銀魂

空知英秋 / 著

『銀魂』はギャグだけじゃない!シリアス篇から学ぶ「侍道」とは?

銀魂』は週刊少年ジャンプにて2004年から2019年まで連載されていた空知英秋先生の代表作で、「SF人情なんちゃって時代劇コメディー」という独自のジャンルを築いた作品です

筆者はアニメの第1話が放送された時に『銀魂』を知って、それからずっと作品を追い続けていました。原作・アニメともども紆余曲折がありましたが、無事に物語が完結した時の感動は今でも忘れられません。

物語が完結した今だからこそ、より多くの方々に読んでもらいたい! そのような思いで、今回は『銀魂』の見どころについてご紹介します。

江戸の町で繰り広げられる“コント”

まずは『銀魂』という作品についてご説明しましょう。舞台は江戸時代の日本ですが、作中では黒船の代わりに「天人(あまんと)」と呼ばれる宇宙人が襲来してきます。その結果、宇宙人と共存することになったカオスな江戸の街で、主人公の坂田銀時(さかたぎんとき)、通称「銀さん」は頼まれればどんな依頼でも引き受けるという「万事屋(よろずや)」を営んでいます。

そこへ、ひょんなことから万事屋へ加わった剣術道場の跡取り息子である志村新八(しむらしんぱち)と、宇宙屈指の実力を持つという天人「夜兎族(やとぞく)」の神楽(かぐら)とともに、数々のドタバタ劇が繰り広げられるのです。

この万事屋を中心に、「真選組」や「かぶき町」の住人など、個性豊かなキャラクターがたくさん登場します。そんな彼らが織りなすボケとツッコミの応酬は、何回読んでも笑いを誘われます。

危険なネタはあくまでオマケ!?

『銀魂』の特徴というと、大抵の人はパロディや下ネタといったパンチの強いネタを想像するのではないでしょうか。それも確かに作品の一部ではありますが、『銀魂』の本当の面白さはそこではありません。

『銀魂』は基本的には1話完結のコメディーなのですが、中には感動的な話が挿入されます。例えば、第7巻の「第五十六訓 冬に食べるアイスもなかなかオツなもんだ」では、元花火師のおじいさんが登場します。そのおじいさんは突飛な言動でいつも家族を困らせていました。万事屋の3人はおじいさんのお世話を頼まれますが、終始おじいさんに振り回されることとなります。

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空知英秋/著

話の前半はいつものドタバタ劇が展開されます。それが後半へ進むと、病床に伏せるおばあさんが登場し、真面目な雰囲気に切り替わります。話が進むにつれて明かされるおじいさんの本心を知って、思わず涙腺が緩みました。

この話ではパロディも下ネタもほとんど登場しません。そこにあるのは、心に深く染みる人情劇でした。そして、それこそが『銀魂』の本当の面白さなのです。

心に染みる名言

『銀魂』ではいくつもの長篇シリーズがあります。いつものギャグ展開とは打って変わって、シリアスな話になっています。この長篇の中で放たれる数々の名言は、普段とのギャップも相まってとてもカッコいいのです。

特に私が好きな長篇は、第29〜30巻の「地雷亜(じらいあ)篇」です。

「地雷亜篇」では、銀さんの仲間であるくノ一の月詠(つくよ)が、かつての師匠、地雷亜と再会します。しかし、地雷亜は忍に人並みの幸せは不要だと言って、月詠の幸せを奪おうとするのです。

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空知英秋/著
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空知英秋/著

やがて、地雷亜は月詠に手を掛けようとします。そこへ銀さんが助けに入ります。月詠は仲間を逃すために、一人で地雷亜に立ち向かおうとしていました。そんな彼女に銀さんはこう言います。

逃げろなんてもう言わせねーよ 一人で何もかも背負いこもうなんざ……水臭ェじゃねーか 涙たれ流して助けを乞えばいいんだ 鼻水たれ流してすがればいいんだ 泣きてェ時に泣く 笑いたい時に笑う それでいいんだよ (中略) それ以上何がいるってんだ 自分(てめー)を捨てて潔く奇麗に死んでくなんてことより 小汚くも自分(てめー)らしく生きてく事の方が よっぽど上等だ

引用元:『銀魂』

ぶっきらぼうな口調でありながら、「水臭ェじゃねーか」というところに月詠への想いが凝縮されているのが伝わります。

普段は喧嘩ばかりしているような間柄でも、仲間がピンチの時にはすかさず助けに行く。これこそが『銀魂』流の侍道なのです。

ギャグとシリアスの黄金比が素晴らしい

ワチャワチャとした楽しいコメディーの要素と、人情味溢れるシリアスの要素が絶妙に混ざり合って、『銀魂』のストーリーは構成されています。涙あり、笑いありのストーリーは、さながら人生の縮図のようです。

既に完結した『銀魂』ですが、ふと思い出した時に何度でも読み返しています。その度に新しい発見が得られて、何回読んでも飽きません。

これを読めば立派な侍になれる、かは分かりませんが、あなたにとっての侍道が見つかるかもしれませんよ。

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