勉強が出来ないし友達もいない、仕事も上手くいかない、家族とも不和。どこにも居場所が無く、息苦しい。
皆さんにもそんな瞬間は無いでしょうか?
主人公・是枝一希の息が出来る瞬間
この物語の主人公・是枝一希(これえだかずき)も、現実のどこにも居場所がありませんでした。しかし、彼には唯一息が出来る瞬間があります。
それは「クラッキングをしている時」。
彼は上手くいかない現実から逃れる為に、コードネーム「zer0」としてクラッキング(サイバー攻撃)を繰り返していました。(俗に言うハッカーとは技術者の意味合いで、PCを使用する犯罪者のことをクラッカーと呼称することが一般的です。)
そんなある日、エンジェル投資家・坂井大輔(さかいだいすけ)は一件のサイバー攻撃のデータに埋め込まれた暗号を見て是枝に出会います。
やがて坂井は是枝の才能を見込み、クラッカーとしての経験を生かしてサイバー犯罪を攻撃して防ぐ仕事を勧めます。
『生きづらさ』が起こす犯罪と立ち向かう勇気
是枝は社会での生きづらさからサイバー事件を犯しました。しかし事件を起こした時、わざとログを残したのは「誰かに自分を見つけて欲しい」という強く、そして縋る思いだったのでしょう。
この物語には彼以外にも様々な状況から犯罪を犯す人々が登場します。特に印象的なのは、コンビニATMをクラッキングした犯罪者のエピソードです。
犯人は最初から金銭目的ではなく、いちエンジニアとしてATMの欠陥についてをシステム会社に指摘しましたが、誰にもその声が聞き入れられなかった結果、犯罪を犯すことで欠陥を知らしめようと実行したのです。誰か一人でも声を聞いて理解を示していたら、犯罪に至らなかった筈です。
容疑者が逮捕された後に唯一理解を示した是枝の
「だけど!ゴミにしか見えないものもありますよねっ!!」
という必死の叫びに、はっと我に返って目を覚ました表情を見せます。
是枝の鮮やかな技術も勿論ですが、この漫画の一番の魅力は
”社会で生きづらい思いをしている中で「息が出来る様な唯一無二の大事な物」に出会うこと。そして、そんな人達に根気強く向き合って支える人がいる大事さ”
です。
航海は終わり、そして続く
この物語は最終回を迎えましたが、是枝と坂井の航海は続きます。
是枝一希が見せてくれた航海記は、私達読者に未来を生きる為の地図であり羅針盤としてこれからも社会に受け継がれていくでしょう。
皆の航海が続いていく様に私自身の航海を続けていきたいと思いました。
この作品に出会えたことに心からの感謝を!