自分の一番大切な人が手の届かないところに行ってしまったら。そんなことを考えてしまう時があります。悲しみに沈むのか、自暴自棄になるのか。どうなるか考えつくのはこの程度でしょうか。『青野くんに触りたいから死にたい』では、きっとみなさんが持たない狂気を1人の少女に見ることになるでしょう。
あらすじ
図書委員の「刈谷優里」は本を運んでいる途中に男子とぶつかってしまいます。その男の子は優しく本を運ぶのを手伝ってくれるって。もしかして私のこと…好きなの!?
気になって仕方がない優里ちゃんはその男子に告白し、なんとお付き合いを始めました!嬉しくて、楽しい日々。付き合って2週間経った日、先生は「青野龍平」くんが交通事故でなくなったと話します。青野くんは優里ちゃんと付き合って2週間で死んでしまいました。
青野くんがいなくなってどうすればいいのか。優里ちゃんの答えは簡単でした。死のう。そう思い手首をカッターで裂き始めた瞬間、青野くんが部屋に飛び込んできてくれました!幽霊になった青野くんとずっとずっと一緒にいる。そばにいられれば他にはなにもいらないんだ。
シュールギャグとそれを上回る鳥肌
この作者さんのセンスなんでしょうか。すごいシュールギャグをキャラにさせるんですが、その表情がいいんです。
この青野くんの表情なんて言えばいいんでしょう!?そりゃ優里ちゃんも「え……?」ですわ。このシュールギャグが魅力の一つでもあります。でも、それを上回る程の身の毛がよだつ恐怖があります。このマンガを読んでいて一番惹きつけられたのはそこでした。
この作品、私個人としては映像化をしてほしくないと思います。それはこの作品の恐怖が、止まった絵だからこそ表現できていると感じるからです。幽霊という非日常が日常にあることを登場人物たちは受け入れていきます。受け入れる中で彼らと共存できるのではとも考えるのですが、突然不意に表れる彼らの非現実的側面によってやはり彼らは生きている私たちとは違う存在なのだと思い知らされるのです。この日常と非日常の一瞬の落差を作り出せるのはマンガであると私は思うのです。
逆にこれを表現しきって映像化できるのであれば是非見たいとも思います!
恐ろしいほどの純愛
この作品のもう一つの恐ろしいところが優里ちゃんの狂気じみた純愛です。心が病んでしまった人なのでしょうか。青野くんのために、この愛のために、彼女は自分の身を切り捨てながら歩いていきます。青野くんと一緒に歩むために。私は彼女のこうした力を尊敬します。恐怖を抱かず、自分の大切なもののために他を顧みず突き進む力。
美しくも脆いこの純愛ストーリーを是非皆さんに見ていただきたい!