龍と苺

柳本光晴 / 著

『龍と苺』将棋歴は2日!天才少女が盤上でも盤外でも繰り広げる命がけのバトル!

龍と苺』は破天荒な女子中学生・藍田苺(いちご)が天才的な将棋の才能を発揮し、盤上盤外で命がけのケンカをしまくる物語で、『響〜小説家になる方法〜』で第64回小学館漫画賞を受賞した柳本光晴先生の最新作です。

一手ごとに強くなる苺が、女子供と見下してくる大人たちを文字通りぶっ飛ばしていく様が痛快で気持ちのいい作品です。

命がけの勝負

苺と将棋との出会いは、中学校のスクールカウンセラーをやっている老教師・宮村の指導でした。いじめをしていたクラスメイトをいきなり椅子でぶん殴って呼び出された苺に、宮村は「なにかしてたほうが話しやすいから」と将棋を教え始めます。

せっかくやるなら「命」を賭けようと言って始めた対戦で、苺は初めて指す将棋のルールをあっという間に覚え、宮村を追い詰めていきます。

一手ごとに強くなる

苺の才能に気づいた宮村は翌日、アマチュアの将棋大会に苺を連れて行きます。苺は二十年将棋を指し続けているという大人たちを才能でねじ伏せていきますが、負けた大人は素直に負けを認めようとしません。

舐めた言動にキレまくり実力で黙らせていく苺がかっこよくて、自分にはマネできないからこそ、とても惹きつけられます!

苺と響の違い

芥川賞と直木賞を同時受賞した『響〜小説家になる方法〜』の主人公・響と、将棋を初めてすぐにやり方をマスターして大会で優勝してしまう苺。どちらも圧倒的に天才で、自分の信念を曲げないタイプです。ただ、響は小説が好きでもともと大量に読んでいる子でした。小説を書く友達への気遣いや、小説という表現方法に対する愛情のある子だったんですね。

対する苺は、始めたばかりの将棋に愛情があるわけではありません。大事な駒を相手の顔にぶん投げるような態度を取ることもあります。しかし、将棋で生きる人たちはみな、将棋を愛する人たちです。現在、苺にとって誰とでも平等に戦えるケンカの道具のように思っている将棋はこれから、苺にとってどんな意味をもつものに変わっていくのでしょうか。

女性の棋士は一人もいない

本作で語られている通り、日本にはプロの女性棋士は一人もいません。棋士になるには「奨励会」という育成機関で四段になる必要がありますが、現在まで四段として棋士になった女性は一人もいません。

「女流棋士」と呼ばれる棋士がいますが、こちらは「女性棋士」とは違い、「研修会」という奨励会とは別の育成機関に入り、一定の成績を修めることが必要になってきます。女性棋士がいない理由として、男女の脳の違いや生理による体調の不良などが言われますが、そもそもの女性の競技人口が少ないというのもあります。

本作では苺と同じく中学生で、プロ棋士を目指す女の子・大鷹月子が登場します。大鷹名人の娘でありながら、奨励会入りを親から許されていない月子は、プロ棋士編入試験を受けるためにアマチュア大会に参加しまくっています。その決勝で、月子は将棋を初めて2日の苺と対戦することに…!

女性の身で将棋への興味が薄いまま将棋の世界に触れた苺が、将棋界にどんな影響を与えていくのか、今後の展開も見逃せません!

新たな天才現る!

龍と苺(1) (少年サンデーコミックス)
柳本光晴/著