恋愛マンガの中ではよく「禁断の三角関係」という言葉が用いられることがあります。この『春の呪い』という作品の中では、一風変わった三角関係が描かれているのが特徴です。それは死んだ妹と、その妹の婚約者との三角関係です。
本作は「このマンガがすごい2017オンナ編」では第2位を受賞しており、大きな話題にもなりました。作者である小西明日翔先生は、元々個人サイトで小説を書いていた経歴もあり、インパクトのあるセリフ選びや、キャッチーなタイトルを作るのが非常に巧みです。
全2巻という短めの構成ですが、映画を見ているような繊細な心理描写や、長い時間をかけて移ろいでいく人間模様に目が離せません!
妹の死というインパクト
まず何と言っても特徴的なのが、1ページ目の1コマ目から主人公の立花夏美の妹である立花春が亡くなり葬式を行っているシーンから始まることです。このインパクトがある冒頭は、ネット上で1話の無料サンプルが公開された時から大きな話題になっていました。
異常と思えるほど思い詰めた表情をしている夏美の様子から、一気にストーリーに引き込まれていきます。
作画はどちらかというと全体的にシンプルかつ線が太めの作画です。ですが、表情の描き分けが非常に上手く、微細な心の動きの変化を読者に気づかせるような工夫がしてあるので、セリフの無いコマでも物足りなさを感じさせません。
最愛の妹を婚約者に奪われた姉
立花夏美は、明るくて社交的な性格の持ち主です。実の母親によく似ていて、妹を溺愛しており、忙しいなかでも春の病室に毎日通っていました。
妹の立花春は成績優秀で優しく控えめな性格の持ち主です。姉の夏美とは、父親が再婚した後も「大人になったら家を出て一緒に暮らそう」と約束していたほど仲が良く、いつも辛いことがあると二人で慰め合って生きてきました。
ある日のこと春に縁談が持ち掛けられ、その相手である柊冬吾が家にやって来ます。その時から姉妹の関係が崩れ出してしまいます。春は財力もあり男前である冬吾に一目惚れし、婚約者となるのですが、夏美は春を冬吾に取られたと感じて「この男を殺してやりたい」とまで思ってしまうようになります。
春の軌跡を二人で追うことに
ある日春は癌により19歳という若さで他界してしまいます。夏美が春の葬式の後に悲しみに打ちひしがれていると、冬吾から縁談の件について「妹が死んだのならその姉(夏美)と付き合ってみてはどうかという話になった」と告げられます。
最愛の妹を奪った男から持ちかけられた話に怒りが湧くも「春と二人で行った場所に自分も連れて行って欲しい」と1つだけ条件を付けて交際をスタートさせます。冬吾と一緒に、自分を置いて死んでしまった春の軌跡を追うことになります。
巡る季節と3人の関係
季節が巡っていくにつれて、3人の関係性も徐々にと変わっていくことになります。同じ出来事でも視点を変えてみると、認識の違いがあったことに気づくのがこの作品の味であり、面白いところです。1巻の終わりでは驚愕の展開が待っているので、続きをすぐに読みたい!という気持ちにさせられます。
全2巻のため金額的にも購入もしやすく、短い時間でも読みやすい作品だと思います。是非、時節柄家で過ごすことが多いという方にオススメの作品です。