BEASTARS

板垣巴留 / 著

『BEASTARS』生まれた瞬間から決まる「種族」に対して、もがけ!!

出会いと別れはいつの季節にも訪れます。特に春は新生活の始まりの時でもあり、最も心が騒めく季節です。肉食獣と草食獣という異種族の対立、共生、恋愛を描いたマンガ『BEASTARS』は、新しい人間関係などから来るわたしたちの悩みも「同じヒト科じゃん!と思えば小さいモノでしょ」なんて、そんな勇気をくれる作品かもしれません!

生まれながら決められる種族という壁

物語の舞台となる「チェリートン学園」は動物たちが集まり、共に学ぶ学校です。『BEASTARS』の世界では、肉食獣と草食獣が共存していて、二足歩行で行動し、動物たちは部活動に精を出したり恋をしたりと、一見平和な生活を送っています。

主人公のレゴシはイヌ科最大の体を持つハイイロオオカミです。顔つきも鋭いですが、心は驚くほど繊細で優しさにあふれています。ただ肉食獣というだけで、危険、狂暴などのレッテルを張られるのですが、優しさからくる行動がそんな誤解を打ち破っていきます。

ある日、肉を食べることが禁止された世界でレゴシの友人が何者かによって「食殺」されてしまいます。

『BEASTARS』に登場する草食動物たちは、昨日まで友人だった者に食べられてしまうかもしれない危険といつも隣り合わせです。学内で食殺が起こり、犯人がみつからないときは、横で笑ってる友人を「私のことを餌と思っているんじゃないか?」、と疑いながら過ごすことになります。

この食殺や、同じ肉食動物が闇市で「肉を食べる」という行為から、レゴシの葛藤が生まれて育っていき、種族とは何なのか違うとは何なのか違うからダメなのか、とキャラクターを通して深く考えさせられる作品でもあります。

レゴシを取り巻くワケアリなキャラクターたち

ドワーフ種のウサギで、レゴシが恋心を抱くハルは弱者として同情されるのを防ぐために、さまざまな動物と体の関係を持とうとします。どんな動物でも交流しているときは「対等」と感じられるからです。

また、アカシカのルイは演劇部のキャプテンで生徒会長でもあるのですが、実は闇市で食料として売られていた過去を持っています。

チーターとガゼルのハーフで味覚を感じられず、殺すことを楽しむメロンからは、ヒト科の人間には感じることのできない感情を感じさせてくれます。

レゴシは草食獣と肉食獣の生まれながらにして決定された、種族の壁に苦しみながらも不器用に乗り越えて成長していきます。その生き様がかっこよすぎて、あっという間に『BEASTARS』の虜でした。演劇部の裏のテーマは生き様を見せる。彼らの狙い通り、その生き様に魅せられました。

葛藤することこそ青春だ!!

肉食と草食、メスとオス、ヤクザとカタギ、陸と海、など『BEASTARS』では、どの立場にいる動物にもすぐには解決できない問題が立ちはだかっています。もがいて余計に苦しんだりするんです。痛みを感じても生きる道を探すからこそ、そこには種族や立場に対する優劣のない人生の輝きがあります。マンガを読んで、その輝きに憧れてみてください!!

種の悩みに触れてみる

BEASTARS (全22巻) Kindle版

本記事は、2021年度4月にアルのライターとして加入した新人の皆様の最初の記事をGWに一挙公開する「Golden Rookie Week企画」の一本として掲載されています。ニューカマー達の活躍を今後も見守ってあげて下さい!