荒川弘先生の代表作として、今なお大勢のマンガファンに愛され続ける『鋼の錬金術師』。主人公であるエドワード・エルリックとアルフォンス・エルリック。失った身体を取り戻す彼らの旅が始まり今年でちょうど20年。物語が終着を迎え十数年経った今でも、その人気は衰えることなく今日まで続いています。
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禁忌を侵して失った身体…取り戻す道を、それでも二人は諦めない
本作の主人公、エドワード・エルリックは右腕と左足に機械鎧(オートメイル)を纏う10代の少年。弟であるアルフォンス・エルリックは、2mを越える鎧の体に魂の身を持つ少年です。
物語開始時にはそれぞれ15歳、14歳という幼さだった彼ら。そんな二人が、なぜこんな身体となってしまったのか。それは自分たち2人を女手一つで育て、あげくに亡くなってしまった最愛の母親を、人体錬成という禁忌を侵し取り戻そうとしたからでした。
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幼い頃に死んだ母親を蘇らせるため。それだけの為に錬金術を研究し、念願の再会を夢見た2人。その結果は兄の片腕と片足、そして弟の魂以外の身体全てというあまりにも悲惨な犠牲を払い、その上で失敗に終わります。
ですが彼らは、生きている自分たちの身体を取り戻すことができるはず、という望みを諦めることはありませんでした。錬金術についての研究をより深めるべく、自分の、そして弟の身体を取り戻す方法を探すべく。兄・エドは国家錬金術師となって、弟と共に旅を始めることとなったのです。
物語のテーマは「等価交換」!けれどもし自分が一で百を手に入れられるとしたら?
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本作のキーとなるテーマ・錬金術。架空の魔術ではあるもののこの錬金術の基盤となる考え方は、等しく同じ価値・属性の物は同じ価値・属性のものとしか代替できない、という「等価交換」の法則です。
無から有を作り出すことはできず、一を百にすることもできない。ですが人間は誰しもが叶うことならば一で十を、一で百を望む生き物です。濡れ手で粟を掴みたい、一石二鳥、あわよくば三鳥を手に入れたい。そう願うことは誰しも必ず通る道であることでしょう。
それを叶えることができるとされていたのが、伝承上の存在とも言われていた「賢者の石」でした。「賢者の石」によって自分たちの身体を取り戻すことを夢見たエルリック兄弟。しかし物語が進むにつれ、その「賢者の石」が非常に多くの犠牲の上になり立つ存在であるということも明らかになります。
欲してやまなかった賢者の石、取り戻せるかもしれない自分たちの身体。それでもエルリック兄弟はその犠牲を選ばず、自力で身体を取り返す方法を探り続けることを選びました。その結果二人が辿り着いた、自分達の身体を取り返すための真理。それは紛うことなく自身の持つものとの「等価交換」を行い、念願の身体を取り返すという結末を迎えるのです。
本日初公開「鋼の錬金術師展 RETURNS」のキービジュアルは荒川弘先生描き下ろし。
20年前の「鋼の錬金術師」連載予告イラストを、構図をそのままに2021年版として新たに描いたものです。
会場で展示予定ですのでどうぞお楽しみに☆
開催情報など詳細はHPを↓https://t.co/SOPnNE5d49#ハガレン20周年 pic.twitter.com/uPlJgMtoqc— ハガレン展 (@hagarenten) July 12, 2021
楽をすることなく、自分以外の人々を蔑ろにすることなく。どこまでも錬金術師として、そして二人それぞれが一人の人間として。「等価交換」を自らの生きる信条にも掲げ奮闘する彼らに、きっと多くの人々が力をもらっているのではないでしょうか。
辛くとも、一の繰り返しと積み重ねを続けて…人間として生きていく
例え架空の作品であってもリアルに生きる私たちにも大きく通ずる部分のある生き様を、エルリック兄弟は本作で見せてくれます。
ストーリーの中で彼らに感化される人々のように、私たちもまた愚直に地道に、そして泥臭く。自分たちの手で生きていかなければならないという、人間として生きる上で大事なことを教えてくれるからこそ。『鋼の錬金術師』はここまで多くの人々に、今日も支持され続けているのではないかと思います。