どこかにある2つの国。A国とB国。貿易で栄えるA国と、豊かな自然を持つB国は昔から犬猿の仲。そんな2つの国には昔々神様が決めた、ある取り決めがありました。
―A国は国で一番美しい娘をB国に嫁にやり、B国は国で一番賢い若者をA国に婿にやりなさい―
こんな書き出しから始まる物語が『金の国 水の国』です。今回はこちらの名作についての魅力をいまから思う存分アピールしたいと思います!
国をまたがった謀略と政治。ハラハラドキドキのストーリー!
さて、言い伝え通り花嫁と花婿を交換することになるA国とB国ですが、そこはいがみ合う2国、単純にはいきません。なんとA国は花嫁の代わりに猫を、そしてB国は花婿の代わりに犬を送ってしまうのです。
A国の花嫁と結婚するはずだった学者の息子ナランバヤルと、B国の花婿と結婚するはずだった国王の末娘サーラ。心優しい2人はそれぞれ両国のメンツを保つため、このことを隠し通そうと決心します。
ここから始まるサスペンスは読みごたえ抜群!B国との戦争を起こすことで資源と威厳を手に入れようとする国王と、それを支援する右大臣たち。その娘である反戦派の王女たちはイケメン俳優出身の左大臣を寵愛しています。その中にやってきたB国の男ナランバヤルによって、A国の情勢は一変していくのです!
様々な思惑が交差するA国の王宮内。ある理由から両国の間に国交を開こうとするナランバヤルが、A国内の派閥争いに巻き込まれていく様にどんどん引きこまれていきます。
ひかれあっていくナランバヤルとサーラ。魅力的な2人のやり取りに注目!
ひょんなことから知り合ったナランバヤルとサーラ。この2人がひかれあっていく様もとても魅力たっぷりに描かれています。
特にお勧めしたい見どころは2人の出会いのシーン。
それぞれのおうちに両国から贈られた犬と猫。サーラは犬にルクマンと名付け、ナランバヤルは猫にオドンチメグと名付けます。この2匹を散歩させているときに2人は偶然出会い、ちょっとしたトラブルをナランバヤルが解決したことからサーラはお礼に食事をご馳走しようとします。
その時にナランバヤルは、こうサーラに問いかけます。
「お嬢さん そんなお人好しじゃダメですぜ あっしがもし悪い奴だったらどうするんだよ」
これに対し、サーラはこう答えます。
「家族にオドンチメグ(星の輝き)なんて名前を付ける方に 悪い人はいませんわ」
猫を家族と呼ぶ心のやさしさ、言葉の意味をお互いにわかって、なおかつ素敵と感じることによる価値観の共有、そしてネーミングセンスで人を信頼できる心の純真さ。
このさらっとしたやり取りに含まれる心の機微!ナランバヤルは一瞬で心を奪われてしまうのです。
このように、魅力あふれる2人の交流が、繊細なのに確かに伝わる筆致で描かれていきます。
そして物語の結末は?
本作にはまだまだ語り切れない魅力がいっぱいです!
いがみ合うA国とB国。この2つの国は果たして戦争となってしまうのか?それとも和平を結べるのか?そしてナランバヤルとサーラの恋の行方は?
もし未読の方がいらっしゃいましたら、ぜひぜひ読んでみてくださいね。
人をやさしく肯定したくなる、そんな一冊です。
幸せな気持ちになりたいあなたへ
また、作者の岩本ナオ先生は『マロニエ王国の七人の騎士』を連載中です!『金の国 水の国』が気になった方はぜひこちらの作品も読んでみてくださいね。
2021年5月現在、第5巻が発売中です!