙のやりとりをしていたというのです。美人の奥さんだったので、浮気をしてたのでしょうか。教授は悔しさをにじませます。
天井裏から発見された大量の手紙には、開封された痕がありません。
封を開けると手紙はなんと、すべて白紙!妻が残した白紙の手紙には、彼女の本当の気持ちが込められていました。
よく見ると鈴ちゃんの服装ってお話ごとに毎回違うんですよね。レースのドレスの時はとってもかわいかった!髪飾りやリボンの結び方、帯の柄など、細かいところに変化があって絵を見るのがいつも楽しみになります。ぜひそのあたりも注目してみてください!
遊郭のお姉さんたちの衣装はものすごく華やか!
津軽と鈴の出会い
鈴ちゃんが遊郭に売られた時、年の離れたお姉さんも一緒でした。鈴ちゃんは幼かったのでお客を取ることはありませんでしたが、お姉さんはすぐに働かされることになりました。
その廓で、遊女たちの謎の死が相次ぎます。
誰かがお菓子の中に毒を盛って、遊女たちを殺害しているよう。犯人の魔の手はついに鈴ちゃんにも!
大事なお姉さんの心が徐々に壊れていくのを、鈴ちゃんはずっと見ていました。繊細な心理描写に胸が詰まります!
鈴ちゃんの恋の行方も気になる!
自分を子ども扱いする津軽に対し、恋心を抱き始める鈴ちゃん。津軽の過去や自分のことをどう思っているのかが気になって仕方がありません。なにしろ、津軽は親から借金をしてまで、鈴ちゃんを引き取ったのですから。
子ども扱いしないでと言って、頑張って大人っぽくしようとしてる鈴ちゃんの姿はとても可愛らしいのです。鈴ちゃんの恋の行方も見逃せません!
幼い身の上で周囲に気を遣って生きる聡明な鈴ちゃん。彼女の出生には秘密があり、物語が進むにつれて徐々に明らかになっていきます。歴史を感じさせる絵柄に緊迫感のある極上のミステリー。飄々とした津軽の雰囲気も好き。ぜひ、読んで欲しい一冊です!