煙と蜜

長蔵ヒロコ / 著

『煙と蜜』許嫁の少女との歳の差は18歳。年齢の壁を越えて愛を育む2人の尊さに思わずときめく!

月刊誌ハルタで連載中の長蔵ヒロコ先生による『煙と蜜』。この作品で描かれているのは、大正時代を生きる少女・花塚姫子軍人・土屋文治の恋物語です。

12歳の姫子と30歳の文治、2人の関係は「許婚」。その年の差なんと18歳!けれどその年齢差ゆえの2人の丁寧な愛の育み方に、今多くの読者がハートを鷲掴みにされているのです…!

大人への憧れに一喜一憂…少女・姫子の表情が可愛すぎる

この物語の魅力はなんと言っても、物語の主人公である2人のキャラクターではないでしょうか。

文治の許婚となっている少女・花塚姫子はまだたった12歳。今の時代の12歳に比べると確かに大人びているとは言え、彼女はまだまだあどけなさを残した幼い少女です。

病弱でありながらも優しい母、そして家の女中である龍子、月子、星子、こま子という4人の大人の女性に囲まれて暮らす姫子。そんな彼女の今のもっぱらの興味事と言えば、どうすれば彼女たちのような、素敵な大人の女性になれるか、ということばかりです。

「彼女たちの役に立ちたい」、「自分も彼女たちと同じような、素敵な女性になりたい」。

そんな思いで世話をされているという立場に甘えることなく、女中である彼女たちとなるべく近い距離で、姫子は日々家仕事のお手伝いに励もうとします。その姿は、まさに小さな子どもが大人の真似をして背伸びをしている様子そのもの。

これまで大勢の素敵な人に囲まれて育った、素直で純粋な少女である彼女。そんな姫子は許婚である文治に対しても、彼のような大人に近づきたいと幼いながらに奮闘するのです。

その姿は見ていてとても微笑ましく、思わず彼女を抱き締めてあげたくなるほどの可愛さとなっていますよ。

男も憧れ女も惚れる…軍人・文治の男らしさも目が離せない

そんな姫子の許婚である軍人・土屋文治。彼もまた非常に魅力的なキャラクターとして、男女問わず多くの読者の心を射止めているのではないでしょうか。

オールバックの髪形に切れ長の目の下に隈を携え、どこか穏やかな、時にアンニュイな表情を浮かべる寡黙な男。その真の姿は、配下に700人の部下を従える軍隊の大隊長である少佐の地位に就く人物です。

軍人としての彼は、多くの部下に慕われ、彼らの命運を一手に託されている非常に重大な責務を負う人物でもあります。それ故に時には自身の責務を全うするべく、職務の中では厳しい表情を見せることも。

ですがそんな彼も姫子の前では、可愛い許婚を目の前にした1人の男。きっと愛する人の前でしか見せないであろう彼の表情に、思わずキュンとしてしまう女性読者がどうやら後を絶たないようですね。

親の決めた結婚相手、それでも確かに愛し合う2人

18歳という大きな歳の差を抱える、「許婚」という関係である彼女たち。彼女たちは確かに親同士が勝手に決めた結婚相手で、最初から互いのことを想い合った上での関係ではなかったかもしれません。

ですがそれでも、姫子は文治を。そして文治も姫子を。とても大切に、そして丁寧に愛している描写は、見ているこちらも思わず胸がときめいてしまうほどの尊さなんです…!

文治にほんの少し普段と違う触れ方をされただけで、顔を真っ赤に染め恥ずかしげに目を伏せてしまう姫子。

そしてそんな彼女を年下の少女としてではなく、どこまでも大人の男である自分と対等に女性として扱う文治。

2人が、正式な夫婦となるまであと3年。その残りの時間で2人がどのように愛を育んでいくのか、これからがとても楽しみな作品となっています。

年上の人、年下の人。

煙と蜜 (全2巻) Kindle版