ユニークな企画記事が目立ち読者の心を掴んで話さないWEBメディア「オモコロ」は、WEB記事の魅力が詰まっているのは勿論なのですが、実はWEBマンガの掲載も多く、好きな作品がたくさんあります!
アルのインタビュ―に参加して下さり、『こぐまのケーキ屋さん』で話題になったマンガ家のカメントツ先生も、「オモコロ」で自身のルポをコミカルに描いた『カメントツのルポ漫画地獄』を掲載されていました。
他にも小山健先生による女性の生理をキャラクター化したマンガ『生理ちゃん』や、次にくるマンガ大賞2020「コミックス部門」にノミネートされた長イキアキヒコ先生の『ギャル医者あやっぺ』、『男子高校生とふれあう方法』の地球のお魚ぽんちゃん先生による『サボり先輩』等、シュールな作風のマンガが勢揃いしています。
その中で最近特に目を引くのは、2021年8月27日に単行本が発売された河野別荘地先生の『渚~河野別荘地短編集~』です。
作品詳細
「オモコロ」に掲載されていた作品及び河野先生の同人誌作品をまとめた短編集。
サラリーマンとスマホに内蔵されたAIとの他愛もないやりとりを描く『スマートアシスタント』や
スマホのアシスタントAIと出かける話(1/4) pic.twitter.com/gXMfgCL5ar— 河野 別荘地・コミティアF23b (@kohno017) September 2, 2021
女子学生二人が渓谷で水遊びをしている最中にスライムの様な透明な生物に出会う『生水』、現代に生きる人魚の女性・渚が人間の足へ整形手術する資金を稼ぐ為に偶然出会った中年男性・山村の家で同居しながら働く表題作『渚』という異種族と人間の交流を当たり前の日常の様に描いた話、勤め先の書道教室経営者の女性・黒崎と肉体関係を持ちながらも新入生の女子高生・佐久間とも関係を持つ主人公の男子学生・朝倉のエロティックな物語『旬』の4作品で構成されています。
艶やかな線の描写
最初に目を引いたのは何と言っても河野先生のペンタッチです。
ありがとうございます
くたびれた中年男性たくさん見てネ… pic.twitter.com/PFxuG0G71Y— 河野 別荘地・コミティアF23b (@kohno017) September 2, 2021
私が個人的に短編集の中の『渚』の主人公の様な中年男性のくたびれた雰囲気が好みというのも理由の一つですが、同作品に登場するヒロインや他作品に登場する女性達も色気ある肉体が河野先生のペンタッチによって健康的かつ官能的に描かれており、両方の性質を感じさせる絵にも魅力を感じました。
不自然な日常を自然に描く巧さ
現代の私達の生活でAIとのコミュニケーションが可能ではありますが、本当の友達の様な会話が可能な程には至っていませんし、スライムの様に透明で意志を持つ生命体と出会うなんてことはありません。ましてや人魚も物語の世界でしか見ない存在です。
そんな実在していたら奇妙で違和感を覚えそうな存在を、日常で当たり前に存在しているかの様に巧みにストーリー展開させています。
どこか儚げな空気に惹きこまれる
シンプルな絵柄と間の取り方が絶妙で、全体的に儚い空気が漂っています。
特に『渚』ではそれが顕著になって表現されていて、映画を観ている気分に浸れます。
全作品を通じシュールでシンプルな作風で統一感があり、秋風に当たる様な涼しい読後感を味わいたい方にオススメの作品です。
気になった方は「オモコロ」でも『渚』を読むことが出来ますのでチェックしてみて下さい!(単行本には描き下ろしの後日談が掲載されています)
▼『渚』第1話
また、単行本発売を記念して「オモコロ」で企画された記事「【漫画】単行本が出るので釣り公園に行ってきた」も面白いので併せて読むのもオススメです!