『電波青年』は、現在ビッグコミックスペリオールで『フールナイト』を連載中の安田佳澄先生の作品で、電子版の単行本が全5巻発売されています。
ある秘密を抱え逃亡を続ける主人公フジオと彼のラジオのファンたちが紡ぐ物語。緊迫の中にどこか人の優しさを感じるストーリーは逃亡劇の結末へと加速していきます。
あらすじ
主人公フジオは売れないお笑い芸人。インターネットでラジオを配信しており彼のラジオには多くのファンがいましたが、ある日を境に更新が止まってしまいます。なぜなら、フジオはある秘密を抱え、身を潜め人を避けて生きていたからです。
ある日「人を笑わせる」ことをどうしても我慢できず、呼んでしまった風俗嬢・ヨーコと出会います。彼女は「フジオのラジオ」のリスナーで、その声から目の前の客がフジオ本人であることに気づいてしまいます。
一晩、かつてラジオをやっていた頃のように喋り倒したフジオ。その時間は失われてしまったかけがえのないものでした。しかしフジオの逃避行はまたここから再開されます。
ホテルを出て、別れようとする二人。するとヨーコは、彼が「何か」をして逃亡中であることを承知の上で、ある申し出をしました。
街の中で息を潜めて生きるフジオと、そのファンであるヨーコの奇妙な逃亡劇が始まります。
彼らを待ち受けるものは一体どういうものなのか、ラジオを通じた奇妙な絆がその真実を手繰り寄せて行きます。
優しさが物語の深みを増す
知り合いを頼りに逃亡の旅を続ける二人。身を寄せた先にはそれぞれに事情を抱えた住人たちが暮らしていました。
各々の抱える問題は複雑で、現在進行形で未解決のものばかりです。時には住人との衝突を経験しながらも、少しずつだが心を通わせあっていきます。
互いに過去を詮索はしません。しかしだからこそ、困った時はお互い様。決して大きな幸せがあるわけではありませんが、そこには確かに逃亡生活の中でフジオが失ってしまった「暮らし」がありました。
「逃げる」ことに必死で、常にビクビクしていたフジオの「素」が出せたのは優しさに触れたことが大きいでしょう。この「本来のフジオ」を知ってこそ登場人物達の物語をより深く理解できるようになります。
逃亡劇の中に確かに存在感を放つ人々の優しさが、なくてはならない要素なのです。
ラジオの持つ「連帯感」が存分に描かれる
ラジオの魅力の一つに「秘密を共有」しているかのような「連帯感」があります。全てのリスナーに向けて発信されるラジオですが、まるでパーソナリティのおしゃべりを自分だけが盗み聞きしているように感じるのです。
場所を越え、時を越え、でも確かにラジオを通してつながっている感覚。目には見えない声の先に、自分にとっての憧れがいます。
面白いから聞いていたラジオは段々と生活の一部になり、一つのラジオの「休止」や「再開」はリスナーにとって重要なニュースになります。描かれるリスナー達の素直な反応に「わかるなー」と共感しながら読み進めていきました。
そしてこのマンガの読後感も、読者をまるでラジオのように惹きつけます。「〇〇と言います。毎週読んでます。」「続きは、他の話はどこで読めますか。」「応援してます。」そんなことを作者の安田先生に伝えたくなりました。
さいごに
『電波青年』はWEB上で発表されており、紙版のコミックスは出版されていません。
電子コミック配信サービスの他、作者の安田先生のnoteからも購入して読むことができます!
そちらからもぜひチェックしてみてください!
電波青年第1話 前編|ヤスダ佳澄 #note https://t.co/RsqPsR2XiS
一気に全部アップしてやろうと思いましたが、思ったより手間がかかるのでちまちま上げていきます。
毎日更新の予定。#電波青年 pic.twitter.com/HVJUyE79Zt— ヤスダ佳澄 / フールナイト (@calcium0550) May 4, 2020