『音楽 完全版』は大橋裕之先生による自費出版マンガ「音楽」を始めとした短編を4作収録した単行本です。2020年に表題作「音楽」がアニメ映画化されたことで原作が話題となり、これが出版された形ともなりました。
不良高校生・研二たちが音楽と出会いその楽しさに気付く
本日アニメーション映画『音楽』公開されます。よろしくお願いいたします!pic.twitter.com/q48HWBj14i— 大橋裕之 (@osirioisosiru) January 11, 2020
表題作である「音楽」はの主人公は田舎の高校生・研二。彼は丸坊主で制服を着崩し、ゲーセンでの暇潰しや喧嘩に明け暮れるどこにでもいるような不良高校生です。
いつも友人の太田と朝倉とつるみながら学生生活を過ごしていた彼らに、ある日転機が訪れます。それは研二の特に意味もない思い付きだった「バンド、やらねえか?」の一言でした。
根拠も理由もない、気まぐれな研二の思い付き。しかしその一言をきっかけに楽器を手に取り、3人はバンドを始めることとなります。
全員楽器は未経験、さらに研二が用意したのはベースが2本といくつか部品が足りないドラムセットのみ。それでも3人揃ってせーの、で音を鳴らした瞬間の衝撃。それは彼らにとって、わくわくするような未知の体験でした。
『大橋裕之のうごくラインスタンプ』ができました。YAW◯RAちゃんはNGくらいました。ぜひ!https://t.co/UOC9tTYK0p pic.twitter.com/vnGK4siSIs— 大橋裕之 (@osirioisosiru) December 23, 2019
音楽の魅力に憑りつかれた3人は自分たちのバンドを「古武術」と命名し、なんと人生で初めてのライブに出演することになります。
応援してくれる幼馴染のスケバン・亜矢。音楽がきっかけで初めて会話を交わした同級生・森田。様々な人々と関わりながら音楽活動を続ける3人ですが、いよいよライブを3日後に控えたある日、なんと言い出しっぺの研二が突然「バンド、飽きた」と言い始めます。一体バンド「古武術」はどうなるのか?ぜひ彼らのバンド青春劇の結末を、皆さんの目で確かめて頂ければと思います。
今作がこれほどまでに大勢を魅了する理由とは?
大橋裕之先生の自費出版であり、雑誌の掲載歴もないこの「音楽」。ですがこの作品は数々のクリエイターや、特に一部のアーティストからは非常に熱い支持を受け続けている物語です。大勢の心を掴むその魅力はやはりなんといっても研二たちの、音楽を始めた瞬間の感動が淡々としたタッチの中にも鮮やかに描かれている点でしょう。
今私たちを魅了する多くのバンドマンやアーティスト。当然ですが彼らも、初めから現在のように素晴らしい曲を次々と生み出していたわけではありません。
これまで脈々と受け継がれてきた名曲に感動を受け、自分も音楽を初めたい、と高鳴る鼓動を抱えながら楽器に手を伸ばした。そんな音楽と出会ったばかりの頃が、音楽に感動し強く心を揺さぶられた頃が、必ずあったはずなのです。
右も左もわからない、楽器の名前すらもわからない。目の前にある音の出る楽器を鳴らし、その音が自分の手によって出たことに言いようのない感動を覚える。そのような音楽の、ともすれば生々しいぐらいの原体験がこの作品では描かれているのです。
そんな今作に感銘を受け、制作が決定したアニメ映画「音楽」。2020年に公開された本作の製作期間はなんと約7年、監督1人で手掛けた作画枚数は約4万枚にも渡りました。
派手さこそないものの、原作の良さを存分に反映したこの映画は
と数々の栄誉を獲得。多くの音楽を愛する人々を中心に、小規模作品のアニメ映画としては異例のヒットを残す結果ともなっています。
映画で「音楽」を知った人も、ぜひ原作を読んでみて!
アニメーション映画『音楽』の原作が収録されてました『音楽と漫画』が、株式会社カンゼンから『音楽 完全版』として11月下旬に発売されます。よろしくお願いします!https://t.co/Duoynguhdg pic.twitter.com/X6oNUN4QNO— 大橋裕之 (@osirioisosiru) October 19, 2019
この『音楽 完全版』に収録されているのはそんな「音楽」と、「漫画」「ラーメン」「山」の4作品。どれも初期の大橋裕之先生の作品を語る上では欠かせないものとなっています。
映画から興味を持った方も原作を読んで、シュール且つ独特な大橋裕之先生の世界観をぜひ楽しんで頂ければ幸いです。
本作の紹介はこちらでも!