肉食獣と草食獣が共存する世界を舞台に、擬人化された動物たちの群像劇を描き大反響を呼んだ『BEASTARS』。作者の板垣巴留先生が最新作『ボタボタ』で描くのは動物から一変して人間の物語でした。
主人公は、極度の潔癖症と特異体質を持つ女性・氷刈真子。彼女の特異体質や愛を求めて数々の男性を渡り歩く姿から感じたのは2つのメッセージでした。
汚いものに触れると...
真子の特異体質とは、汚いものに触れると鼻血が出るというもの。ゴミはもちろん、たくさんの手垢が付いている紙幣も汚いものにあたるため、鼻血は彼女にとって日常茶飯事。そして、汚さの濃度によって出血量も変容します。
そんな真子は普段食品容器の工場で働いているのですが、工場内ではどんな男性にも体を許してくれる女性だと噂になっています。
同僚の木下は噂を確かめるために真子に近付きそのままホテルへと直行するのですが、真子はいつもの特異体質によって大量の鼻血を出してしまいます。
どんな男性にも体を許すという真子の噂の真相...。それは、ただの快楽目的ではなく特異体質によって人並みの触れ合いができない中でも全身全霊で人を愛してみたいというものでした。
真子の特異体質と必死に愛を求める姿にたじろいだ木下はホテルを飛び出すのですが、そんな彼を追いかける真子の姿は人間ではなく、欲望のままに走る動物...霊長類ヒト科そのもの。
『ボタボタ』は、そんな真子が自分の特異体質を食い止めるほどの愛を教えてくれる男性を探す様子を描いた愛と欲望の物語です。
家族の呪縛と人間の理性
本作で一番注目したいのは、汚いものに触れると鼻血が出るという真子の特異体質から感じる2つのメッセージです。まず、この特異体質の背景にあるのは幼き日の母との思い出です。
父の不倫が発覚して以来極度の潔癖症となった真子の母親。そして、この一件から真子の家では「汚い」ことは重罪を意味するものになり、真子の特異体質も発症するようになったのです。
愛する母の言葉にまるで「呪い」のように囚われ続け、まともに人と触れ合うことすらできなくなってしまった真子。この特異体質からは決して綺麗事だけではない「家族」の呪縛という薄暗い一面を感じます。
そして、真子と鼻血の関係性。自分の鼻血を食い止めるほどの愛を持つ男性を求めて彷徨った結果、触れ合っても鼻血が出ない男性と出会います。ですが、鼻血が出ない自分に安堵するどころか真子は恐怖するのです。
人と触れ合うという「汚い」行為をしたにも関わらず鼻血が出ない自分...。この真子の戸惑いからは、愛や自分の中に沸き起こる性的な欲求に対して「汚い」と感じていたのは真子自身だったということが分かります。
人間はある程度自分の欲望や本能を抑えて理性を持って生きています。その理性を越えた行動に対しては「汚い」という感情にも似た嫌悪感を抱く方も多いのではないでしょうか。真子の場合は、幼少期に体験した家庭環境が影響したのか、その理性が一般的な人間よりも厳しく設定されているように思います。真子のような特異体質は持っていないにしても、彼女のように自分の欲求を過度に抑えて自傷にも近い自己犠牲に走ってしまうことは現代社会を生きる私たちとっても実際に起こりうることなのかもしれません。
辿り着いた、運命の人
真子の鼻血がとにかく豪快で、その血飛沫が美しいとさえ感じるところも『ボタボタ』の不思議な魅力。真子が様々な男性との出会いを通して辿り着いた、運命の人。そして本当の愛...。その全容はぜひ本作をご覧ください。
自分を愛してる?
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