2020年、コロナ禍により生活様式が一変した1年となりました。
その中で筆者に大きな影響を与えたのは「舞台やアイドルの握手会、音楽ライブイベント開催の中止」。
推しの俳優やアイドル、バンドの現場に行きたいけど行けない…!という強い想いが今回の選出に大きな影響を与えていると言っても過言ではありません!
生きがいである「推し事」が減り、改めてエンタメやコンテンツの存在意義を考える1年でもありました。
また一方で外に意識を向ける時間が減った分、自分自身に意識を向けて内観したり、先の見えない漠然とした不安からか、歴史を題材にした作品を読み耽って過去に想いを馳せ「今を生きる意味」という事について深く考えるが多かった様に思えます。
そんな私の2020年を表す10本をご紹介させて頂きます!
『推しが武道館いってくれたら死ぬ』
岡山のローカル地下アイドル「ChamJam」の人気最下位メンバー・舞菜を推す主人公・えりぴよと同じアイドルのメンバーを推す仲間達を中心としたギャグマンガです。
えりぴよからの応援を内心喜んでいるのに舞菜の内気な性格が災いし想いがすれ違ってしまう二人の関係が尊いんです!
私自身も推しているアイドルがいるので、ライブや握手会で熱い想いを伝えるえりぴよの熱狂ぶりに親近感を抱いて読んでいます。今年は推しが出演する舞台、握手会、ライブが中止になってしまい直接会える機会を失った分、この作品を読んで今までの推しとの思い出を振り返ったり、また会える様になったらえりぴよ位パワフルに応援したい!と推しへの想いを再確認したり出来る作品です。
『エコール・ド・プラトーン』
関東大震災を経験した青年・川口松太郎が大阪で雑誌「苦楽」を創刊するにあたり様々な文人達と交流する文士譚。
この作品では現代演劇の祖と呼ばれる小山内薫が新劇を立ち上げた理由を松太郎が知るエピソードが登場します。その中で
三階にいる 若い諸君らよ 皆さんの中にこそ 私どもの仕事の理解者がおられると 信じています 私どもが自由劇場を興した理由 それは 生きたいからであります
という台詞がとても印象的でした。今年は多くの舞台やライブが中止になったのをきっかけに、改めて「私は多くのエンタメに触れる事で精神的に支えられて日々を生きていたんだな」と実感していたのでこの言葉が深く沁みたんだと思います。
関東大震災で東京の出版社や本屋が大打撃を受けたという背景がどこか現代の日本を彷彿とさせます。
『あさひなぐ』
女子高校生の薙刀部を題材にし、初心者の主人公・東島旭(とうじまあさひ)が奮闘する姿を描いた青春マンガです。
日々自身の実力に悩みながらも努力を続けて懸命に薙刀を持って戦う旭達の姿を追っていて、いつも応援していたと同時に励まされて来ました。
また新型コロナ禍の日々を舞台に100人以上のマンガ家が描き下ろしマンガを日替わりでリレー連載する企画「MANGA Day to Day」では、こざき亜依先生が新型コロナにより薙刀のインターハイがなくなった2020年現在の女子高生達の姿を『シュレディンガーの高校生』という作品で公開し、本当はあったかもしれない「もうひとつのあさひなぐ」を見せてくれました。(こちらは最終巻34巻にも収録されています)
是非両方読みインターハイに向け日々頑張って来た高校生達の想いを感じて欲しいです。
『ナナマル サンバツ』
高校生達の「競技クイズ」を題材にした『ナナマル サンバツ』は今年2020年、10年間の連載をもって完結しました。
アニメ化、舞台化もされており「競技クイズ」の魅力を最大限に描き切った超大作です!
近年テレビでクイズ番組は多数放送されているので、自粛期間中によく視聴してクイズにハマり興味を持ち読み出した作品なのですが、クイズの問題文の読み方や解き方等に想像以上の奥深さがあると教えられました。
作者の杉基イクラ(すぎもといくら)先生とクイズを題材とするWEBメディア「QuizKnock」CEOの伊沢拓司(いざわたくし)さんの最終回を記念した対談も必見です!
お家時間に皆でクイズで盛り上がるのも楽しいかもしれませんね。
『BLUE GIANT SUPREME』
石塚真一先生の作品『BLUE GIANT 』の続編にあたり、主人公・宮本大(みやもとだい)が世界一のジャズプレイヤーになる事を夢見て日本を飛び出しドイツでバンドを結成しサックスを吹き続けながら成長する姿を描きます。
慣れない土地で評価されない場面でも挫折せず、腐りもせずに「自分は本当に世界一のジャズプレイヤーになる」と信じ続ける姿を見ていると、大と同じ仙台の人間というのも相俟って「今も同郷の青年が遠い土地で頑張ってるんだな」と涙ぐんでしまいます。
今年は仙台で有名な音楽フェスである「定禅寺ジャズフェスティバル」は来年2021年の延期が決定しました。
ライブやフェスで直接ジャズを味わえない今、この作品を開くと大の熱く激しいサックスの演奏が聴こえてくる様な気分に浸れるんです。
『7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT』
週刊スピリッツで連載された『7人のシェイクスピア』の続編にあたり、16世紀のロンドンでプロの戯曲家としての才能を認められ始めたウィリアム・シェイクスピアを主人公にした作品です。
片田舎で生まれ育ち家柄に恵まれず無学の青年・シェイクスピアがどの様な経緯で歴史的偉業を成し遂げられたのかという謎に迫る歴史マンガで、シェイクスピア以外にも戯曲の創作に携わる人々が居たという設定で物語は進みます。
作品に登場するシェイクスピアを始めとした創作の関係者は、宗教弾圧から身分を隠す聖職者や、異能の恐れられ一族に殺されそうになった少女等、生きている居場所が無い人であると同時に類稀なる才能を持ちえた人です。
「生きていていいのだ」と思える場所が無い彼らは、演劇を通じて才能を発揮する事で「生きていて良かった」と実感したのではないかと感じさせます。
現在本作はシェイクスピアが誰もが知っているあの名作「ロミオとジュリエット」を作り上げるという最高の盛り上がりを見せた所で連載休止となったので、今から再開が待ち遠しくてなりません!
『アマネ✝️ギムナジウム』
派遣OLを勤める傍ら人形作家を目指す女性・天音が、不思議な人形用粘土を譲り受けて作った動く7体の少年の人形との物語。
『アマネ✝️ギムナジウム』を読み進めていく内に「創作」という行為は、始めは遊びや手慰みであっても突き詰めれば自分自身の心と向き合い、奥底に閉ざしていた心の傷を癒す手段なのだと考えさせられました。
忙しい日常の間では中々自分の心を意識出来ずにいたので、この自粛期間という十分な時間があったからこそ自分と向き合ってしっかり読む事が出来た作品だと思います。
『憑依師』
今年は著名人の突然の訃報が多い年でもありました。多くの人々の「死」を目の当たりにし、ふと「今私が突然死んでも満足出来る生き方を送っているのかな」と思い読み返したのがこの作品でした。
悪行を犯した青年・クロカワが不慮の事故で死んだ後、死神に命じられ「憑依師」となり志半ばで死んだ人の魂を自分に憑依させ現生で願いを叶えるという話なのですが、読むと「まだ私はいつ死んでもいい位に満足する事を何にも出来てないし行動して来てない!」という気持ちになります。
静かで穏やかに「辛くても不器用ながらに生きてみようよ」と隣で寄り添ってくれる様な作風が心地良いです。
『大奥』
謎の疫病「赤面疱瘡」により混乱し右往左往する江戸時代の日本を、男子の減少により実は女性が将軍として取り仕切っていたという歴史SF作品なのですが、どこかコロナ禍の今の日本と重なって見えてきます。
作中で平賀源内達が赤面疱瘡の研究や人痘接種を試みるシーンにはどこかドキュメンタリーを観ている時の臨場感や緊張感を抱き思わず息を飲みます。
2021年冬発売の19巻で完結する事が決まっており、17年間の連載という一つの歴史の終焉を目の当たりにするのにも今から緊張してしまっています!
『ニュクスの角灯』
長崎を舞台にした物に持ち主の過去や未来が視える不思議な少女・美世が働き人と関わる事による成長と歴史を描いた物語です。
作品で美世の雇い主である百年(ももとし)の
悪い時代の後には 必ずいい時代が来る
という台詞が、コロナ禍で塞ぎ込んだ私の心に響きました。
どんな状況に居ても、努力次第で人の可能性は無限に広がる事を教えてくれる作品です。
美世の懸命な姿は、暗い気持ちに明かりを灯してくれます。また幕末から明治の歴史に興味がある方にオススメです!
いつかこの暗い世界を照らし、全ての戦いを終わらせにやってくる夜の女神・ニュクスが訪れる日を願ってやみません。
悲喜こもごもの1年でしたが
「令和」という時代が始まって間もない内に、コロナ禍で世界が一変してしまった2020年でした。
学校になかなか通う事が出来なかったり、仕事が変わったり今の自分自身の環境も一変したと思います。大変な事がしばらく続きますが、その生活の中でも心の支えになるマンガに出会って欲しいです。
その支えが今と未来の皆さんを作り上げてまた新しい時代を切り拓いていくと信じています。