群青にサイレン

桃栗みかん / 著

『群青にサイレン』高校野球を舞台に描かれる負の感情。あなたは読む前の自分には戻れない

群青にサイレン』はスポ根野球マンガではありません。ラブコメでもありません。ときめきや恋の切なさではなく、人間の負の感情を丁寧に描いた高校野球マンガなのです…!

桃栗みかん先生は『いちご100%』の作者としても知られ、『いちご100%』で私たちを魅了した丁寧な心理描写は今も健在です!

王道の高校野球マンガとはほど遠いドロドロさ

高校野球マンガといえば、爽やかな主人公が爽やかな仲間と爽やかに野球に打ち込む、というストーリーが王道ですよね。群青にサイレンは、主人公からして違います…!

主人公・吉沢修二は小学生の時に、いとこで幼馴染の吉沢空にエースの座を奪われ、野球を辞めてしまいます。その後、空へのコンプレックスをこじらせ続けた修二は高校で空に再会。

空よりも自分のほうがいいピッチャーだ!と証明するために、野球部に入部。修二と空、そして野球部部員たちの交流と成長が描かれます。

人間の負の感情をこれでもかとリアルに描く

この作品には、毒親・いじめ・プライドをズタズタに傷つけられる経験…など、トラウマを抱えるキャラクターたちが登場します。様々なエピソードを通じて、人間の嫉妬や自己嫌悪、劣等感といった負の感情がリアルに描かれます。あまりに丁寧な心理描写に、読みながら何度もズン…とした気持ちになります。

それでも続きが気になってページをめくる手が止まらない。そして、もしかすると現実の部活は、王道の野球マンガよりも『群青にサイレン』に近いのかもしれない…と震えてきます。

読む前とは違う自分になっている

読み終えたあと、私はまるで文学小説を読んだあとのような気分になりました。国語の授業で夏目漱石の「こころ」を読んで、人間の悪い部分を突き付けられたときのような、心地のよい衝撃と憂鬱さ。

どんな感想を抱くかは人それぞれだと思います。けれどきっと、誰しも「ああ面白かった!」では終わらない感情が出てくるはず。これほど人の感情を揺さぶるマンガ、間違いなく名作です。

全50話完結!一部は無料で読めます

そんな『群青にサイレン』、2020年12月現在、少年ジャンプ+で12話まで無料で読めます。

個人的にはコミックス第4巻(第13話…!)ごろから加速度的に面白くなりました。王道のスポーツマンガには飽きちゃった…という方や、心理描写が巧みな作品が大好き!という方、ぜひ読んでみてください!

これも青春のカタチ

群青にサイレン (全11巻) Kindle版