2021年のアニメ化も待ち遠しい、山口つばさ先生による『ブルーピリオド』。最新刊となる第10巻が5月21日に発売となりました!
前巻となる9巻では、友人でありライバル・世田介との微妙な距離感が解消されないままだった八虎。「絵を描くことは好きか?」という美大生の本質を浮き彫りにする質問で終わった前作から、彼らの関係はどのように展開していくのでしょうか?
9巻までのおさらい
怒涛の文化祭と夏休みを終え、大学は後期授業期間へと突入。フレスコやモザイクなどの課題へ向き合う毎日が再び始まる中で、八虎は再び世田介とのコミュニケーションに少しずつ不協和音が生じるように。
決定的な価値観の食い違いを抱えたままの世田介と八虎。しかし友人・はっちゃんの言葉から、八虎は互いのコミュニケーションの不和の正体に気付くことに。
表面的な言葉や表現だけではなく、世田介ときちんと本質的なコミュニケーションがしたい。相手の事を、本当の意味できちんと理解したい。世田介に対しそんな思いを抱えた八虎の口から世田介へと発されたのは、「絵を描くの、好き?」という質問でした。
10巻で描かれる世田介の葛藤とは?
八虎の「絵を描くのが好きか」という問いに答えた世田介の答えは、迷いのないNO。「絵を描くのが好きだと思ったことは一度もない」というその答えに、八虎は独りまたぐるぐると世田介の苦悩へ思いを馳せてしまいます。
一方矢虎を始め教授の猫屋敷、そして実の親。多くの人間の自分の本質に一切の理解を示さない過干渉な振る舞いに、世田介もまたうんざりとした気持ちを抱えます。
自分には絵の才能があるからこそ、他のことなんか、他人からの評価なんかどうだっていい。そう自分に言い聞かせながら、独り閉じこもっていた世田介。ですが彼が信じていた世界はひょんなことから、関わった一人の少女によって全くの悪意無しに。足元からある日、全て瓦解してしまったのです。
世田介を救う八虎の言葉、八虎を導く世田介とのひと時
解決しなかった世田介との関係性悪化に悩む八虎でしたが、その中で一年次最後の課題「自由制作」が新たな彼の苦悩の種に。何を使ってもいい、何を作ってもいい、という制約のない課題を前に、「自分は芸術を通して何をしたいのか」という基本に立ち返る悩みを抱えます。
自問自答を繰り返しながら、同級生たちと関わっていく八虎。その中で相変わらず関係性があまり良くなかった世田介とも久々に会話を交わしたのですが、結果として自己のアイデンティティの危機に晒されていた世田介を八虎の一言が大きく救うことに。
そのやりとりの中で、八虎もまた自身の芸術の道の原点ともいえる感情を思い出します。彼の芸術の原点、それは「絵を通して初めて、人と本当に会話ができた気がした」という感覚でした。
そのまま流れでなぜか世田介と渋谷でオールをすることになり、その中で八虎は自分の制作衝動の根源である「人に興味がある」という思いにも気付きます。
二人きりの時間を過ごしたことで、互いに自己への新たな気付きを獲得した八虎と世田介。その衝動をそのまま最終課題となる「自由制作」へとぶつけ、それぞれ新たな一歩を着実に踏み出すことなりました。
互いを刺激し合う二人の関係性が熱い!ラストは思わぬ展開も!?
まさに文字通り、関わることでお互いの本質への気づきを促し創作欲を刺激し合う八虎と世田介。一見ちぐはぐに見える彼らのコミュニケーションですが、友人であり良きライバル、というのはまさこの2人のためにある言葉なのではないでしょうか…!
自分が抱えていた葛藤や悩みに対して、それぞれの形で答えを出した彼ら。芸大一年次もあっという間に終わり、二年に進級する2人が今後どのように芸術と向き合っていくのかがより楽しみになる10巻でしたね!
さらに今回の巻のラストでは、八虎がまさかのあの人と予想外の再会!?芸大二年生となる八虎の学生生活がどうなっていくのか、続きが見逃せません!