ただひたすら龍を求め、風を捕らえ、狩り、食す。これは帰る港の無い空の狩人たちの物語。
…しかしこのマンガを真夜中に読むのはオススメしません。なぜなら必ずあなたの食欲を刺激するから!
あらすじ
空に龍が生きる世界。彼らの生態は未だ多くの謎に包まれており、また滅多に人前に姿を現すことは無いが、その肉、油、骨、筋、全てが人々にとっては貴重な資源であり、それゆえ捕獲に成功すれば非常に高く売れる宝の山でもあった。
そんな龍の狩りを生業とするのが「龍捕り(おろちとり)」と呼ばれる空の狩人たち。今ではその姿を見かけることも少なくなった捕龍船だが、「クィン・ザザ号」はいまだ現役で西へ東へ空を駆けていた。
その船員の1人、ミカ。普段はぼーっとして何を考えているかよく分からない彼はしかし、龍の気配をいち早く察知する特別な感覚を持ち、身ひとつで龍に飛び乗ってトドメを刺す凄腕の龍捕りであり、そして誰よりも、何よりも龍を美味しく食すことに情熱を注いでいた。
今日も彼らを乗せ、クィン・ザザは龍を求めて空へ立つー。
垂涎を禁じ得ない龍料理
この作品を特徴付けているのは、なんと言っても作中に登場する龍料理の数々!架空の生物である龍の調理になぜこれほどまで説得力を持たせ、そしてめちゃくちゃ美味しそうに描くことができるのか…肉の食感、脂の照り、湧き立つ湯気や匂いまで五感に伝わってくるよう。こちらのお腹まで鳴りそうです。幻想的で壮大さを感じさせる表紙から誰がこんな(ダイエット的な意味で)キケンな誘惑を想像したでしょうか…龍肉食べたい。
また龍はその全てが変異種であると言われるほど多種多様であり、街や家庭ごとに独自のレシピがあり、そしてクィン・ザザは世界の空を旅している…。
「とった龍はちゃんと食うんだよ」
つまりミカが龍を追う限り、新たな龍料理が私たちの前に現れ煩悩を刺激するのです。さあ次はどんな一品で楽しませてくれるのか!?
空に生きるということ
前項では熱く龍料理について語りましたが、もちろん本作の魅力はそれだけではありません。龍を追う彼らはその内にそれぞれの事情と想いを抱えていますが、ミカの食への飽くなき探究と共に登場人物たちのエピソードも徐々に語られつつあります。命を賭けた龍との闘いを通して彼らの言葉を聞き、その生き様に触れることで、物語がどんどん深みを増していきます。
そんななか印象的だったのは、凄腕の女性船員ヴァナベルの「地上に居場所が無かったから空の飛び方を覚えただけ」というセリフ。その背景とも相まって、まるで龍の運命とシンクロしているかのよう。もしかしたら彼らも太古の昔、地上の争いから逃れるために遙か空の彼方に居場所を求めたのかもしれませんね。
また個人的に好きなのが、熟年夫婦のようなミカとヴァナベルのやりとり。共にピカイチの捕龍や解体の技術を持ち、一方で他の(元気過ぎる)船員たちと違いあまり感情を表さず過去も語らない2人。お互い自然と信頼しているような、それでいて踏み込み過ぎない、そんな距離感が最高のバディ。
思わず手を止める圧倒的な見開き描写
またこの作品では、伝説とされる龍や登場人物と浅からぬ因縁を持つ龍、そして重要なエピソードを描く際など随所に見開きが印象的に使われており、思わずその手を止めずにはいられません。荘厳な龍の姿と相まり、さながらそれ一枚で物語を想起させる絵画のよう。
ここに載せたのはそんなカットのほんの一部。ぜひ本誌を手に取り、美しいシーンの数々に圧倒されてください。
美しさとロマンと龍肉のハーモニー、『空挺ドラゴンズ』。そのあまりに幻想的かつ現実感あふれる世界観に、きっとあなたの想像力と食欲が刺激されるはず!
さらに2020年1月からフジテレビ「+Ultra」枠にてアニメ化!またNetflixでの配信も決定されています。既に予告編が公開されていますが、壮大な映像美と音楽に早くも期待が高まる!!
また現在(2019年10月8日時点)Kindle版では1巻が0円となっているので、こちらもお見逃しなく。