今年始動したメディアミックスプロジェクト『GABULI(ガブリ)』。「暴れ暴く」をテーマに、漫画・MV・小説を舞台に物語を展開しています。
本プロジェクトを仕掛けるのはCreativeTeam No.965(クロコ)。今回は顔も名前も非公開という条件のもと、メンバーのお一人に話を伺いました。
目指すは次世代の王道バトルIP。黒子が仕掛けるメディアミックスプロジェクト
ーまずはCreativeTeam No.965について教えてください。
CreativeTeam No.965は、とあるエンタメ会社2社の若手クリエイターが本業の傍ら組成したチームです。965は「クロコ」と読み、ガブリと噛み付く「ワニ」と「黒子」という意味をかけています。
ーなるほど。黒子だから今回顔も名前も非公開、ということだったんですね。
そうなんです。黒子として活動しているのは、そもそもプロジェクトがスタートしたきっかけでもあるのですが、企画を走らせてから、光栄にも素晴らしい次世代クリエイターの方々と巡り会えました。
企業名で安心感を売っていくのではなく、純粋にそれぞれの方がつくるクリエイティブ一点突破で勝負をしたかった、という背景があります。なので、今はあえて姿を眩ませています。
まだ名も無い僕らは前に出る必要はなく、黒子となって、キャラクターやストーリーだけで純粋に戦ってみたいんです。
ークリエイティブに注目してもらうための戦略というわけですね。
また、漫画業界はすでにレッドオーシャンなので、最初から漫画・MV・小説という横断して語られる物語で面白さを加えて奇をてらった勝負をしようという発想もあります。
ープロジェクトが始動したのは2021年の夏ですよね。
はい。まずは雑誌媒体やアプリには載せない「野良漫画」とブレイクアーティストたちとの「コラボレーションMV」を制作していきます。その後、物語とキャラクターがどれくらいファンの方々に受け入れていただけたかで次の展開を考えていく予定です。
ー野良漫画というのは面白い表現ですね。
次世代のヒット作は辺境や若者など、いかがわしい、野良的なものから生まれていくと僕らは信じているからです。
もちろん、最初から持ち込みなどで雑誌掲載を目指すという選択肢もありました。けれど、自分たちのキャラクターやストーリーを客観視したところ、王道の選択肢から外れてみたいなと思えたんです。
だから最初は野良漫画としてやっていこうということで、Twitter上で読める本格少年漫画としてスタートすることにしました。まずは、今の作品を見つけてくださったファンの方々と一緒にプロジェクトを成長させていきたいなと思っています。
常識を疑え、世界の謎を解き明かせ。はぐれ者たちの物語
ーGABULIのテーマ「暴れ暴く」について詳しく教えてください。
物語の舞台は人々がIDで管理された世界で、主人公たちは“No-IDs(ノイズ)”と呼ばれる、IDを持たない少年たちです。彼らは世間の理から外れたはぐれ者として世間から蔑まれ、虐げられています。しかし、それ故に自由で強く生きる者たちでもあります。
彼らは大人たちが作ったルールに反旗を翻し、何も持たない彼らが、世界の大きな謎を颯爽と暴れ暴いていきます。これは少年たちによる革命譚、大人や権威に対するアンチテーゼの物語なんです。
ーストーリーはどのようにして考えていったのでしょうか?
物語のタネは地球史や人類史を疑うところから始まっています。そこから「遺伝」と「仮面」というキーワードを設定しています。
遺伝は、今まで出した作品をよくよく見ていただくと、このモチーフが使われているカットが存在します。まだあまり登場していませんが、今後物語へ密接に絡んできます。
ー作品内にキーワードが散りばめられているんですね。
それに加え、メディア間を遺伝するという意味も含んでいます。漫画とMVが相互に遺伝し合い関わり合う、漫画⇆MVの遺伝型ストーリーとなっています。
MVではキャラクターのトラウマ的過去が描かれ、漫画と併せて見ることでより深く物語が楽しめるようになっています。
アーティストの方々のチャンネルを僕らのキャラクターが渡り歩くことで、GABULIの世界観が遺伝し、だんだんと物語が完成していくようにしています。
ーもう一つのキーワード「仮面」についても教えてください。
主人公たちがいま被っている仮面だけでなく、今後ほかの意味を持った仮面が登場しますやはり少年漫画なので、バトルアクションの要素は入れたいなと思っています。
また、MVは大人によって抑圧された子供たちが自分自身を殺して自分を偽る、別の人間の仮面を被る物語なので、素顔を隠すという意味も含まれています。さらに姿を隠してメディア活動をしている僕らNo.965のことも指しています。
漫画・MV・小説でかつてない物語体験を生み出す
ーGABULIのキービジュアルはキャラクターの目がすごく挑戦的で、まさにはぐれ者というイメージがぴったりですね。
キャラクター原案を担当してくださっているのはみっつばーさんで『転生したらスライムだった件』シリーズでキャラクター原案を担当されている方です。一番目つきの悪い、バッドボーイズ的なキャラクターが描ける人ということで、ラブコールをさせていただきました。
右からユズ、タフ、リウ、そして今後登場するキーキャラクター
ー漫画はどのように制作しているんですか?
まずはチームで「字コンテ」と呼んでいる、ストーリー展開を書いたものを構成作家の田岡宗晃さんにお渡しします。そこから田岡さんがネームを切り、それを元に高橋ヒデキさんが作画してくださいます。
「リウは頭脳戦タイプなので、言葉選びが重要。田岡さんはそれが天才的に上手いんです。そして高橋さんの超作画。毎回僕らが感動しています。」
ーMVはAdoさんから始まり、錚々たる歌い手の方々が参加されていますね。
はぐれ者を表現するには、挑戦的な声を出せる方がいいなと思っていて。かつ、極端になりすぎないよう、女性の声で中和したいという観点で探していました。
そこで1年ほど前からAdoさんにラブコールをし、歌っていただきました。ドスの効いた声はもちろん、転調が効いていて表現の幅が広いのが魅力的で、ぴったりだなと。jon-YAKITORYさんからはじまり、今後も続々と実力のあるボカロPと歌い手の方々とご一緒するので、ぜひ楽しみにしていてください。
⚡️⚡️ 大きなお知らせ⚡️⚡️
新楽曲 × GABULI MV、次なるコラボレーションは!!
第4弾
柊マグネタイト × ウォルピスカーター@hiiragi_magne @wolpis_kater
第5弾
煮ル果実 × sekai@vinegar_vinegar @uoxvz
第6弾
Aqu3ra × めありー@AQU3RA_music @memememememe28
です、お楽しみに!#GABULI pic.twitter.com/h95FNpWZbJ— プロジェクト『GABULI』(ガブリ) (@no965_croco) December 8, 2021
ちなみに、MVは1曲が1分半という短いものなので、何回観てもお客さんが楽しめるものにしています。実は「アンチシステム’s」にもとある仕掛けがあるんですけど、まだ誰にも気付かれなくて(笑)。
ー仕掛けがあると分かると、それを発見する楽しみが生まれますね。
YouTubeアニメの楽しみ方として一時停止して観るというのがあって、そこで楽しんでいただきたいなと考え、遊びとして取り入れてみました。ぜひ探し当てて欲しいなと思っています。
ここにもとある仕掛けが…。
ー漫画とMVは相互に遺伝し合い関わり合うストーリーだということですが、小説はどういった位置付けなんでしょうか?
小説は、漫画とは異なる、もう一つの物語という位置付けで展開しています。タイトルにある「白鴉(シロガラス)」、つまり白い羽のカラスは、「ありえないもの」、「2つの人格」という意味を内包しています。
主人公はミリアムというデザイナーベビーなのですが、とあるタイミングで漫画のストーリーと合流するかも? と考えています。また、小説でも世界の大きな秘密を暴く瞬間にバチっとアハ体験があるような設計にしています。
ミリアム
小説で描きたいのは死に様です。僕がすごく好きな作品で『金色のガッシュ!!』というのがあって。100人の魔物がいて、1人しか生き残らない。けれど、一つひとつの別れがパートナーとの絆や未来への意思と共に描かれている。そこがすごい魅力的だなと思っていて。
「白鴉」では「あなたは死に様にどんな言葉を遺せますか?」というのを一つ裏テーマとして描いていきたいなと思っています。
ー「3分で読める」というコンセプトなのと、挿絵もふんだんに盛り込まれているので、普段あまり小説を読まない方でもとっつきやすいなと感じました。
3分小説にしたのは、もともと小説に対して恐怖心があったからです。今の若い世代がどうやったら小説という文字のコンテンツを読んでくれるか考えた時にとにかく短く凝縮させること、毎回衝撃のある展開にすること、そして、挿絵を入れることで舞台設定やキャラクターを補完し、より世界観をわかりやすくしています。
はぐれ者たちの挑戦物語
ー最後に、この物語を通して伝えたいメッセージを教えてください。
まずは何より物語とキャラクターが主役です、リウたちに活躍してほしい。その上で、ひっそりと忍ばせる裏メッセージとしては、世界のルールに囚われるな、ということですね。
歴史や常識など知らないうちに刷り込まれているものを一回疑ってみて欲しい。それをきっかけとして行動に移せば、きっと現実は大きく変えられるはずです。
僕らも、ネームバリューがないとヒット作は生めないという常識を疑ったことをきっかけにこのプロジェクトをスタートしました。正直、僕らも主人公たちと同じく、会社組織のはぐれ者です。だからこそ、自由に挑戦できる。
その挑戦の過程で、読者の皆さんとコミュニケーションをとりながらGABULIを育てていけたらと思っているので、ぜひストーリーに隠された様々な謎を解き明かしながら楽しんでいただけたら嬉しいです。