作品概要
『潮が舞い子が舞い』は、阿部共実先生による作品です。
2019年1月より、別冊少年チャンピオンで連載開始。
その他、マンガクロスでも不定期更新されています。
あらすじ
青春真っ只中の高校2年生は、男子も女子もみんなが主人公。
潮風を感じる田舎の港町で繰り広げられる高校生の何気ない日常は、時に狂気的で、時にエモーショナルでーーー。
豆知識
多くのキャラクターが登場する『潮が舞い子が舞い』。彼らはそれぞれ特定のグループでつるむことが多いですが、それには法則性があります。
例えば百々瀬、一万田、五十嵐のように数字でくくられたグループや晴原、雨窪、雲出のような天候でくくられたグループなど。彼らの名前に注目するとキャラクター同士の関係性が見えてきます。
登場人物紹介
水木祐樹(みずき ゆうき)
交友関係が広く、誰に対しても気軽に接することのできる好青年。
本人は女子慣れしているわけではなく無自覚だが、女性陣からの評価は高い。幼稚園から高校まで一緒の幼馴染の百々瀬とは腐れ縁のような関係で、周囲からは付き合っているのではないかと噂されるほど親密な仲に見られている。
拓海と大地という二人の弟がおり、よく面倒を見ていることもあって同級生に対しても世話焼きな一面がある。
近所のスーパーマーケットでアルバイトをしている。百々瀬や火川と同じく、第三中学出身。比較的常識人ポジションであること多い。
火川(ひかわ)
中学時代に転校して水木のいる団地へ来た、高身長のイケメン。女性慣れしておらず、付き合いの長い百々瀬くらいにしか上手く接することができない。
同じクラスの一万田から想いを寄せられていたが、R15のセクシービデオを選んでいる姿を見られ、一方的にフラレている。
風越(かざこし)
色黒で八重歯が特徴的な男子。水木や火川、土上と一緒にいることが多い。元気なお調子者でしばしば滑る。第二中学出身。
土上(つちがみ)
クラスの委員長を務めている小柄な男子。水木に弟のように世話を焼かれている。
水木たちと一緒にいることが多いが、筋金入りのオタクで、前島や右佐ともよく話している。
百々瀬奏(ももせ かなで)
水木と幼馴染の口が悪く強気な性格をしたツインテールの女子。一万田や五十嵐と一緒にいることが多い。
妹と弟がおり面倒見の良い性格で、一万田のような小柄な女子には包容力を見せる。
好みのタイプは「妙な包容力がある男」「影がある男」「優しさは時々しか見せないしかしその一発が抜群な男」。
オカルト否定派だが創作物としてのホラーは好き。第三中学出身。
一万田(いちまんだ)
小柄で性格も子どもっぽい女子。百々瀬や五十嵐から「バグっている」と呼ばれる言動が多くよく突っ込まれている。
サンタを信じており、それを巡って百々瀬と五十嵐が激論を交わした。
火川に好意を抱いていたが、レンタルビデオ店での振る舞いを見てあっさり冷める。
百々瀬、五十嵐のことを「最高の友達」と呼ぶほどに懐いている。
五十嵐(いがらし)
高身長で三白眼の女子。百々瀬や一万田とよく一緒にいる。噂話が好きで、百々瀬と水木の仲をからかっている。
右佐功太(うさ こうた)
中二病で、流行りのものを批判しがちなオタク。しかし根は真面目な男子。
オタク仲間の前島や土上、柚下と一緒にいることが多い。
虎美とは正反対の性格ながら相性がよく、そのことを犀賀や狐塚などクラスの中心にいる女子にからかわれることもある。
母親から「こーちゃん」と呼ばれるのを恥ずかしがっているが、買い物に付き合うなど家族仲は非常に良い。
感情が昂ぶると髪の毛が動物の耳のように逆立つ。
前島(まえじま)
眼鏡をかけたオタク男子。チャットアプリのアイコンにするほど右佐と仲が良い。水木たちとも交友関係があり、「前ちゃん」と呼ばれている。右佐のフォローに回ることの多い常識人ではあるが、女性の好きな部位を「歯」と答えるなど異端な一面も。眼鏡を外すと瞳の綺麗な美少年に変貌する。
虎美結(とらみ ゆい)
気が強い女子。犀賀や狐塚とよく一緒におり、彼女たちは虎美のかわいいモノ好きなところを愛おしく思っている。また趣味嗜好には少年らしい一面もあり、右佐と意気投合することも。教師公認で常にパーカーを着ている。パーカーは腕の傷を隠すためのものでもあり、この秘密は生徒では右佐にだけ共有している。第三中学出身。
犀賀(さいが)
タレ目でゆったりとした口調で話す女子。小悪魔的な言動で男子からの人気を集めている。かわいいものに目がなく、狐塚とともに「かわいいものしゅきしゅき大好き秘密クラブ(別名:虎美ちゃんしゅきしゅききゅんきゅんファンクラブ)」を組んで虎美や右佐をかわいがっている。第二中学出身。
狐塚(こづか)
ロングヘアで糸目の女子。黒色のニットを着ている。犀賀とともに虎美をかわいがったり、右佐をからかったりして楽しんでいる。第三中学出身。
黒羽根(くろばね)
ヤンキーグループの中心的男子。見た目や口調は威圧的だが、水木たちが教室ではしゃいでいるのを注意するなど根は真面目。周囲からヤンキーに見られ怖がれているのではないかと気にしている。枇杷谷とは小学校からの幼馴染。第二中学出身。
白樺(しらかば)
ヤンキーグループの白髪でオッドアイの男子。同級生達のモノマネが得意で、男女問わず完璧にトレースできる。唯一百々瀬のモノマネだけは水木から「全然似てない」と指摘されていた。
赤桐(あかぎり)
ヤンキーグループの大柄な男子。女性の好きな部分は「精神」。口数は少ないが、黒羽根らを励ますことも多く、まともな部類の人間。
黄金井(こがねい)
ヤンキーグループのマロ眉の男子。黒羽根たちがクラスに馴染もうと計画を立てているときに、もっと女子とも話せるようになりたいと提案していた。
柿境(かきざかい)
眼鏡をかけた地味なオタク女子。枇杷谷、柚下と一緒にいることが多い。人一倍青春することに真剣で、恋愛に対して興味津々。ダイエット、スカート丈を短くするなど本人としては努力をしているが報われていない。
枇杷谷・柚下とは「東アジア女子会機構」を結んでいる。
枇杷谷真奈美(びわたに まなみ)
頭にカチューシャを付け、ジャージの上からスカートを履くオタク女子。
恋愛には全く興味がないが、漫画の話になると人一倍楽しそうに話す。
柿境から認められる典型的なツンデレタイプ。
黒羽根とは小中高と一緒。「びわたに」という食堂の一人娘。第二中学出身。
柚下(ゆのした)
グラマーな体型でお団子ヘアのオタク女子。母性あふれる性格やスタイルの良さ、声のかわいさを柿境から羨ましがられている。暴力的なゲームが好き。右佐や前島といったオタク男子とも仲が良い。第二中学出身。
釣岡(つるおか)
滝中出身者の中心男子。優しくて明るくてかっこいいクラスの中心的な人物だが、中学の頃は「八方美人のおべっかやろう」と陰口されたこともある。その時から感じていた鬱憤を車崎にだけは打ち明けた。
車崎(くるまざき)
滝中出身者の男子。言いたくなったことは悪口であろうとすぐに話してしまう性格で、本人もそのことを気にしている。自分と正反対の釣岡にコンプレックスを抱いていたが、彼の本音に触れることで友情を一層強固にする。
旅屋(たや)
滝中出身者の女子。バーグマンからは「欲のままに生きてそう」と表現される。
垢抜けていて派手な恰好をしているが誰にでも気さくに接するため男子からの人気が高く、クラスのアイドル的な立ち位置。
歌野(かの)
滝中出身者の女子。旅屋同様、バーグマンからは「欲のままに生きてそう」と表現される。旅屋と一緒にいることが多い。
派手な見た目をしており、ツインテールでアヒル口、瞳の中が三角形になっている。
縫部萌(ぬいべ もえ)
滝中出身者で、大きなリボンでポニーテールにしている女子。高身長で、読者モデルをしている。尊大な性格で自信家、口も悪いが正論で返されることに弱く、すぐに泣いてしまう。泣くと小さな女の子のような口調になってしまうが、「かわいい」「大好き」と言ってあげると回復する。
刀禰(とね)
ガリ勉男子グループの男子。恋愛に極端に疎く、剣持たちの言動に振り回されている。
課外授業の帰り道で一緒になって以来バーグマンを意識するようになる。
縫部に執拗に絡まれたり、柿境の気になるクラスの男子ランキングに入っていたりするなど、女子からの評判は高い。
剣持(けんもち)
ガリ勉男子グループの小太りの男子。よくモテたいと口にしている。滝中学出身。
槍原(うつぎはら)
ガリ勉男子グループの糸目の男子。常識人ポジションで、振り回されがちな刀禰のフォローに回ることが多い。
弓立(ゆだち)
ガリ勉男子グループのメガネの男子。いつも口を半開きにしていて表情にほとんど変化がない。被害妄想が強い性格。
過干渉してくる姉と二人暮らしをしている。
斧生(おのお)
ガリ勉男子グループの目つきの悪い男子。いつも気だるそうにしている。滝中学出身。
真鈴バーグマン(まりん バーグマン)
北欧系の血を引く「日本育ち日本国籍無宗教バッチバチの日本人」(本人談)。孤高の美少女の佇まいながら言動は独自の哲学をベースにした突拍子もない言動が目立つ。
百々瀬のことを深く信頼している。
他人からはバーグマンと呼ばれることがほとんどだが、百々瀬と中畔は真鈴と下の名前で呼ぶ。
褒められることに弱く、調子に乗りやすい性格でもある。
港中学出身。
晴原(はるはら)
常識的だが、なかなか自分の意見を口に出せない女子。雲出に振り回される雨窪を心配しながら見守っている。
雨窪(あまくぼ)
高身長で怖そうな外見をしているが、本当は心優しい恥ずかしがり屋の女子。雲出に恥ずかしい思いをさせられながらも気を遣ってしまう友達思いな性格。水木達と同じ団地に住んでいる。
雲出(くもいで)
小柄で関西弁を話す女子。マイペースで雨窪や晴原を振り回すことも多いが、彼女たちとの友情をとても大切にしている。
大垣内(おおがいと)
ロングヘアの小柄な女子。中畔や小笠原とよく馬鹿騒ぎしている。極度の潔癖症。
中畔(なかぐろ)
ツインテールで小柄な女子。叫んだり駄々をこねたりするなど子どもっぽい言動が目立ち、百々瀬や水木にあやされている。水木に想いを寄せているような描写があるが、上手く伝わっておらず空回りしている。突拍子もない言動が目立つが比較的常識人のようで、大垣内、小笠原相手だとツッコミ役に回る。
小笠原(おがさわら)
ボーッとしている高身長の女子。常に口を半開きで表情も変わらないが、百々瀬に自身の発言の間違いを指摘されたときは赤面していた。突拍子もない言動で周囲を驚かさせることも多い。
那智(なち)
2年4組の担任を務める男性。摩耶とは正反対にキッチリした性格をしている。
摩耶(まや)
2年4組の副担任を務める女性。担当教科は世界史。生徒と撮った写真をSNSに投稿して人気を得ようとするなど危なっかしい言動が多い。生徒からはちゃん付けで親しまれている。
湖港(こみなと)
水木家の隣の部屋に住む愛煙家の女性。プロの漫画家だが、水木を除く周囲にはそのことを隠してツダヤ(レンタルビデオ店)のアルバイトをしている。摩耶とは高校の同級生であり、よく一緒に飲んでいる。
浜(はま)
水木達と同じ団地に住む無職の男性。ゲームや漫画が好きで、水木や火川と仲が良い。意思が弱いと自称しており、前職のコンビニバイトでは断れずに何十連勤もしていた。
御崎(みさき)
水木のアルバイト先の後輩男性(水木よりも年上)。偏見が強い。自分探しのために埼玉県からやってきた。
氷室(ひむろ)
水木のアルバイト先の後輩女子。表情が変化しない冷静な性格に思えるが、内心では感情豊かで、水木への好意が爆発している。
羽坂(はさか)
水木のアルバイト先で副主任を務める女性。常識人の立ち位置で、御崎の偏見にドン引きする事が多い。
水木拓海(みずき たくみ)
水木の弟で、小学4年生。
人見知り気味で普段は周りに見せることは少ないが、水木によく懐いている。
水木大地(みずき だいち)
水木の弟。拓海と反対に天真爛漫で元気いっぱいな性格。
百々瀬肇(ももせ はじめ)
百々瀬の弟で、中学2年生。年齢相応に百々瀬に反発することもある。
百々瀬彩音(ももせ あやね)
百々瀬の小学生の妹。地域の文化交流会で水木と一緒になったときに「さいやくー」と言うなど生意気盛りな一面がある。
百々瀬大祐(ももせ だいすけ)
百々瀬の小学生の弟。
作品の魅力
癖の強い独自哲学と言動
阿部共実先生の作品の特徴として、キャラクターの癖の強い言動や独特の考え方があります。例えばバーグマンの挨拶についての考え方。人見知りな彼女は挨拶の存在そのものへ疑問を投げかけます。「おはよう」と言われたら「おはよう」と返さねばならない挨拶の法則に疑問をもったバーグマンは、独自の理論で挨拶ということのおかしさを指摘します。
私がボボンガ!って言ったら言われた被ボボンガ者(しゃ)は即座にガンガガゴンガガ!ってボボンガ者に返事して それを確認した最寄りの第三者はボボンガ者とベロベロリンガー!って合わせて咆哮する!できなかったら人間失格ですよ!
その他のキャラクターも独自の理論を次々と展開していき、本作が単なる青春コメディではないことに気づかされます。世界観や思春期の感情の動きなどリアリティの高い描写も魅力的な『潮が舞い子が舞い』ですが、現実離れした癖の強さは見逃せません!
グループごとの関係性の変化
豆知識にも書いたとおり、『潮が舞い子が舞い』にはキャラクターの名前ごとに特定のグループ分けがされています。
しかし、同じクラスにいる以上他のグループと絡むことも当然あります。
例えば右佐。オタク男子の彼は同類の前島とよく一緒におり、漫画やアニメの話を元気よくしています。しかし、クラスの中心的な女子の犀賀や狐塚、虎美と絡んでいるときは途端に静かになってしまいます。
こんな風にクラス内の立ち位置や男女の違いによってキャラクターの言動が変化していくのも魅力です。
誰と誰が仲が良くて、誰といると普段とは違った言動になるのか…といった想像をするだけでもっと本作を楽しめるようになります。
受賞歴
「このマンガがすごい!2021」オトコ編28位
掲載誌
別冊少年チャンピオン
作者情報
作者は阿部共実先生。
2011年より、週刊少年チャンピオンで『空が灰色だから』(全5巻)を連載していました。その後別冊少年チャンピオンにて『ブラックギャラクシー6』(全1巻)を連載。
2013年から連載を開始した『ちーちゃんはちょっと足りない』(全1巻)では、「このマンガがすごい!2015」オンナ編1位を受賞しました。
同年Champion タップ!にて『死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々』(全2巻)を連載開始。
2017年からは週刊スピリッツにて『月曜日の友達』(全2巻)を連載開始。「このマンガがすごい!」2018オトコ編4位など、多数受賞しました。
その他、短編集として『大好きが虫はタダシくんの』が2013年に刊行されています。