突然ですが、いいですよね。格闘マンガ。
子どものころからあらゆるマンガのバトルシーンが好きでしたが、世の中に格闘マンガのバリエーションが増えるにつれ、超リアルな描写の作品もたくさん出てきたように思います。読み込んでいった結果自分も総合格闘技を始めてしまったくらい格闘マンガ好きな私が「絶対に抑えておくべき傑作」から「ちょっとマニアックな名作」まで一挙ご紹介します!
格闘マンガといえばこれ!読んでおきたい超名作 3選
はじめの一歩
ボクシングマンガにハズレ無し。
『あしたのジョー』を引き合いに出すまでもなく、日本のマンガ界には、昔からボクシングという競技に対する異常なリスペクトがあるように思います。
苦しい練習や減量を乗り越え、明るく照らされたリングの上で拳(ボックス)を握りこみ、一対一で決着がつくまで殴り合う……。そして、単純なルールながら長い年月を経ることで研鑽された技術の応酬に発展し、勝ち負けやKOという結果が現れるころには、誰しも感動を覚えるドラマが仕上がっているのです。
いじめられっ子だった少年が最強のボクサーと知り合ったことからプロボクサーを目指し、「風神」と呼ばれるほどのハードパンチャーとして成長してゆく物語。ボクシングマンガの金字塔である『はじめの一歩』は絶対に読んでおくべき名作です!
『グラップラー刃牙』シリーズ
「オーガ」と呼ばれ、地上最強の生物として恐れられる男・範馬勇次郎。その息子である範馬刃牙は、「父親より強くなりたい」という一心で日々修行や戦いに明け暮れる主人公。
数々の格闘家としのぎを削る地下闘技場トーナメント編、最恐死刑囚編、中国での武術大会編……など、30年近く連載されていることでいくつものシリーズにもまたがる本作は、非現実的な描写やトンデモ展開を「愛のあるいじり」によって揶揄されがちですが、これほど長きにわたって読者を惹きつける魅力が確かにあるのです。
個人的には、その魅力を血の通ったキャラクター性から感じます。あらすじを読むと、一見「主人公のバキは父親を超えて世界一強い男になろうと思っている」と誤解しがちですが、これは完全にミスリード。バキは、父である範馬勇次郎のせいで凄惨な幼少期を過ごした結果、倒錯してむしろ一種のファザー・コンプレックスを抱えているのです。このことは、作中に出てくる「もしも範馬勇次郎が世界で一番弱い生物なら、オレは二番目に弱くていい」というバキのセリフから読み取れます。ぼくは、このセリフを読んだとき、作者である板垣先生の「深さ」にゾクゾクしました。
バキの成長をしっかりと、しかしド派手な展開でテンポよく読ませてくれる範馬家サーガとでもいうべき超大作の物語、ぜひご一読ください。
『修羅の門』シリーズ
千年間の不敗を誇る「陸奥圓明流(むつえんめいりゅう)」の継承者である陸奥九十九(むつ・つくも)が実戦空手の神武館に乗り込んで天才空手家たちと対峙するところからはじまり、アメリカやブラジルにも渡って世界中の格闘家と戦ってゆく壮大な物語。
千年不敗。架空の古武術。中二病ですよね。ロマンですよね。
オリジナル技も「虎砲」だとか「無空波」だとかね。くすぐられますよね。つい練習したくなってしまいます。
相手を倒せば倒すほど、次から次へと「あいつを倒したくらいで調子に乗るな。オレは10倍強いぞ」って感じのノリで無敗の天才格闘家が現れつづけ、それを乗り越えるべく新しい技や奥義を習得し、「陸奥圓明流千年の歴史の中に敗北の二字はない」とセリフをキメる九十九の半生を、ぜひ追いかけてみてください!
世界中の格闘技が交わる、「超進化系」格闘マンガ! 4選
『喧嘩商売』シリーズ
「最強の格闘技は何か!?」という問いから毎巻スタートする、コンゲーム(騙し合い)要素を格闘マンガに取り入れた「喧嘩マンガ」それが『喧嘩商売』シリーズ。
悪魔のような頭脳を持つ高校生の佐藤十兵衛は、喧嘩で連戦連勝を続けるも、異常な怪力を持つ用心棒の工藤優作に完敗した経緯から古武術・富田流の入江文学に師事。肉体も技も鍛え直して工藤へのリベンジを狙うが、その舞台は最強の格闘家が集うマカオでの陰陽(インヤン)トーナメントへ移ってゆく……。
これは、格闘マンガ界のHUNTER×HUNTER。超魅力的なキャラや、丁寧に描かれる心理戦、そして休載が非常に多いところも似ています。
中盤から描かれる奥義「煉獄」は、マンガ史に残る傑作オリジナル技だと思います。
『喧嘩商売』で伏線を広げに広げ、それを丹念に回収する続編の『喧嘩稼業』からが登場人物も舞台も整い、本番といっていい内容になっています。
『ケンガンアシュラ』シリーズ
裏サンデー発足初期から大ブレイクした、ポスト・グラップラー刃牙とでも形容すべき純度100%の格闘マンガ。
大企業同士の代理戦争として開催される「拳願試合」。その闘技者として、出典不明の武術「二虎流」の使い手である十鬼蛇王馬(ときた・おうま)が未知の闘技者たちと次々に戦ってゆく物語。
強敵たちを撃破してゆくザ・王道でありつつも先の読めない展開と勝敗はまさにケンガンアシュラの骨太な魅力となっています。超人的な攻防の末に辿り着く「勝負ありッッッ!!!」の決着シーンは、どの試合もカタルシスをもたらせてくれるキレのよさ。
現在、『ケンガンオメガ』として続編が連載されています。
空手小公子 小日向海流
体操選手の道を挫折した小日向海流(こひなた・みのる)が、大学で鏑木(かぶらぎ)流空手と出会って「空手小公子」と呼ばれるプロ格闘家になるまでの物語。
剣道や柔術と戦うカオスな序盤、団体戦で仲間と結束を固めてゆく中盤、そして立ち技系格闘技を極め一流の選手へと育ってゆく後半、とダイナミックにテーマが移ってゆく構成に特徴を感じる一大ストーリーです。
素人だらけの序盤から超大物格闘家にいたるまで、各キャラの強さの根拠が個性的かつハッキリしているおかげで、説得力を感じる試合ばかり。「成長」にフォーカスしたパートが多く、決して強くなかった仲間が不良をいさめて「鏑木流相手に頭突きはやめとけ……」と諭すシーンが超いいんですよ。
後半へ進むにつれ、セクシーすぎる扉絵になってゆくのもうれしい演出(?)です。
エアマスター
超トンデモ格闘マンガ。格闘マンガの極北。
体操選手として期待されていたが挫折してしまった女子高生の相川摩季(あいかわ・まき)は自分の居場所を街にしか見出せず、ストリート・ファイトの世界に身を投じます。その身体能力を活かしてアクロバットな蹴り技で相手をなぎ倒す姿から「エアマスター」と呼ばれ、町中の喧嘩自慢に狙われることになってゆくのでした。
細かいことを気にせず勢い重視で格闘マンガをやるとこうなるのか、と震える正体不明の疾走感。そして、その勢いだからこそ生み出された破壊的な構図のカッコよさ。
引っ張られるように読み進めるうち、意味不明なギャグパートもクセになってくる気がします。
思わずやってみたくなる!? リアルすぎる硬派な格闘マンガ 2選
鉄風
「私は充実している人間を--許さない!!」
主人公の石堂夏央(いしどう・なつお)は、どんなスポーツでも器用にこなしてしまう身長182センチの女子高生。転校してきた馬渡ゆず子(まわたり・ゆずこ)に誘われて総合格闘技の世界に足を踏み入れるが、じつは石堂は「キラキラした無垢な人格」を叩き潰したくなる異常性も持ち合わせていた。スパーリングという体裁で馬渡に手をかけようとするが……。
総合格闘技の特徴として、打撃はセンスが重視されることに対し、寝技は「知らないとできない」ので、わりとコツコツ習得していく必要があります。そのあたりもしっかり修行パートで描かれていることがマニア心をくすぐられるポイントです(それでも石堂の上達速度は異常ですが)。
女子格闘技に焦点を当てた数少ない良作といえます!
オールラウンダー廻
主人公の高柳廻(たかやなぎ・めぐる)は高校生活のかたわらでなんとなく総合格闘技のジムに通い始めたが、先輩に誘われてアマチュア修斗やブラジリアン柔術の大会に参加するようになる、そんな話。
読めばわかるのですが、アマチュア格闘技、めっちゃコアすぎる……。率直に言ってめちゃくちゃ地味。なのに面白い! この面白さは、圧倒的なリアリティが担保しています。フィジカルエリートに囲まれるなかでパワーもスピードもないメグルは、「打・投・極」をバランスよく身につけ、「際」での攻防を制してほんの少しずつ勝ちを積み重ねていきます。
試合会場では、定職に就きながらもアマチュア格闘技を続けるオッサンの悲哀なんかも丁寧に描かれ、とにかくリアル……。
「殴った相手が壁に吹き飛んで、コンクリートブロックが壊れる」そんなアンリアルな描写にため息をついたことがあるなら、ぜひ読んでみてください。遠藤先生の精緻な作画にも必見です!
まとめ
いかがでしたか? こうして並べてみると、「世界中の格闘技が競い合う」そして「主人公は作品独自の技術体系を習得している」という構造の作品が多いかもしれませんね。
まだまだまとめきれない面白い格闘マンガはたくさんありますが、まずはぜひこの記事のなかからお気に入りを探してみてください!