波よ聞いてくれ

沙村広明 / 著

舞台は北海道サッポロ。主人公の鼓田ミナレは酒場で知り合ったラジオ局員にグチまじりに失恋トークを披露する。すると翌日、録音されていたトークがラジオの生放送で流されてしまった。激高したミナレはラジオ局に突撃するも、ディレクターの口車に乗せられアドリブで自身の恋愛観を叫ぶハメに。この縁でラジオ業界から勧誘されるミナレを中心に、個性あふれる面々の人生が激しく動き出す。まさに、波よ聞いてくれ、なのだ!

概要

月刊アフタヌーンで2014年から連載中の『波よ聞いてくれ』は、沙村広明先生による作品です。しがない一般人女性であった主人公・鼓田ミナレが、人との出会いを通じてラジオの世界へパーソナリティとして飛び込んでいくストーリーとなっています。

あらすじ

舞台は北海道札幌市。スープカレー屋「VOYAGER」で働く鼓田ミナレはある日飲みに行った店で、偶然隣に座った初対面の男性に自分の恋愛に対して酔っ払いながらくだを巻いていました。翌日二日酔いの残る頭でミナレはいつものように店に出勤し、店内でBGM代わりに流しているラジオを聴いているとふと聞き覚えのある声が。なんと昨日酔っ払って語っていた自分の恋愛事情が、素人の会話を流すというラジオ番組から突然流れてきたのです。

それを聴き仕事中にもかかわらず店を飛び出し、ラジオの放送局へと突撃したミナレ。昨日酔っ払って愚痴をこぼしていた相手は、なんとラジオ局のディレクターでした。突撃した勢いのままディレクターである麻藤兼嗣にうながされ、ミナレはそのままラジオで少しだけトークを繰り広げることに。後日そのミナレが発言した回のラジオは話の内容がユニークさやミナレの素人離れした喋りのテンポの良さもあり、ネットや動画サイトなどで局所的な話題ともなりました。

ミナレのトークスキルにパーソナリティとしての適性を垣間見た麻藤は、彼女にラジオパーソナリティを本格的にやってみないか、と提案をします。ラジオの一件から、もしかしたら自分のトークは人を惹きつけるものなのかもしれない、と気づいたミナレは、そこから徐々にラジオの仕事の世界へ足を踏み入れることとなっていくのです。

登場人物紹介

鼓田ミナレ

本作の主人公、スープカレー屋「VOYAGER」のホールバイトをしています。明るくてサバサバとした気の強い破天荒なところもある女性で、普段からかなり個性の強い独特な比喩表現や語気の強い喋り方をする人物でもあります。酒を飲んだ時もそれは変わらず、そのトークスキルをラジオディレクターである麻藤が目に止め、彼女をラジオの世界へと誘い込みました。

一度何かに意識を向けるとそればかりになり、周りが見えなくなるという猪突猛進な部分も大いにある女性。そうかと思えば自分に都合の悪いことが起きたり、自分にとってそれとは別に得になるようなことがあればすぐに掌を反すようなお調子者でもあります。ですがそんな性格がある意味で人を惹きつけており、お店ではそこそこ認知度の高い店員さんとして評判となっているそう。また恋愛においては、いわゆる「ダメな男」を好きになりやすいタイプ。ですがつい最近彼女に50万を借りて連絡を絶った元カレ・哲雄とのエピソードが、結果として彼女をラジオの世界へと導くことになったのです。

自分を引き込んだディレクター・麻藤から自身のトークスキル、特にアドリブ力や対応力の高さについて評価を受け、ラジオのパーソナリティをやると決めた直後には小さな深夜番組の冠番組を持つようになりました。そこから徐々に番組のオーディオドラマを作成したり取材録音に同行したりと、本格的に番組を作るラジオパーソナリティとして奮闘するようになっていきます。

麻藤兼嗣

ミナレを発掘した藻岩山ラジオ局(MRS)のラジオディレクター。かつてはテレビ局で仕事をしていましたが、とある芸人との出会いに影響を受けラジオ局へと転向しています。深夜ではあるもののラジオ番組の要となるスポンサーを用意しない、いわゆるノンスポンサーの番組をミナレのために制作しました。このことから社内でも、そこそこの発言権や決定権は持った人物のように見受けられます。MRSに出入りする雇われ構成作家である久連木克三とは付き合いも長く、仕事の面でも近しい価値観を共有しているようです。

ラジオに対しては、ミナレに近しい破天荒な考え方を持っているタイプの人間。スポンサーを気にしなくていい深夜番組をミナレに持たせた際は、とにかくパンチを残せ、炎上覚悟でやれ、とかなり過激な発破をかけたりもしています。面白い番組を作る為には予想外のトラブルがあってこそ、というような形の考え方も持っている様子。付き合いの長いラジオパーソナリティである茅代まどかを、パーソナリティの理想に近い綺麗でソツがないトークと評しながらも、ミナレに求めているのはそういった要素ではない、ということも明言しています。

南波瑞穂

MRSのアシスタントディレクターを務める女性。女の子らしい柔らかな雰囲気で、いわゆる女子力のあるマメな性格をしている人物です。元カレに50万を持ち逃げされ家に住めなくなったミナレを、短期間家に居候させてあげるという面倒見の良い優しさも持っています。

高校の頃からラジオの世界に憧れており、課外授業で教壇に立った久連木からの授業やアドバイスを受けラジオの世界で働くことを改めて強く目標として抱くようになります。念願叶いMRSに入社し憧れていた久連木とも共に働けていますが、久連木に想いを寄せる一方で彼と仲の良い茅代に敵対心を抱いているようです。

性格も良いいわゆる「いい子」ですが、これまでに恋愛経験はないそう。またペットの亀を3匹飼っており、それぞれに名前を付け全員の好みにあわせて餌を分けて用意していたりと、自身の真面目さを存分に発揮させています。

中原忠也

スープカレー屋「VOYAGER」でミナレと共に働いているキッチン担当の同僚。店長の元で働きながら、いつかは未来の奥さんと一緒に自分だけの店を持ちたいという夢を持っています。根が真面目な性格ということもありミナレにずっと健気な思いを一途に寄せていますが、その件に関してはミナレにはずっとつれない態度を取られている様子。一方で最近入ったばかりの新しいバイト、城華マキエから好意を寄せられていますが、そのことには一切気が付かない鈍感な部分もあるようです。

メディアミックス

ラジオ

テーマ性も相まって、ラジオとのメディアミックスも多い本作。まず2015年にJ-WAVEにて、コラボレーションスペシャル番組が企画されました。番組ではコミックス1巻で描かれているものをベースとしたラジオドラマが放送されていたそう。

また2020年にはテレビアニメと連動して、AIR-G'(エフエム北海道)とのコラボレーション特別番組が制作・放送されています。パーソナリティもアニメで鼓田ミナレ役を演じた声優・杉山里穂さんが務め、本当にミナレが番組をやっているかのようなリアリティのある内容となっていました。放送内では北海道弁を冠したタイトルであったり、札幌の最新情報を時には実際にリポートしたりと、北海道のローカル感満載のコーナーが組まれていたようです。

テレビアニメ

また本作は2020年にテレビアニメも放送されています。原作の様々なご当地ネタ満載感などもそのままのため、大勢に話題となったアニメになっていました。

2020年4月から放送。放送局はMBS、TBS、BS-TBS”アニメイズム“枠、HBC。

監督は南川達馬さん、制作はサンライズ。

受賞歴

  • マンガ大賞2017:5位
    マンガ大賞2016:6位
    このマンガがすごい!2016 オトコ編:6位

豆知識

主人公ミナレが働くカレー屋「VOYGER」は新宿区にあるスープカレー屋「東京ドミニカ」がモデル。

作者情報

作者である沙村広明先生は1993年にマンガ家としてデビュー。デビュー作となった『無限の住人』で一躍話題となり、同作の画力が高く評価され第1回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞しました。その画風からこれまでに短編マンガやイラストの仕事についても多数執筆をしています。今作『波よ聞いてくれ』は前作『無限の住人』とは真反対の、「今度こそ間違いなく、人の死なない漫画」というコンセプトで描かれた作品だと先生は語っています。

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