ミステリーマンガってトリックが分かってしまうと、もう読み返さないなぁ、なんてことはないでしょうか。本当におもしろいミステリーというのは、何度読み返しても魅力的なのです!
今回はそんな「いつ読み返してもおもしろい」極上のミステリーをご紹介します!
名言と知識の宝庫『ミステリと言う勿れ』
『BASARA』や『7SEEDS』の田村由美先生による人間ドラマ。これまでの熱量高い主人公と比べると感情の起伏が少ない青年・久能整(くのうととのう)が主人公の物語です。
殺人事件の犯人と疑われるところから物語が始まるのですが、淡々と捜査のアラを指摘するだけでなく、刑事さんたちが抱える心のモヤモヤまで解きほぐしてしまう、久能くんの観察力と言葉選びがすごいのです。
さまざまなことに造詣の深い久能くんがかける言葉が優しくて、事件の謎だけでなく自分の心のわだかまりまで解いてくれそうな物語。まさに何度でも読み返したくなる一冊です!
●参考記事:『ミステリと言う勿れ』から自分のことを考えたくなる3つの名言
まさかの主人公交代!?『屍人荘の殺人』
神木隆之介さん主演で2019年12月に映画公開されたばかりの話題作。何者かにウイルスが散布されたことにより、周辺の人々がゾンビ化してしまう中で殺人事件が起こるパニックミステリーです。
逃れようがない山荘でゾンビ化した人間たちに襲われる恐怖…!部活の合宿のために山荘に集まっていた学生たちは、殺人者とゾンビたちに内外から追い詰められていきます。怖いっ!
驚くのは、華があって知的でストーリーテラーも兼ねていて、どう見ても主人公キャラの明智恭介が、物語序盤にゾンビに襲われて生死不明になってしまうところです。キャラにも愛着がわき、明智が物語を牽引していくぞ!というところでの退場なので、このストーリー展開には度肝を抜かれます。
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映画 #屍人荘の殺人
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明智の後を継いで探偵役を引き受けるのが、葉村葉譲(ゆずる)と、明智と同じ大学の探偵少女・剣崎比留子です。ゾンビが山荘に侵入することにより、徐々に逃げ場がなくなっていく中、第二の殺人事件が発生!明智の生死も合わせて話のつづきが気になりまくりです。
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専門知識が光る『屍活師 女王の法医学』
遺体解剖の専門知識を駆使したミステリーが『屍活師 女王の法医学』です。情景描写のように散りばめられたコマの中に犯人につながる重要なヒントが隠されているので、小さなコマも見逃せません。
遺体に残った死の痕跡から犯人を見つけ出すのですが、医学的な描写の説得力だけでなく、死体がまるで生きているように語り掛けてくる描写も魅力的です!
ミステリーものって次々と事件が起こる関係から、だいたい短編解決して次の物語にいくことが多いんですよね。そういう時にテンポよく物語を展開してくれるのが「決めセリフ」です。
『屍活師』では「屍は活ける師なり」というセリフを、法医学研究室の准教授・桐山ユキがつぶやきます。この時の表情と短いセリフで、ユキが遺体にどのように接しているかが伝わります。短い物語の中でもこういった登場人物の性格が伝わるコマがあると、読者にも分かりやすくテーマが伝わりますよね!
絶妙のキャラ設定『掟上今日子の備忘録』
言葉の魔術師・西尾維新先生の小説を、浅見よう先生の作画でコミカライズしたのが『掟上今日子の備忘録』。
主人公の掟上今日子さんは「忘却探偵」という異名をもつ探偵で、一度眠ってしまうとそれまでの記憶をすべて忘れてしまいます。
記憶を留められないので、依頼人の守秘義務は絶対に守れますが、同時に大切な思い出も留めておけません。
一日しか記憶が持たないので、事件も一日以内に解決しなければならず、物語に「縛り」がある分、緊迫感が生まれています。事件が何も起こっていなくても、忘却探偵というタイトルと設定を聞くだけでもう惹きつけられてしまいます!
今日子さんがどうして記憶をなくしてしまったのか、彼女自身が抱える謎も含めて楽しめるミステリー。忘却に絡めた言い回しも絶妙で、言葉を楽しみたいがために何度も読み返してしまいます。
文学を読み解くような『親愛なるA嬢へのミステリー』
右手を怪我したために断筆中の小説家・能美啓千(のうみたかゆき)が事件を解いていくミステリー。事件が啓千の「小説」がらみで起こっていて、全体的に文学作品を読みふけっているような感覚になる物語なんです。
「小説」縛りがあることによって物語のテイストに統一感が生まれていて、「事件は犯人ではなく、探偵のせいで起こっているのでは」という問いかけが明確になっています。
推理小説が存在するためには、殺人事件が起こらなければならず、探偵が謎解きを披露するためには、物語の中で人が死ななければならないのです。そうして起きる事件の本当の犯人は、犯人なのか探偵なのか。
物語の登場人物たちが自分たちの生きる意義を、彼らの悲しみや死を楽しんでいる読者たちに問いかけてくるようです。
時代を感じさせる画力が凄い『幽麗塔』
乃木坂太郎先生の美麗絵によって、恐怖が倍増している美しいミステリーが『幽麗塔』です。財宝が隠された時計塔、別名・幽麗塔で起こった猟奇殺人から始まる物語で、時代背景が伝わってくる情景描写も素晴らしいです。
さらに、覆面の犯人「死番虫」や殺害方法がめちゃめちゃ怖すぎて思わず一気読みしてしまいます。
『幽麗塔』は登場人物たちが「性」に翻弄されるLGBTがテーマになった異色のミステリーでもあり、自らの性や性癖に悩み苦しみながらも、彼らが育んでいく信頼関係に胸打たれます。
繊細な主人公を守る大人たち『心霊探偵八雲』
神永学先生の大人気小説シリーズのコミカライズなのですが、小田すずか先生の描く女の子が超絶かわいいところが、マンガ版のオススメポイントの一つです。
死者の魂が見える主人公・斉藤八雲が、死者の願いを聞き届けるかのように現実の犯人を追い詰めていきます。八雲は生まれながらに左目だけ赤く、この左目によって死者の魂を見ることができます。
犯人たちの裏には両目の赤い男の存在があり、この男に弱みに付け込まれ、そそのかされて殺人を犯してしまっているんですね。死者と生者がそれぞれの優しさでお互いを守り合おうとしている構図が独特です。
その生い立ちゆえに人に心を開かない八雲の周りにいる人たちが、優しく八雲を守り合い、徐々に八雲が心を開いていく姿にとても心惹かれます。
極限のサスペンスドラマ『ミュージアム』
小栗旬さん主演で映画化もされた『ミュージアム』はサイコサスペンスミステリー。犯人は、自分が犯した猟奇的な殺人事件の被害者たちをまるで『ミュージアム』に設置された作品のように展示していきます。
ミステリーをおもしろくしてくれるものとして、トリックの謎解き以外に「犯人の動機」があります。愛する人を殺された復讐という動機が割と多い気がしますが、予測される動機から犯人を追っていった際に、その予想を覆す展開が起こると、物語により一層のめり込んでしまいますよね!
ホラー要素満載の『ミュージアム』はマジで超怖いので、夜中に読まないようにお気をつけください!
主人公も読者も成長『金田一少年の事件簿』
大人気マンガが帰ってきた喜びが大きいのが金田一少年のシリーズ。王道ミステリーと言えば忘れちゃいけないシリーズです!
学校の友達や先生までもが犯人になってしまうけっこう容赦ない展開でしたが、最近では舞台裏として犯人側の苦労が分かるスピンオフが出ているのでちょっとなごみます。
アガサ・クリスティーのミステリーでは、犯人が語り部となって犯行中の様子も含めて語っている物語もあるんですよね。探偵役ではなく犯人役にストーリーテラーをさせるには、筆者の技術もいりますが、ミステリーをおもしろくする手法の一つです。
スピンオフでは一生懸命な犯人がなんだか愛おしくなってしまいます。また、犯行動機を考えると気の毒になってしまった犯人さんたちが、なんだかまだ元気な気がして救われた気持ちになります。
少年だった金田一は、現在37歳になっていて、昔の情熱も知ったこっちゃない感じでイヤイヤ謎解きしてるのも最高です。金田一に夢中になっていた世代も、金田一と同じだけ年を取ったので、立場的に共感できるところもたくさん。
金田一自体が「金田一耕助」という名探偵の「孫」という設定ですが、名探偵や名怪盗のファミリー設定で、お互いが対決するのもおもしろそうですよね!
永遠の高校生『名探偵コナン』
「真実はいつも一つ!」と無駄に言いたくなってしまうのは、世界中で人気の『名探偵コナン』。金田一とは真逆に永遠に高校生でいて欲しいと願ってしまう主人公です。
高校生探偵の工藤新一を薬で子どもにした組織との対決という大きなテーマがありつつ、100巻に届くほど膨大な量の謎を解き続けている工藤くんと、作者の青山剛昌先生には頭が下がるばかり。
ミステリー要素がありながら、阿笠博士の発明品によって少年マンガ的なバトル要素やアクションシーンもふんだんに盛り込まれていて飽きさせません。
ヒロインの毛利蘭ちゃんとの恋愛模様がなかなか進まないところが気の毒にもなりますが、もはや完結してほしくない気持ちも生まれてしまう国民的マンガですよね!
結末が分かっているのに読み返したくなる理由
すでに一度読んで結末まで分かっているはずなのに、何度読んでも楽しめてしまうミステリーマンガ。それは世界観や言葉の選択、トリックや動機などさまざまな工夫があるからこそです。
ぜひあらゆる観点からミステリーマンガを読んでみてくださいね。
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