母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。

宮川サトシ / 著

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『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』人生を押し進める最愛の人との別れ

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』は、作者の宮川サトシ先生の実話をもとにしたコミックエッセイです。末期の胃癌という告知を受けた母との最期の日々と、家族のその後を描いた物語に胸打たれます。

2019年には宮川先生役を安田顕さん、お母さん役を倍賞美津子さん、恋人の真里役を松下奈緒さんという豪華メンバーで映画化されました。

なぜこのタイトルに?

ちょっと衝撃的なタイトルは、母親の余命宣告を聞いてから、宮川先生が携帯にメモしていた覚え書きから生まれました。

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。

最初は医師とのやりとりを忘れないようにメモしていた宮川先生ですが、そのうちに母親とのやり取りやその時感じたことをメモするようになっていきます。

メモを読み返した時、「遺骨を食べたい」という思いが自分の一番強い感情だと思い、このタイトルを選んだのでした。

本作では、母親の遺品を持って行こうとする子どもたちに嫉妬めいた感情を抱き、「遺品がアイドルの公式グッズのように思えた」という表現があります。

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。

遺骨を食べたいという思いもそうですが、単に「遺品が惜しくなった」という言い方ではなく、細やかな感情が独特の表現で表されていることに、宮川先生の作家としての表現力の高さを感じさせます。

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。

「死」とわたしの関係

看病に慣れてきて、病室で借りてきた映画を見るようになってきた時に思ったことや、時間が経って少しずつ、「死」と「寂しさ」を離せるようになってきたこと。

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。

「死」によって感じたことが、人生を先に進めていくこと。

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。

宮川先生はある日、まだ見ぬ自分の子どもに手紙を書き始めます。それはまるで遺書のように、残された人たちへのメッセージでした。

味方でいてくれる存在

本作でも胸を打たれるシーンの1つは、宮川先生の仕事の自慢話をお母さんが飽きずに聞いてくれたというところです。

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。

自分ががんばってきたことを無条件に誇りに感じてくれる存在があるって、すごくありがたいですよね。

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。

東京に移住を決めた時には、まだマンガ家としてどうなるか分からなかったという宮川先生も、2020年8月現在はくらげバンチで連載中の『宇宙戦艦ティラミス』で原作を担当。『宇宙戦艦ティラミス』は、2019年度の第22回文化庁メディア芸術祭マンガ部門で優秀賞を受賞しています。

宮川先生の自慢を聞いてくれる存在は現在、先生の妻や娘へとバトンが渡ったのかもしれませんね。

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。

大切な人がいることの幸せ

SEKAI NO OWARIのボーカルFukaseさんのツイートも話題となった本作は、親子の日常の中に無数の愛情が散りばめられていたことに気づかされる名作です。

ぜひ読んでみてください!

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。(新装版)
宮川サトシ/著