ペリリューは、太平洋戦争でのパラオ諸島ペリリュー島での戦いを描いたマンガです。
ペリリューとは、ガダルカナルや硫黄島と比べて、知名度はやや低いですが、楽園のような南国のことです。そこでは、第二次世界大戦の時に、過酷な持久戦を命じられて、日本軍1万人が飢餓や水の確保に苦しみながら戦った場所です。
そして、この作品は、漫画家志望の田丸を主人公にして、その悲惨な戦いを描いていきます。
絵柄は非常にかわいらしく、重々しくない雰囲気なので、残虐なシーンなどが苦手な僕でも読めるかな・・・と思っていました。
しかし、だんだんとこの絵柄だからこそ、その場の狂気を非常に効果的に伝えているのではないか・・・と感じます。
戦争の狂気
戦争の狂気、というものは、今までも散々語られてきたのではないか、と思う人もいるかもしれません。
僕も、戦後の教育を受けてきて、「戦争というのはこういうものだ」「起こしてはいけないものだ」という啓蒙の映像やお話、映画やドラマをたくさん見てきました。
一方で分別もついてきた年齢あたりから、単純な善悪や、日本政府や軍が無能だったから起こした、というような、シンプルには語れない、複雑な政治的な判断が絡んでいることも学びます。
しかし、この『ペリリュー』を読むと、そういう国同士の政治や戦略など、どうでもよくなるくらい、現場の壮絶さを感じてしまいます。
威勢のいいことをいう隊長や殴ってくる上長、周りに気を使える優しい仲間、などたくさんの人間が出てきますが、どれも、過酷な中で生き延びようとし、そしてどんどんと死んでいきます。
このマンガ自体はフィクションですが、取材に基づき書かれており、たしかなリアルさを感じます。
史実では、ペリリューは、日本にとってはフィリピン防衛のため、アメリカにとってはフィリピン奪還のためのものでしたが、ダグラス・マッカーサーにより、フィリピン上陸を果たしたことで、この島での戦闘の目的が失われてしまいます。
そんな中、敵も味方も狂いながら、敵を殺し、食料を求め、水を求め、戦っていく・・・。
追い詰められた人間の狂気が生々しく描かれていきます。
おすすめの理由
というわけで、読むだけで戦争について深く考えるきっかけになるマンガなので、終戦記念日近くに読むマンガとして非常におすすめです。
政治や戦争は、単純に語られるものではないのでしょう。戦争も一つの政治手段だ、と主張する人も、戦争は絶対悪だと主張する人もいるかもしれません。
何を主張するにせよ、普通の青年たちが、このような過酷な場に置かれて狂っていく可能性があるということを、考え抜かなければならないと思います。