心臓

奥田亜紀子/著

コマ投稿OK

新しい季節の訪れを感じる”今”読みたい『心臓』 あなたを誘う心地よい余韻

家にいる時間がそろそろ終わりを迎え、季節は着実に夏へと向かっているように感じます。

春という季節を堪能せずに新しい季節を迎えることにどこか寂しさを感じ「もう少し余韻に浸りたい...」と思う方も多いのではないでしょうか。
そんなあなたを心地よい余韻へと誘う、奥田亜紀子先生の作品集『心臓をご紹介します。

心臓

それは繊細な6つの物語

心臓』は全6作品を収めた作品集で「このマンガがすごい!2020」では、オンナ編第5位にランクインしました。

全6作品に共通して、細やかで美しいトーン使いとポツリと心に水滴が落ちるようなセリフがとても印象的です。

その中でも特に注目したいのが表題作の「心臓」、アフタヌーン四季賞入選作の「ニューハワイ」、一番最後に収録されている「神様」の3つです。

表題作「心臓」

心臓

余命を宣告された主人公・しまこは、周囲と距離を保ちながら淡々とした学校生活を送ります。

そんな彼女の変わった点といえば、いつも傍らに小人がいること。他人はもちろん、彼女にも見えていない小人たちは、時に彼女の頭の上に上り何やら荒地(しまこの頭)を開拓しようと試みます。

心臓

しまこの学校生活、そして小人たちの生活が対比のように描かれているのですが、実際は一切交わることなく進んでいくところが本作のユニークなところ。

心臓

唯一の共通点は、しまこの命の象徴である「心臓」の動きを小人が感じているシーン。言葉や絵で例えようのない、繊細な命の煌めきが感じられる美しい一コマです。

この後、屋上にいるしまこと、しまこの頭の上にいる小人に思いもよらない事件が起きるのですが...。衝撃のラストはぜひ本作をご覧ください。

アフタヌーン四季賞入選作「ニューハワイ」

心臓

講談社が開催するアフタヌーン四季賞で2008年冬に準入選した作品「ニューハワイ」。

古本屋でアルバイトをするなおの元に、高校時代からの友人・冬子がやって来ます。暴力を振るう彼の言いなりになる冬子にうんざりしながらも、なんだかんだ面倒をみるなお。

心臓

DV彼氏から逃げてきた冬子を泊めたり、その彼氏と一緒にランチをしたり...。淡々と冬子に付き合うなおでしたが、冬子に貸したマンガをDVの彼氏とハワイにいく資金のために転売する姿を見てとうとう堪忍袋の緒が切れます。

心臓

ですが、なおは冬子と出会った頃のことを思い出します。

当時周囲と馴染めず浮いていた自分に、話しかけてくれた冬子のことを...。

心臓

まるで凪のように淡々と描いた女の友情。ぜひ最後まで見届けてください。

生きるために交わした約束「神様」

心臓

同棲しているカップルの生活を優しく見守る炊飯器。

この炊飯器の持ち主は四時子という女性。炊飯器は何かと四時子を気にかけ、時には炊飯器のみならず彼女が四時子身につけるマフラーとなって行動を見守ります。

心臓

同棲している彼氏からプロポーズを受ける四時子ですが、彼女にはそんな幸せを受け入れることができない理由があります。

四時子には事故によって昏睡状態に陥っている双子・五時子がいます。そして、その原因を作ったのは四時子だったのです。

五時子を置いて自分だけ幸せになれないと罪悪感に苦しむ四時子でしたが、そんな時、四時子が身につけていたマフラーが彼女に語りかけます。

炊飯器、そしてマフラーに宿り四時子を見守っていたものの正体を知った時、思わず心が震え暖かい気持ちになることでしょう。

👉「神様」を試し読みする

余韻の正体は全ての物語に漂う"静けさ"

「心臓」では頭に小人を従える余命を宣告された少女、「ニューハワイ」では女友達との友情、「神様」では双子の切ない物語を描いた本作。

それぞれ全く異なる登場人物とストーリーですが、共通するのは読み終わったあとの余韻。

...その余韻の正体は、全ての物語に漂う「静けさ」なのではないでしょうか。

心臓

奥行きのあるコマに対し、淡々と呟かれるセリフ。

目を離したら置いていかれそうな浮遊感と、息を潜めなければ消えてしまいそうな登場人物たちの静かな動きがそこにあるのです。

その静けさを味わうかのようにじっくりと読み進めるからこそ、読み終わったあとに余韻が残るのだと思います。

去りゆく季節を惜しみつつ

心臓

お家にいる間にあっと言う間に季節が変わり、なんだか時の流れに置いてけぼりにされたような気持ちなる方も多いはず。

そんな時は焦らず、『心臓』で一つ一つの物語と今を噛み締めて心地良い余韻に浸りましょう。

心臓 (トーチコミックス)
奥田亜紀子/著

👰💛👰🖤👰💙👰💚👰❤️🙋🏻‍♂️🎉

🎊『五等分の花嫁』エピソード総選挙開催中🗳

1日1回、開催中なら何度でも!『五等分の花嫁』全122話の中から、あなたのイチ推しエピソードに投票しよう!
五等分の花嫁ファンが選ぶベストエピソードがついに決定するよ!

※投票は1日1回まで ※投票期間:2020年05月27日〜06月10日23:59まで
ログイン・新規会員登録は不要です