作品概要
野田彩子先生の作品『ダブル』は二人の役者を描く演劇マンガ。
天才的な役者とそれを支える凡才な役者の悩みながら藻掻き変化していく関係性が丁寧に描写されている。
掲載WEB
ふらっとヒーローズ
受賞歴
第23回文化庁メディア芸術祭 優秀賞
実写化情報
連続ドラマ化企画が進行中(2020年11月30日現在)
はい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! pic.twitter.com/1E052USZjK— 野田彩子🎶ダブル3巻出ました!!!!!! (@engraulis) October 9, 2020
あらすじ
宝田多家良(たからだたから)は偶然観た芝居で鴨島友仁(かもしまゆうじん)の演技を観て演劇を始めた。芝居の才能を開花した頃に多家良の元に芸能事務所からのスカウトの話がやってくる。
才能の可能性が広がって欲しいと願う友仁のアドバイスに従いプロの俳優としての活動を始める多家良であったが、今まで友仁の演技プランや思考を頼りに役を作り上げていた事により、友仁が居ない現場での役作りに困惑する。
友仁はその事で自分が多家良の可能性を狭めていたのではないかと悩み、役者としても精神的にもお互い離れていかなくてはいけないと悟る。
登場人物
宝田多家良(たからだたから)
宝田多家良宛のチョコ、編集部から転送いただきました!ありがとうございます!! #漫画ダブル pic.twitter.com/W6l3VBo0PU— 野田彩子🎶ダブル3巻出ました!!!!!! (@engraulis) February 14, 2020
基本的に何事においても不器用で生きづらさを抱えている。ある日友仁が出演していた舞台を偶然観て芝居の道へ進み、その才能を開花させる。
友仁への信頼が厚い。
鴨島友仁(かもしまゆうじん)
5/8は鴨島友仁の誕生日 後ろはモネの『睡蓮、柳の反映』模写 #漫画ダブル pic.twitter.com/4nWOSnZFI4— 野田彩子🎶ダブル3巻出ました!!!!!! (@engraulis) May 8, 2020
多家良に芝居のノウハウを叩き込み、嫉妬心も抱いているが心の底から多家良の才能を信じて応援している。
轟九十九(とどろきつくも)
九十九、カラーで見たいと言ってくれてる人いたので…九十九はいいやつだし、スカーフみたいなシャツ着てるときある #いい兄さんの日 #漫画ダブル pic.twitter.com/BHJ4bS0w5Q— 野田彩子🎶ダブル3巻出ました!!!!!! (@engraulis) November 23, 2019
俳優。努力家で多家良と友仁の事を気に入っている。
今切愛姫(いまぎれあき)
愛姫 pic.twitter.com/6wVGBORBPE— 野田彩子🎶ダブル3巻出ました!!!!!! (@engraulis) June 9, 2020
俳優としての活動が目覚ましいアイドル。多家良と映画で共演して出会う。
冷田一恵(つめたかずえ)
フラット芸能事務所の社員。多家良をスカウトしマネージャーを務める。
黒津壮市(くろづそういち)
多家良と友仁が尊敬する大物映画監督。
作品の魅力
▼実写と錯覚してしまう様な描写
野田先生の写実的な絵柄が相俟って、登場人物の息遣いまで伝わってきそうだ。
「実際にこういう俳優がいるかもしれない」と感じさせ、演技の解釈や説明の巧さが合わさる事でマンガの二次元的表現と演劇的な三次元的表現の狭間で作品に触れられて贅沢な気分に浸れる。
▼台詞運びのセンス
絵の巧さに加え、言葉の美しさも味わい深い。作中、多家良のマネージャー・冷田のこんなモノローグがある。
横顔が美しい 日常で人の横顔を見る機会は意外に少ない 横顔を注視する行為は 相手への能動的な働きかけだ
普段意識しない行動の説明を文字で見た時、口頭で聞く言葉とは違う新鮮さと美しさを感じさせられた。
是非読む際に台詞の一つ一つを取りこぼし無く楽しんで欲しい。
▼芝居好きの心を擽る
シェイクスピア作「お気に召すまま」、チェーホフ作「三人姉妹」、つかこうへい作「初級革命講座 飛龍伝」等作中では実在する戯曲を演じるシーンがあり、芝居好きな人のツボを突いてくる。
マンガで描かれたその芝居や演出の表現の効果によって、役者としてその台詞を言っているだけなのに何故か本人の深層心理が浮き彫りに見えて来る。
▼妖しさを帯びた共依存
元々別名義の「新井煮干し子」でBL作品を発表している野田先生。
ダ・ヴィンチのインタビューで「ニアBL」が書きたいと担当編集者へ相談したと話ており、『ダブル』はその言葉通り多家良と友仁の二人のシーンにどこか妖しくどきりとしてしまう描写が見られる。
手に触れる、膝枕するの等些細なやり取りに二人の親密さを描き、時にお互い離れて仕事や生活をする様になったにも関わらず、互いに妄想で作り上げた相手と脳内で語り合いながら生きる様子から一筋縄ではいかない共依存な関係である事が窺がえる。
その関係性が崩壊するのか前進するのかを、一つの芝居を観劇する気持ちで最後まで見届けたい。
名言
お芝居の巧拙は一要素に過ぎません 個人(ひと)の輝きを 見出したいという欲望が熱狂を作り出すのです 誰もが 個人に魅了されたいのです
多家良をスカウトした際の冷田の言葉。タレントの存在意義が丁寧に書かれている。
役者という生き物は 一人では生きていけない 一緒に生きていくこともできない
友仁と多家良の関係性を現した言葉であり、この作品のテーマとも言える。
豆知識
掲載されているWEBサイト「ふらっとヒーローズ」にて作者の野田彩子先生による俳優の津田寛治さん、板橋駿谷さんのインタビューが掲載されている。
▼津田寛治さんインタビュー
▼板橋駿谷さんさんインタビュー
作者情報
野田彩子先生Twitter
https://twitter.com/engraulis
野田彩子先生作品告知Twitter
https://twitter.com/ComicSennetsu