2020年にアルライター・星月まふゆを支えてくれた10本のマンガたち。変化の激しい1年の中で僕を癒やし、時には奮い立たせてくれました。来年も共に過ごしたいという願い、そして感謝の意を込めて、ご紹介させていただきたいと思います。
今回のテーマは「#読んで良かったマンガ10本 2020」です。生まれてこの方、出会い別れ出会ってきたマンガの数々から選んだこの10本、選り抜かれた作品はそのまま選者のクセ、個性、視線…色々なものを映す鏡になるのでしょう。
目次
- 『ささやくように恋を唄う』
- 『熱帯魚は雪に焦がれる』
- 『先パイがお呼びです!』
- 『エンとゆかり』
- 『ブルーピリオド』
- 『薬屋のひとりごと』
- 『いのち短し善せよ乙女』
- 『メイドさんは食べるだけ』
- 『星屑テレパス』
- 『トニカクカワイイ』
- 来年の新しい出会いに思いを馳せて
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『ささやくように恋を唄う』
暖かい春の日差しを受けて迎えた高校の入学式。ステージの上で輝く朝凪依と、新生活に心ときめかせる木野ひまりが運命の出会いを果たす、ガールミーツガールです。
わたし 一目ボレしました
テーマは一目惚れ。脇目も振らず音楽一筋だった女の子が、初めて出会った人に一目惚れ宣言をされてしまいます。しかも相手は女の子。恋なんて初めてでよくわからない、そんな彼女にわかることはきっと、ただひとつ。
あの子がかわいすぎる。
会いたい、毎日でも顔が見たい、早く放課後になってほしい、君が屋上に来る足音が待ち遠しい。そんな女の子たちのピュアな気持ちが、これでもかと凝縮された1冊です。
『熱帯魚は雪に焦がれる』
都会から引っ越してきた天野小夏は、水槽で満たされた教室の、どこを見渡しても海の生き物で埋め尽くされた世界の中で、透明感のある女の子・帆波小雪と出会いました。
2人は、孤独、という状況の元で惹かれ合います。
もとよりひとりぼっち同士だったせいで、最初はお互い上手く感情を伝えきれない状況が続きます。「先輩 なんかあった?」と小夏が聞いても「…何もないよ」と応える小雪。僕はお互いの優しさを知っているがゆえにもどかしさを感じてしまいました。
しかしそれは息苦しいものではなく、ずっと見守りたくなる不思議な距離感。
友達として未熟な2人ですが、お互いを思いやるがゆえにドギマギしたやりとりが、何とも微笑ましい…!
『先パイがお呼びです!』
空腹で行き倒れていた漆島きなこを助けた相馬より子。よくよく話を聞くと、この先輩はすごく危なっかしい…!放っておけなくなったより子は、以降、何かと先輩のかわいいトラブルに巻き込まれることになりました。
独特な出会いからも伝わってくるように、本作は絶妙な空気感が魅力の作品です。
例えば、駆けつけたより子に対して「挟まっているだけだよ」と声を掛けるきなこ。壁に挟まっている理由は誰にもわかりません。しかし、呼び出されたことに対して不思議と悪い気がしていないより子の心情だけは伝わってきます。
なぜこのように絶妙な空気感が生まれるのでしょうか。その答えはきっとシンプルな一言に尽きます。
先パイが、とってもかわいいからです。
『エンとゆかり』
ウェイトレスのゆかりと冒険者のエンはそれまで何の接点もなく、まさに縁も所縁もない者同士でした。出会いはただの人助け。
しかしそれはきっかけでもあって、ゆかりはエンとの出会いに運命を感じ、自分の世界を広げる努力をするようになりました。
その気持ちは偶然では片付けられず、やがて縁に転じるのでしょう。
偶然から生まれ、やがて縁へと繋がる物語。あのとき生まれたエンとゆかりが生み出した縁の続きがもっと読みたい、そう思わせる作品です。
『ブルーピリオド』
定期テストも人間関係もゲームをクリアするように順調な人生を歩んでいた矢口八虎が、ある日1枚の絵に衝撃を受け、美大受験という無謀な目標に立ち向かう物語です。
成績優秀、人間関係良好。このまま努力を怠らなければ有名大学だって合格圏内。そんな八虎が人生で初めて、美術、という不確実で不鮮明な世界に目が離せなくなるのです。
「レールを外れた」と言われてもおかしくないくらいの決断でした。
いままで人より少し上に敷かれたレールを歩いていた彼が、未知の世界に踏み込む。それがどれだけ勇気のあることか、それがどれだけワクワクすることか。
そして、受験までに何度唇を噛む思いをするのか。
好きなことに挑戦する苦しみを知った上で、なぜ八虎は自ら楽でない道を選んだのでしょうか。そして、選んだ先の道でしか感じ取れない本当の気持ちの正体とは。
消えかけた僕の心の灯が、再び息を吹き返したかのような思いに胸が焦がれました。
『薬屋のひとりごと』
これ 毒です
妃専属の毒見役を通じて、自身が務める後宮内で起こる数々の事件を解決する主人公の猫猫。
彼女から繰り出された名言がこれほどまでに頭に残るのは、作品全体を通して味わえる爽快感が最大の理由でしょう。私たちの住む世界とはかけ離れた場所で起こった事件を、私たちの胸に落ちる方法で解決する。
猫猫の住む世界に降り立ち、鮮やかな推理を目の当たりにしているかのような爽快な読後感です。
快楽という毒を口にしたかのような衝撃が、本作を通じて味わえます。
『いのち短し善せよ乙女』
死後の世界で受け取った「うちでもおおづち」から出てきたアイテムで、人のためになることをし続ければ現世に留まり続けられる、という世界観のコメディ作品です。
終始コメディ調が貫かれているために死後というテーマに重たい印象を感じることはありません。それどころか「人のためになる」という条件を達成するための、わかめ、ドラゴンの血、カエルといった、そんなものでどうやって人の役に立つの…と言わんばかりのアイテムは、読者を軽快なステップで巻末へと導いてくれます。
『メイドさんは食べるだけ』
英国から日本にやってきた生粋のメイドさん・スズメが、日本を満喫しながら食べ歩く。ただそれだけを楽しむ作品です。
メイド服を着た女の子が、たこ焼きを、お団子を、コンビニおにぎりを…食べる、食べる、食べる!
バームクーヘンを、たいやきを…ってあれ?
頭から食べていいんでしょうか?
ときには、たいやきを食べる作法に悩むことも。
日本に暮らしているとあまり気にならないところまで注目されるのは、外国の生活が長いからなのか、スズメの生真面目さなのか。そんなことを考えながら温かい目で読み進めてしまう作品です!
『星屑テレパス』
人見知りに悩む女の子・海果が、自分の性格と向き合いながら夢に挑戦し続ける物語です。
人見知りの改善方法は数あれど、まさか宇宙にいってコミュニケーションが通じる相手を探すキャラクターが現れるとは思いませんでした。
そして宇宙に思いを馳せていた海果に、ユウとの出会いが訪れます。
海果と対極に、ユウは誰とでも打ち解けられる女の子。海果としては絶対に仲良くなりたい、でも話しかけにいけない…! わかるぞ。僕たち人見知りはキラキラした人には話しかけにいけないんだ!
それでも勇気を出してユウに告げられる海果の思いとは、そして彼女たちが目指す夢とは…。人見知り代表の彼女を思わず応援したくなる作品です!
『トニカクカワイイ』
結婚するのか、しないのか、それは当人たちの判断に委ねられること。しかし本作は主人公・ナサが、司に運命を感じ、結婚に至ったその先の物語です。
とにかくかわいい。
本作を表す言葉は、それだけで十分なのです。
お嫁さんと初めて手を繋いだときの緊張した顔がかわいい、元同級生の女の子を褒めすぎた後にヤキモチを焼くお嫁さんがかわいい、宇宙一かわいいって褒められた時の、お嫁さんがとっってもかわいい!!
とにかくかわいい。
やはり、それに尽きるのです。
恋人になるまに盛り上がりがある王道な恋愛マンガ界隈において、結婚していることが前提となる本作。これは革命です。僕たちも次世代のマンガに追いつくために、今すぐ高速で書店に向かいましょう!!
来年の新しい出会いに思いを馳せて
今年はマンガライターになり、数多くの新しいマンガに出会えた年でした。
来年は元旦からマンガライターということで、マンガとのさらなる出会いに思いを馳せています。
そしてアルライターとして、アルユーザーのみなさんとの新しい出会いをお手伝いし続けたいと考えておりますので、なにとぞよろしくお願いいたします!
それでは僕は今年中に未読マンガをゼロにするため、購入済み未読の117冊と向き合ってきます。
よいお年を!!!