スティーブズ

うめ著

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スマートフォンを持っているのなら「STEVES」は必読。すべてを再発明した偉人達の物語

マンガ、どうやって読んでますか?かなり多くのみなさんがスマートフォン、時折タブレットだったりWindowsPCだったりいやここはやはりMacかもしれません。そうなんです。それさえ、彼らがいなければ叶わなかったことかもしれません。

スティーブズ
うめ著

誰が書いたの?

パワーとテイストが両立した画力とドラマチックな演出で定評のある夫婦マンガユニット・うめ先生がITに夢中なわたしたちに全力投球でぶつけてきた「熱血ITフィクション(ややほんのりノンフィクション)」です。

自伝的フィクションですが、ドラマチックな部分、「これ、まるでマンガみたいにドラマティック!」なんて思えるシーン、それほとんどが事実です。つまりフィクション的ノンフィクション。登場人物達の持つ「強い意思」、特にジョブズの「現実歪曲空間」をマンガ的手法で可視化すると、まるでエンターテインメントのように見えてしまうという手品ですね。考えてみればこれがマンガの持つ力かもしれません!

maxspeed

言葉の力の可視化、萌えるわぁ。言語力の強い人の話を聞いていると、なんかが見えてくるときってありますよね。ソレそれ!

あらすじ

美しさこそ世界を支配するのだという意志に縛られた男と天才的頭脳を持つ唯一無二の男達の物語「STEVES」。

このコンピュータが生活の一部になっているすべての人に。このインターネットの世界を漂っているすべての人に。そして、このスマートフォンが自分自身そのものであるすべての人に!理念を貫き通し、この世界にコンピュータ革命を起こした偉人、アップルコンピュータの「二人のスティーブ」を描いた自伝的フィクションです。

1975年。カリフォルニア州の住宅街。ごく普通の家のガレージから伝説は始まります。今では聖地とまで呼ばれるそこでAppleは誕生しました。半田ごてを操り黙々と基盤を組み立てるウォズニアック、足りない部品そして最高の部品を手に入れようと奔走するジョブズ。能力も役割も見ている未来も異なる二人が手を組みコンピュータの世界を切り拓いていきます。そうして切り拓かれたカリフォルニアが文字通り「珪素の谷(シリコンバレー)」と呼ばれるようになり、新たな産業革命の地となりかつて想像でしかなかった「未来」の全てを実現していく場所へと変貌を遂げていきます。歴史のスポットライトを浴びた、そして勿論今も浴び続けている伝説の偉人達が続々と登場し臨場感は満点。現実こそが最もドラマチックなのだ!と思わずにはいられない物語(でも一応ノンフィクションですからね!)です。

仕事にもいつか役立つ?ジョブズのプレゼン能力

「現実歪曲空間」と名付けられたジョブズのプレゼンテーション能力は、基調講演へ訪れそれを目の当たりにした多くに人々が”信者”と呼ばれるほどに魅了されてしまう官能的で理解不能な説得力に満ちていました。

maxspeed

上から目線でビシッっと言われると「お、おう…」と思っちゃう謎説得力。もちろんそれだけじゃないんですけどね!

現実の把握、分析、問題提起、そして解決手段。そういったプレゼンテーションの王道からは決して外れることなくジョブズは人々の前で真っ直ぐ前を見据え、時にははにかみ、時には怒り、そして自信に満ち満ちた表情で語るのです。自信に満ち溢れた立ち振る舞い、少しの後進と揺るがない前進、多少の暴言(それさえも魅力的!)、圧倒的ビジョン。それらは目の前にいる人々以上に、自分自身をも「それを実現するのだ」と信じ込ませる言葉に溢れていました。

そんな言葉の魔術師でもあったジョブズが作ったものは、言葉を不要としマウスや指を使いアイコンを操作する「GUI(グラフィカルユーザーインターフェース」の製品であったのは皮肉ですよね。

「STEVES」はそんなジョブズのプレゼンから始まります。この6巻ほぼ全てが、そのプレゼンで語られた歴史といっても過言ではありません。

歴史を飾る有名人達

  • ビル・ゲイツ

同じ年に生まれ、心優しい友人とともに起業しコンピュータの今を作り出した偉人と言う点でもジョブズと似た道を歩んだ最強のライバルです。彼の会社マイクロソフトがリリースしたMS-DOSとWindowsはコンピュータの世界を席巻し、今でもPCでは世界最大のシェアを誇っています。スマートフォンにも何度か挑戦していますが、なんだかパッとしなくてちょっと残念ですね。主食がマクドナルドという程にファーストフードが好きな彼は、来日の際、東京の初台にアスキー(PC雑誌の出版社)があった頃、近くにある吉野家が大変お気に入りで入り浸ったり、回転寿司屋に行くと回る寿司が珍しすぎてレーンに手を突っ込んで寿司をせき止めてしまったりと、天才らしい知的好奇心に溢れるやんちゃな行動で知られています。そんなビル・ゲイツはどこからやって来て、何をしたのか。

maxspeed

ビル・ゲイツさんの巨大でブラックホールのように吸い込まれそうな目が本当にコワイです(良い意味で)

この「STEVES」は彼の成長譚でもあります。描かれてはいませんが、後年Appleが経営的危機に陥った時、出資を行い助けたのもまたビル・ゲイツ率いるマイクロソフトでした。因縁とは延々と続く縁でもあるのです。

  • ポール・アレン

ビル・ゲイツの良き友でありパートナーです。もう一人のスティーブ、ウォズニアックがジョブズの最大の理解者でありパートナーであったように、ポール・アレンがいてこそビル・ゲイツの今があると言っても過言ではありません。天才的プログラマーでありビジネスマンでもありました。ビル・ゲイツがジョブズ同様にビジョナリストとして未来の絵を思い浮かべていた様に、ポール・アレンはウォズニアックと同じように今のテクノロジーを愛し、その延長線に実現可能な未来を描こうとしていたのです。

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親友と夢の第一歩を喜び合う姿。キレイな心のポール・アレンが大好きです

それは彼が、マイクロソフトを辞した後に宇宙開発関連企業へ投資したしたり深海への探求に熱心であったことからも伺い知る事が出来ます。2015年、自身のTwitterアカウントで発表された戦艦武蔵発見のニュースは今でも記憶に新しく大きな驚きでした。夢を追い、技術が叶える可能な未来。ポール・アレンの思い描いた「明日」を叶える使命は、今、次の世代に課せられています。

  • アラン・ケイ

「未来を予測する最善の方法は、それを発明してしまうことだ」アラン・ケイのこの言葉を唯一実現した男、それがジョブズでした。

maxspeed

アラン・ケイ先生のこの登場シーン、快傑ズバットなのでは…。

パーソナルコンピュータの父。片手に持てるコンピュータ。安く軽く、文字、映像、音声を扱える。ネットワークで繋がり、美しい文字が美しい画面を彩る。しかもそれらはGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)で。それがアラン・ケイの「ダイナブック構想」です。あれ?でもそれタブレットだし、スマホですよね?と思うのは当然。でもこのダイナブック構想が語られたはのは1972年。未来を予測し過ぎ!アラン・ケイの夢はゼロックスのパロアルト研究所で結実し、それを見学したジョブズによって現実の商品へと繋がっていきます。そしてやがてiPhoneへと!

かつてキヤノンが日本でのAppleの販売代理店だった頃、漢字が扱えるように強化したMacintoshを販売したことがありました。その名は「DynaMac」!!Macが生まれる切っ掛けにもなったアラン・ケイとの出会いは、長い年月を経て遂にこうして名前として歴史に刻まれることになったのです。しかも、日本で。

  • スティーブ・ウォズニアック

「ウォズの魔法使い」。ジョブズの5歳年上、Appleの共同成立者、天才的技術者。抜群のユーモアセンス。温厚な性格。その数え切れないチャーミングな人間性はジョブズと正反対です。ジョブズにとってウォズニアックは自らの不足している部分を補う欠かせない存在であり真反対を映し出す鏡のような存在でした。自ら回路を設計し、自ら半田ごてを握って基板を組み立てる優しい神様に、ジョブズはなれませんからね。

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ウォズニアックの優しさが僕はすごく好き!

ロックフェスを自ら開催するなど様々なカルチャーに造詣が深いウォズは、東京で開催された「東京コミコン」の名誉顧問に就任し2015年、2017年と来日。ポップカルチャーファンの大声援を浴びました。

初期のAppleの製品は、デジタルでありながら明らかに彼の人間性を受け継ぐ、一台一台がウォズの子供であったと言えます。伝説にはそんなあり得ないストーリーがあっても、悪くないでしょ?

  • スティーブ・ジョブズ

ジョブズの特異性は「STEVES」では描ききれないほどです。ウォズと一緒にしたアタリのギャラをピンハネしたこと、ソニーの工場で見た制服に感激してAppleにも制服制度を持ち込もうしたこと、プレゼンでいつも着てたイッセイ・ミヤケの黒いタートルネックは同じモノが何十着もあること、しかも買えること、乗ってた車にはナンバープレートが無いことも。彼には自分のルールがあり、そのルールこそが使命でした。その瞬間に見えている未来があって、それを人々に伝達するために命がありました。Appleが何故世界中で愛されたのか、それは「美しいから」に他なりません。美しさはそれを所有する人に喜びと充足を与えてくれます。触れた時に感じる美しい造形、指先に吸い付く様な滑らかな動き、その人を最先端に送り届けてくれる先見性、驚きを与えてくれる未知の実現。それらは技術者では叶わずマエストロにも無理なことです。そこにこだわり続けるエゴの神が必要でした。

けんすう

史実では「Welcome IBM, Seriously.」なので、ほぼ正しい訳です #apple #スティーブ・ジョブズ

そのエゴを貫き通すための男の成功と多少の挫折と復活。スティーブ・ジョブズの人生は波乱に満ちていました。

iPhoneの前と後ではスマートフォンのカタチが全く変わってしまったように、ジョブズ登場の前と後ではプレゼンの形さえ大きく変化しました。きっとわたしたちも「STEVES」を読む前と読んだ後では世界への触れ方が変化します。だからぜひ読んで欲しいんです、「STEVES」を。

「神は細部に宿る」

それを思いながら、きっとあなたの近くにあるAppleの製品をじっと見て下さい。二人のスティーブの魂が、そこに息づいています。