次世代のマンガ家つのだふむ先生に連載前インタビュー。『りさこのルール』に込められた、人付き合いの極意とは

「カッコいい人だと思われたい!」

自分を浮かび上がらせるスポットライトは、人の視線です。どう見られたいのか?どう評価されたいのか?具体的評価基準は無いままに、多くの人はただ漫然と、カッコいい人だと思われるための振る舞いや装いをしようとしてしまいます。それはまるで都合の悪いことを隠すかのように。
人を見て、本を見て、憧れの人のマネをしたり流行を追いかけ取り入れたり。人の為に自分を飾り、飾るために人を真似、そしてそれを人が評価する。自分なんてどこにもいない、人の為の自分。そう、知らぬうちに自分を見失い、人の焼き直しが個性だと勘違いしている人は少なくなりません。
でも、ユニークであること、ただ一つであること、愛される個性を持つこと。それらは真似では生み出せないのです。

つのだ ふむ先生の新作、2020年4月22日からLINEマンガにて連作が開始した『りさこのルール』は、主人公が自分自身を発見することで生き方を見つける物語です。

今回、連載前のつのだ ふむ先生から貴重なお話しを伺うことができました。

つのだふむ先生とは

つのだ ふむ先生:2019年5月末に映像制作会社を退職、現コルク所属。以前は「ライフスタイル角田」名義でギャグ漫画家として活動しており、同時に映像作品も手掛けていた。
2020年4月にLINEマンガにて『りさこのルール』で連載デビュー。

つのだ ふむ先生は、『宇宙兄弟』や『ドラゴン桜』など数々のヒット作を担当した名編集者、佐渡島庸平(さどしま・ようへい)氏(が立ち上げた作家エージェント会社コルクに所属している新人マンガ家です。

※佐渡島庸平氏:数々の名作を手掛けてきた名編集者。担当した作品は『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『ドラゴン桜』(三田紀)など多数。2012年に講談社を退社し、コルクを設立。

名編集者・佐渡島さんをして「この二人が世界を変える 」と太鼓判を押す2名のマンガ家(こそ、本インタビューでお話を伺ったつのだ ふむ先生やじま けんじ先生です

※佐渡島氏のyoutubeより【コルク佐渡島の部屋】いつか、この2人が世界を変える。僕が見込んだ才能たちを紹介

👉やじま けんじ先生のインタビューを読む!

今回のインタビューでは、作品が描かれるまでの過程、そして作品に込められた思いなどが語られています。

佐渡島さんから学んだ、信頼関係の築き方

いよいよ、『りさこのルール』がLINEマンガにて4月20日から連載されますね!いま、どんなお気持ちですか?

ありがとうございます。編集の佐渡島さん(と一年前から準備してきたプロジェクトが、皆さんに読んでもらえるときがきました!とても楽しみです。


Twitterやnoteでマンガを投稿していましたが、オフィシャルの場で作品を発表するのは初めてなので..。多くの人に読んでもらえる場が用意されて、嬉しいです。

※佐渡島庸平氏:株式会社コルク代表取締役社長であり、編集者。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)を、『ドラゴン桜』(三田紀)など数多くの編集を担当。

オフィシャルでの発表は、初めてなんですね。

まだ先生のことを知らない人も多いと思うので、まずは先生ご自身のことについて教えてください。

先生はファンのことを「ふむダチ」、日々の出来事を「ふむごと」と呼んでいますよね。

この「ふむ」が印象的です。

「ふむ」は、昔の口癖です。
実は2年前にコルクに作品を持ち込んだとき、佐渡島さんに「作品は良いけど、名前がよくないね」と言われて。
当時は「ライフスタイル角田」という名前だったんです。

作品ではなく名前にダメ出し!なかなかないですよね。

まあでも、そう言われても仕方ないペンネームだったとも思います(笑)。
それで、口癖だった「ふむ」をペンネームにしてみたんです。

佐渡島さんと仕事をするようになってから、他にはどんなダメ出しをされましたか?

「信頼関係を築く為には、率直に想いを伝えろ」と言われましたね。


それまでの僕は「本音を言うのはダサい」「他人に弱みを見せるのは恥ずかしい」と思っている、カッコつけマンだったんです。

けれど、佐渡島さんの言葉でカッコつけたままでは相手との関係が深まらないないなと気づきました。


恥ずかしいことを言い合えるようにならないと、信頼関係は築けないなって。そこから徐々にカッコ悪い自分を見せるようになっていったんです。
そもそもカッコつけマンが一番カッコ悪いですけどね(笑)

ストーリーは”王道ど真ん中”

先生の絵には、既存のマンガにはないオリジナリティを感じます。影響を受けた作品はありますか?

ありがとうございます。 僕が好きなのは”王道ど真ん中”の作品なんです。

例えばどんな作品を読んでいましたか?

鳥山明先生『ドラゴンボール』冨樫義博先生『幽☆遊☆白書』ですね。

まさに王道ですね!

王道作品の良さはストーリーが分かりやすいということです。


子どもから大人まで、誰もが理解できるので、自分が作品を通して本当に伝えたい、核となるメッセージをより多くの人に届けることができます


だから僕は、王道ストーリーを描ける作家になりたいなと思っています。

カッコ悪くても、本音で話す

『りさこのルール』は、どんな物語でしょうか?

他人の言動ばかりマネして生きる、「園田」という男が主人公の物語です。

彼はユニークでありたいと願いながら、タモリさんなどの名言をマネしているんです。

マネをしているだけでは、ユニークな存在にはなれないですよね。園田はそのことに気がついていない、ダメな奴なんです。

でも、「借り物の言葉で自分を形成する」ところは、多くの人に共通すると思っています。


自分は人とは違うと思っていても、じゃあ100%、オリジナルか?と問われると、断言できる人は少ないのではないでしょうか。


これが自分の個性だと思っているものは、すでに誰かの個性の焼き増しであることが多いのです。

そう言われると、自分にも身に覚えがありすぎてヒリヒリします!共感しすぎて、読み進めるのが怖いほどです...。

でも、これはマンガもそうなんですけど、最初っからオリジナルなものなんて作れなくて、誰かの真似をしたり参考にしたりしながら、少しつず自分のものを見つけていくんだと気付きました。

表面を真似しているだけではダメだけれど、真似の先に新しいものを見つけるつもりでやっていくというか。


実は園田のモデルは僕なんですよね。


僕も、カッコいいなと思う人の影響をすぐに受けて、浅はかに真似をする人間なので。


今、それを言えるのも、佐渡島さんと出会い、一緒にマンガを描き続ける中で、「人の真似をしてカッコつけている自分」というものに客観的に気づくことができたからで。


ああ、これがおれか、ダサい!とわかって(笑)、それをマンガにすることができるまでに自意識を捨て去ることができて、今に至ります。佐渡島さんとはそのあたりから、深く話し合える関係になっていったように思います。


その変化のストーリーを、主人公の園田にも重ね合わせています。

そうだったんですね。

今の僕は、全く別の人間を想像してキャラクターを創るよりも、まずは自分の心の動きを観察してキャラクターを作ることが、一番リアリティを出せると思います。
だから「共感する」と言ってもらえてすごく嬉しいです。


この作品の核は「園田の成長」です。


ある出来事がきっかけで園田は絶望のどん底に落ちるのですが、そこで「りさこ」という女性に出会います。

本音で語る彼女を前にして、園田は隠していた本心が引き出され、ついに泣いてしまいます。

そこから「自分のカッコ悪いところとも向き合おう」と、決意します。


園田がもがきながらも前進していく姿を見て、自然と読者が応援したくなる…。そうなったら理想ですね。

核となるメッセージを届けるために、王道で描く

最後に、この記事の読者へメッセージをお願いします

このマンガの主人公には、僕自身の情けないところを盛り込んでいます。

人とうわべだけの付き合いになってるな...、という気持ちを抱えている人には共感してもらえるはず。

でも、共感に関わらず、多くの人に楽しんでもらえるストーリーにしています!

王道路線で描いているということでしょうか?

そうですね。大ヒットしたいので、王道のストーリーで描いています!


そして僕は、主役である園田とりさこを、本当に存在する大型新人俳優のように演出しているつもりです!大型新人俳優は、作品に出続ける中で、観る人からも魅力が発見されて、進化していくと思います。


なので、読者の方にはぜひ一緒に、この新人達を育ててもらえたら嬉しいと思っています!!

この役者達(と僕)を大ヒットさせてください!!(笑)

あとがき

人からよく見られたいと思っていると、カッコ悪いところを隠してしまう。
でもそんなうわべだけの付き合いでは、深い関係になっていかない。

「作家」と「編集者」、「作家」と「読者」の垣根を超えて、人としてつながる極意を学んだインタビューでした。


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👉やじま けんじ先生『コッペくん』のインタビューはこちら

©Fumm Tsunoda/CORK


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